翌日ルークはアスラン、イザーク、クルーゼと共に最高評議会議場で査問を受けていた。
「ではこれより、オーブ連合首長国領ヘリオポリス崩壊についての、臨時査問会を始める。
まずはルーク・ロドクルーン隊長、ラウ・ル・クルーゼ隊長。君の報告を聞こう」
シーゲルの指名で評議会の矢面にルークは立った。
「はい。報告をするにあたり、ご覧頂きたいものがあります」
ルークの声と共にモニターに映像が映し出された。
そこには連合軍新造艦アークエンジェルの出現やその艦によるミサイル攻撃。
最後の一機、ストライクが巨大な砲を放った瞬間がおさめられていた。
そしてそれを防ぐブレリュードの姿も。
誰もが静かにその映像を見ていた。
「ロドクルーン隊長」
パトリックが静かに声を上げる。
「はい」
「あの高出力ビームの威力はどれほどだ?」
「それについてはこちらを」
そう言って一枚の写真を映し出す。
映し出されたのはドロドロに融解したかつてのブレリュードのシールドクローだったものだ。
「こちらは先ほど映し出されていた高出力ビームを正面から受けたシールドです。
一撃を受けただけで対ビームコーティングが施された御覧の通りです」
「なんと」
「これはあくまでシュミレーションの結果ですがもしあのビームがコロニー外壁に
直撃していた場合ですが外壁に大穴が開いていたのはほぼ間違いないでしょう」
「やはり、オーブは地球軍に与していたのか」
「条約を無視したのは、あちらの方ですぞ」
「だが、アスハ代表は」
「地球に住む者の言葉など、アテになるものか」
議員たちはそう口々に話し始める。
「しかし、ロドクルーン隊長。最後の一機の映像から見ても放置できないのは分かるが
その地球軍のMS、果たしてそこまでの犠牲を払ってでも手に入れる価値のあった物なのかね?」
「その驚異的な性能については、実際のその一機に乗り、
さらには取り逃がした最後の一機と交戦経験もある、アスラン・ザラとイザーク・ジュール
より報告させて頂きたく思います」
不意に問われる、パトリックからの問い。その問いに、ルークは立ち上がるとそう返答した。
パトリックはシーゲルへと確認の視線を向ける。
「アスラン・ザラとイザーク・ジュールの報告を許可する」
まずアスランが立ち上がり報告する。
アスランがイージス、ストライクの性能報告終えたのち
イザークがデュエル、バスター、ブリッツの性能報告を終えた。
「これほどの物を造り上げるとは。ナチュラルどもめ」
「でも、まだ試作機段階でしょ?たった5機のモビルスーツなど脅威には…」
「だが、ここまで来れば量産は目前だ!その時になって慌てればいいとでも仰るか!」
議員の発言をエザリアがかぶせるように黙らせた。
「これは、はっきりとしたナチュラル共の意志の表れですよ!
奴等はまだ戦火を拡大させるつもりなんです…」
「静粛に!議員方、静粛に!!」
シーゲルの諌めで一度は静まる議員達。ルーク、クルーゼ、アスラン、イザークは
ただそれを静かに見ていた。
「戦いたがるものなどおらん」
不意にパトリックの低く訴えるような声が響く。
「我らの誰が、好んで戦場に出たがる。平和に、穏やかに、幸せに暮らしたい。
我らの願いはそれだけだったのです。だが、その願いを無残にも打ち砕いたのは誰です!
