沈没しかけた日本国召喚   作:鈴木颯手

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第二話「交流」

中央歴(平成27年)1639/2/6  日本国新都市大隅

 九州地方はかつての沈没騒動で最も被害を受けた場所であった。最初に阿蘇山が噴火した事でカルデラは完全に消失し、その後も南北に分断する程の津波や桜島の噴火と言った災害に襲われ続けた結果、1600万人が住んでいたこの地に人はいなくなった。1600万人の内、国外に脱出できた者は約200万、他の地方に奇跡的に避難した50万人を除き全ての国民が噴火と津波によってその命を落としていた。

 その後に残った土地は火山灰が積もり、溶岩が地表を覆った不毛の大地のみであったが奇跡的に無事だった鹿児島県の東部、大隅半島に新たな都市を開発。九州地方唯一の可住地として復興が始まっていた。

 そんな新都市大隅にクワトイネ公国の使節団は降り立った。都市は公都クワトイネや経済都市マイハークをはるかに超える近代的な都市に誰もが圧倒される。

 

「日本とは凄い国の様ですね」

「本当じゃの。じゃが、それ以上に……」

 

 使節団の一人として派遣されたヤゴウの言葉にハンキ将軍は賛同するがそれ以上に彼の眼には都市よりもその外の光景が気になっていた。都市の郊外には真っ黒な溶岩で覆われた不毛の大地が広がっており見ただけで人が住める環境ではない事が分かる。事前に知らされていた日本で起きた数々の災害の跡が今まさに目の前に存在していたのだ。

 

「日本は1億2000万人がいたというがこの災害で2000万人にまで人口は減った。……普通なら国家が滅びても可笑しくないような災害であろうに」

「実際亡国一歩手前まで来ていたと言いますからね。ですがそれを乗り切った日本は凄い国でしょう」

 

 ヤゴウとしてもこんな災害が自分たちに襲いかかっていたら……。きっと何も出来ずに逃げ惑うか死んでいただろうと感じてしまう。それだけ日本に襲いかかった災害は常軌を逸していたのだ。

 

「そんな日本が我らに一体何を求めているのか……。ヤゴウ、お主はなんだと思う?」

「何となく予想はしていましたがこの地を見て確信に至りました。日本は食料を求めているのでしょう」

「国土の大半が、作物が育たない不毛の大地となっているのならばそれで正解かの……」

「日本の状況にもよるでしょうが最悪の場合武力行使を行ってくる可能性も視野に入れるべきでしょう」

 

 はっきり言って日本の状況はクワトイネ公国が考えていた以上に最悪と言えた。理性的に交渉をして来るだけの余裕はあるようだがそれでも今の日本に2000万人を食べさせる余裕もないのだろう。ヤゴウは日本の鉄竜がクワトイネ公国に牙をむかないようにするためにも気を引き締めたがふと、視線を感じてそちらを向けば使節団を睨むように見ている日本人の姿があった。

 それに外交官も気づいたのだろう。慌てたように説明を始めた。

 

「申し訳ございません。日本はかつての沈没騒動後に外国から圧力を受けて居まして……。ただでさえ沈没騒動時に見捨てられたという事もあって外国人に良い感情を持っていない人が一定数存在しているのです」

「そうでしたか……。それならば仕方がありませんね。今後両国が関わっていく間に改善される事を祈っています」

 

 日本人側からしてみれば転移したとは言え外国人が日本にくれば警戒するのは仕方がない。ヤゴウもクワトイネ公国との仲が深まればこういった視線も消えていくだろうと考えて咎めるような事はしなかった。

 

「それではここで開かれる空軍のデモンストレーションを見学した後に再び海路で首都愛鷹に向かいます」

 

 陸海空自衛隊は沈没後に国防軍へと正式に名称を変えた。これは弱り切った日本を守るには自分たちの手で行う必要が出たためである。急ぎ憲法の改正、陸海空自衛隊の再編成。今後必須となって来るであろう各小型艇の開発を急ピッチで行っていった結果、沈没騒動前には及ばないものの充分に国防を行える数と質を揃える事に成功していた。

 そんな国防軍の南西方面司令部と航空基地が大隅に置かれており、使節団に見せるために空軍の演習が特別に行われようとしていた。

 演習ではF-15やF-2と言った日本の戦闘機が数多く飛び、使節団に対して畏怖の感情を刷り込む結果となった。自分たちが運用するワイバーンでは全く相手にならない。それが使節団の共通した認識となった。

 

「日本と言う国は驚きの連続じゃな。マイハークに侵入した鉄竜は本当に哨戒活動の機体でしかなかったという事か……」

「そうだと思います。ですが、日本に野心がないのであれば我が国と最初に接触できたのは幸運でしょう。技術の輸入は無理そうですが様々な援助を受ける事が出来れば……」

 

 ヤゴウは日本と交流していくことで発展していく祖国の姿を思い浮かべるがハンキは軍人として日本と戦争になった際の防衛方法を考えながらその日は眠りにつくのだった。

 そして、翌々日に使節団は首都愛鷹へと足を踏み入れる事になる。

 




大隅
架空の都市。大隅半島で無事だった土地に建設された新都市で、人口は数万程。航空基地がおかれるなど軍事関連の施設が多い。住んでいる人間はかつて九州に住んでいた者が大半であり、そのために外国人に対して強い嫌悪感を持っている。

愛鷹
現実の愛鷹山付近に存在する架空の都市。この日本では東京が水没し、その他大都市も全滅している為に新たな首都として建設された。人口は数百万と膨大であるが郊外にはバラック小屋が広がるスラムのような様相を呈している。ただし、あくまで建設途上という事でいずれは近代都市として生まれ変わる予定である。
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