フジキセキのトレーナーの薬指に指輪が光っている幻覚   作:バンタリマー

1 / 2
フジキセキのバレンタインイベントを参照ください。


第1話

「トレーナーさん。はい、どうぞ!」

 

そう言って私は赤いバラの花束を取り出した。

今日はバレンタイン。

この日、彼の為に用意した私のバレンタインプレゼントだ。

勿論、バラ以外の花も束ねてはいるけれど今回の主役は真っ赤なバラである。

その本数は8本。

 

貴方の思いやりに感謝します。

 

8本のバラにはそんな意味が隠されている。

トレーナーさんはその花言葉を知らないだろうけど。

 

「これはまたすごいな…。」

 

眼前の彼は突然のバレンタインプレゼントに目を丸くして驚いている様子。

今朝は私がファンのポニーちゃん達からチョコレートを受け取るばかりだったから。

私が彼に渡すなんて、思いもよらなかったに違いない。

 

「ふふっ…」

 

彼の驚いた顔が愛おしくて、私は自然に笑っていた。

まぁ、概ね計画通りと言える。

驚いてくれなければこっちも準備していた甲斐がないからね。

でもね、まだまだこれから。

君にはもっと驚いてもらわなきゃ。

 

「変な事を言うんだけど、この花一つ貰ってもいいかな?」

 

さっき彼に渡すと宣言したばかりの花束を手に持ったまま私はそう言った。

自分が彼の為に用意した花を自分が貰う。

我ながら変なお願いをしているのはわかってる。

それでも、トレーナーさんは勿論と頷いてくれた。

もっとも、君が私のお願いを断るなんて私は考えてないんだけどね。

 

「ありがとう!」

 

彼の了承を得た私は花束からバラを一本抜き取る。

 

「さっきからお腹が減って仕方なかったんだ。」

 

そして、そのまま抜き取ったバラを口へと運んで咀嚼した。

バラの花弁はパリパリと音を立て私の白い歯で裁断される。

 

「うーん、美味しい。」

 

そして、そのままゴクンと飲み込んで見せた。

いきなり花を食べ始めた私を見て、トレーナーさんの顔には驚愕の二文字が浮かび上がっていた。

うんうん、私はその顔が見たかったんだよ。

彼は明らかに教え子の奇行に戸惑っている。

 

「トレーナーさんも一口どうかな?フルーティーでおいしいよ?」

 

そう言って私は彼に花束を手渡す私。

彼はおずおずと受け取った。

でも、私からブーケットが手渡された瞬間、トレーナーさんもバラが放つ不自然な甘い香りに気づいたらしい。

 

「フジキセキ、これは…」

 

まぁ、近くで見たら流石に解るよね?

 

「ふふっ気づいちゃったかな?ごめんね、飴細工なんだ!」

 

ここでトレーナーさんにはネタばらし。

この花束はバレンタインの今日、彼の為に用意した飴細工。

遠目からでは本物そっくりに見える様にできている。

日本ではバレンタインはチョコレートを送る日だけれども、世界的には花を送るのが一般的だそう。

だから花とチョコレート、それを両方送れてかつ彼をとびきりびっくりさせるような仕掛けを考えたのだ。

 

「実はこの日の為にちょと練習したんだ。びっくりした?」

 

「驚いた…」

 

「あははっ!なら大成功だね。良かった。」

 

花束をまじまじと見詰めるトレーナーさん。

きっと君は一本一本大事に、味わって私の作った真っ赤なバラを食べてくれるに違いない。

 

…でもね、意味はきっと知らないでしょ?

私が彼を驚かせる為にわざと一本消費し7本になったバラの花束。

 

密かな愛。

 

私、フジキセキが寄せる…寄せてはいけない密かな感情。

 

だって花束を持つ彼の薬指には銀色のリングが輝いているから…。

教え子と指導者という間柄よりも決定的な壁がそこにはある。

サプライズは成功したけど、改めてその事実が再確認できてしまった。

 

どんなヒトかウマ娘かは知らないけれど、出会った順番が少し早かっただけでしょ?

 

自分で自分が嫌になる考えが思い浮かんだ。

 

私ってもしかして性格悪い?

 

「どうした、フジキセキ?」

 

急に黙りこくる私に不思議そうな視線を向けるトレーナー。

 

「うんうん、何でもないよ!ハッピーバレンタイン。」

 

そう言って私は笑顔を顔に貼り付けた。

だって私はエンターテイナーだから。

 

 

 

 

トレーナーの指輪は

  • ガチもんの婚約指輪
  • 職場でトラブルを避ける為のフェイク
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。