自分たちだけの欲望と都合のためだけに、我々コーディネイターを縛り、利用し続けてきたのは。
我らは忘れない。血のバレンタイン、ユニウスセブンの悲劇を!!」
その場に立ち上がり、両手を大きく広げて演説を始める。パトリックが訴えるは、
ただナチュラルへの怒りと憎しみを。我らの敵はナチュラル、悪いのはナチュラルだと。
「24万3723名…。それだけの同胞を失ったあの忌まわしい事件から1年。それでも我々は
最低限の要求で戦争を早期に終結すべく心を砕いてきました。だがナチュラルは、
その努力を尽く無にしてきたのです!我々は我々を守る為に戦う!戦わねば守れないならば、
戦うしかないのです!!」
パトリックの決意を示すような発言に沈黙する議員達。シーゲルも観念したように黙ってしまう。
査問が終わり、陽も落ち始めた夕方ごろ。
アスランは花束を持って共同墓地に来ていた。
そこにはアスランの母、レノア・ザラの墓がある。
彼の母はユニウスセブンで農業研究に関わっていたが
血のバレンタイン事件によって還らぬ人となった。
と言ってもこの墓地にレノアの遺体はない。
それでも墓は必要だった。そしてアスランも久しぶりにプラントに戻り
査問委員会を終え休暇に入ったこともあり墓参りに来ていた。
少しの間、思い出に浸りながら立ち上がり出口に向かう。
そこでアスランはある人影に気づいた。
「隊長」
「……アスランか。アスランの母親も、亡くなっているんだったな」
「はい……。隊長も、どなたかを?」
ルークは余り自分の事を話したがらないのでアスランは彼の事情をあまり知らない。
「ああ、両親と妹をな。血のつながりはないんだがそれでも俺にとっては
実の親や妹とは変わらないさ。
さて今日から休暇だ。ゆっくり休むといい。
その間に考えをまとめておけ。その迷いの答えもな」
「はっ」
去っていくルークの背を見送りながら、アスランの心は分厚い雲が覆われていた。
だがそれでもアスランは前に進むしかない。
立ち止まる暇も、振り返る時間も無い。前に進むしかない。
たとえ、どんな迷いを持っていたとしても。
その日の夜。
とあるバーに軍と司法局の人間が突入した。
「何事だ!」
銃を向けられた先に座っていたパトリックとラウ・ル・クルーゼがおり、
パトリックが立ち上がり叫ぶ。
「申し訳ありません。国防委員長。国家反逆罪でラウ・ル・クルーゼを拘束いたします」
指揮を執るルルーシュは前に出てパトリックに理由を述べる。
「どういうことだ!?」
「そこの男は連合やブルーコスモスの盟主であり国防産業連合理事でもある
ムルタ・アズラエルに情報を流していました。
以上が理由となります」
「クルーゼ!」
信じられないという風にクルーゼに向けて叫ぶパトリックだったが
クルーゼは高笑いを上げる。
「何がおかしい。クルーゼ!」
ルルーシュは冷静に努めつつも警戒を強めた。
「いや、何もしかし私は扉を開けるどころか鍵すら手にする事は出来ないとはと思ってね」
クルーゼは立ち上がると両手を差し出した。
「いやにおとなしいな」
「ここまで来て抵抗しても無駄だと考えただけだよ。
それにいるのだろう?ルーク」
「ああ」
ルークはヘルメットを取り姿を現す。
「残念だ。ラウ」
「ふふっ」
クルーゼは手錠をされ護送車に連れていかれ乗り込んだ。
ルルーシュはパトリックの方に顔を向ける。
「失礼しました。では我々はこれで」
「待て、どれほどの情報が連合に流れた!」
「現在調査中です」
「そうか」
「では」
ルルーシュとルークはパトリックを置いてバーから去って行った。
英雄、ラウ・ル・クルーゼが国家反逆罪で逮捕。
その報はすぐにプラント中を駆け巡った。
市民は信じられないという声が大きかったが
軍内は別段そうではなかった。
元々クルーゼは顔を仮面で隠していたり言動ゆえにうさん臭く怪しいというのが
大半の意見だった為、どちらかと言えばそら見た事か、やっぱりという意見が大半だった。
だが問題はそれだけではなかった。
問題は彼が流した情報とその情報を誰から受け取っていたのかという事だった。
流れた情報については調べようがなくクルーゼの証言からしか得られない。
だが誰から受け取っていたのかはすぐに判明した。
パトリック・ザラ本人である。
パトリックは今回の件で責任を追及され、国防委員長を辞任した。
更に彼をトップとするいわゆるザラ派からはエザリア・ジュール、タッド・エルスマンなどの
離脱者が相次いだ。
エザリアはカナーバの説得で中立派に合流。
タッド・エルスマンは派閥には所属しない位置に立った。
またクルーゼ逮捕でクルーゼ隊は事実上解散。
新たに彼らはイザークが隊長として部隊を結成。
ただし部隊そのものはルークの指揮下についた。
基本的に人員は変わらないがラスティやミゲルに
ガモフの人員が異動となった。
そうして事後処理を進められる中、ルークは一人、独房に来ていた。
「ラウ」
「やぁ、ルーク」
「さっき、お前の銃殺刑が決まった」
「そうか」
「お前は何がしたかったんだ?」
「ふふ、さあな。今となってはどうでもいい事だよ」
「お前は鍵と言っていたな。何をする気だったんだ?」
「そうだな。君には話しておこう」
クルーゼは語った。
自身の素性。自分の目的。全てを。
ルークは黙ってそれを聞いていた。
「そんな事を考えていたんだな」
「君はどう思うのかね?」
「もし世界がお前の言う通りなら俺も黙っているわけにはいかないな」
「やはり君は素晴らしいな。ついでに一つ頼まれてくれないか?」
「なんだ?」
「レイを頼む」
「わかった」
ルークは踵を返して独房のあるエリアから出た。
その数日後、クルーゼの処刑が執行された。