再び船外に出たソーマたちは作業用ポッドであるミストラルから降り
丁度氷が集まった岸に降り立ちクルーが並ぶ。
ミリアリアが前に立ち、胸元に潰れない様に優しく抱えた大量の花の折り紙を離す。
折り紙はその勢いに従って無重力の中を漂った。
「黙祷」
マリューの一言で全員が黙ったまま、静かに頭を下げた。
弔いが終われば作業を始める。
氷を切り、撃破された艦からミサイルなどの弾薬を取り出し、アークエンジェルに運ぶ。
そんな中キラとソーマはモビルスーツに乗り、周囲を警戒する。
こんな中で襲われればひとたまりもない。
キラはレーダーとモニターに集中する。
そんな時にある者を見つけた。
「民間船!」
デブリを見ていたキラは、その中に浮かぶ民間船を見つけた。デブリの多くが撃沈してから時間が経っていたものが多かったが、キラが見つけた民間船は真新しく、受けている傷も古びた様子が無かった。
「撃沈されたのか?これ?」
キラは咄嗟に、手近なデブリにストライクを隠した。ゴクリと息を呑む。
キラが視界の端で見つけたのは、一機の人影だった。
キラは大慌てで記録したデータを呼び出し、自分が目にしたのが何なのかを調べて行く。
「強行偵察型…複座のジン!なんでこんなところに… 」
前に戦闘した艦から出てきたのか?それとも別の目的があるのか?
色々とキラは考えるがわかっているのは一つだけだ。
「アークエンジェルが見つかって、応援を呼ばれたらアウトだ!」
今はとにかくすぐに狙撃するためにターゲットスコープを引っ張り出し、
狙いをつけて攻撃できる状態を維持しつつどこかへ行ってくれる事をキラは祈った。
「行け…行ってくれ……」
ターゲットスコープ越しに強行偵察型を見つめて、キラは祈るように呟く。できれば、
こんなところでは敵を撃ちたくはない。
そこでキラは、改めて自分が添えている引き金の重さに恐怖した。
偵察中に見た遺体。まるで生きているかのように見えるミイラ化したその姿は
思い出しただけで操縦桿を握る指が石のように固くなった。
撃ちたない。行ってくれ。
キラはただ祈っていた。
その祈りが通じたのかはわからないが強行偵察型はストライクから離れていく。
「ふう」
一息ついてターゲットスコープを治めようとした時だった。
一機のミストラルがサイドモニターに映る。
それに気づいたであろう強行偵察型が引き返してきた。
「バカやろう!何で気付くんだよ!」
キラが撃つより先に強行偵察型の狙撃用ライフルが火を噴く。
弾はミストラルの運ぶコンテナに当たりミストラルが揺れる。
このまま黙っていればミストラルがやられる。
キラはストライクの持つライフルの引き金を引いた。
撃ちだされたビームは強行偵察型の左腕を撃ち抜き爆発する。
強行偵察型はキラに狙撃ライフルを向けるが
キラが二三発ビームを放ちそのうち一発がコックピット部分を貫き、
強行偵察型は爆破した。
『ありがとう助かったよ』
『マジ、死ぬかと思ったぜ』
チャンドラとカズイから通信が入るが今のキラはそれどころではない。
殺した。その事でいっぱいだった。
明確な殺意を持ってキラはビームライフルの引き金を引いた。
そうしなければ友人が死ぬから。
だがその結果、その十字架が自身に重くのしかかった。
『キラ、大丈夫か?』
ふと顔を上げればメインモニターにアルカナとメビウスが映り、
コックピットのハッチが開いてソーマが入ってくる。
いつ敵が来るかもわからない状況ではあるのはソーマも分かってはいたが
それでも今はキラを落ち着かせることを優先した。
「撃ったか」
「はい」
「そうか」
「ぼ、僕」
「言わなくていい。全部わかってる。辛かったな」
ソーマはキラを優しく抱きしめて背中を摩る。
「落ち着いたか?」
「ありがとうございます」
少し恥ずかしくなりながらもコックピットから出るソーマを見送りハッチを閉める。
アルカナにソーマが乗り込むのを見届けた時、コックピットにアラートはなる。
ふと、キラはモニターの中に宇宙に浮かぶ「それ」を見つけた。それはデブリでもなく、
船の瓦礫でもない。三つの赤い光点が瞬くそれを見つめて、キラは小さく呟いた。
「救命…ポッド…?」
キラがアークエンジェルに持ち込んだ救命ポッドの前にアークエンジェルクルーが集まる。
整備士のルーンが端末を操作している。
「つくづく君は落とし物を拾うのがすきなようだな」
ナタルはつい皮肉をキラにぶつけるがキラの後ろに立つソーマに睨まれて
黙ってポッド見る。
「開けるわよ」
ルーンの声に保安部の兵士が銃を構えた。
扉が開くとまずソフトボールの球よりも少し大きいくらいのピンクの機会が出てきた。
「ありがとう。助かりました」
その後、ピンクの長い髪に、おっとりとした雰囲気の少女が出てくる。
その姿に見覚えがある人間は額に手を置いていた。