「ポッドを拾っていただいて、ありがとうございました。私はラクス・クラインです」
キラが拾ってきた救命ポッドに乗っていたピンクの髪を揺らす少女、ラクス・クライン。
彼女は救命ポッドが置かれたハンガーから、マリューやムウ、ソーマに連れられて
艦長室へと通されていた。
現在ギルデルクからクラウスも通信をつないで話を聞いている。
ラクスの周りでは、手に収まるほどの丸い形をした自立型ロボットが、
両耳のように付いた羽をパタパタと動かしている。
「ハロ!ラクス、ハロー」
「これは、お友達のハロです」
「ハロハロ。オマエモナー。ハロハロ?」
戦場ではかけ離れ過ぎた、その危機感と緊張感の無さに、クラウスもムウもソウマも、
地に着きそうなため息を漏らした。
「頭痛薬を取ってきます」
「私ももらえるかしら?」
マリューやナタルに至っては、どうやら致命傷だったようだ。
「クラインねぇ~。彼の、プラント現最高評議会議長も、シーゲル・クラインといったが…」
それぞれの自己紹介を終えたところで、行儀悪く艦長席の机の上に腰掛けるムウは、
自分のおぼろげな記憶をたどってそう言った。
その瞬間、ラクスの顔が「まぁ!」と言わんばかりに華やぐ。
「シーゲル・クラインは父ですわぁ。御存知ですの?」
ラクスの爆弾発言に、ムウはやっちまったと天を仰ぐ。通信機越しに話を聞クラウスも、
同じように深いため息をついた。
(能天気すぎるだろ。これが終盤で戦争終結の鍵になる人物になるんだ!)
結末を知るソーマにとって目の前の彼女が完全に箱入り娘にしか見えなかった。
ある意味では肝が据わっているとも言えるかと何となく納得した。
「そんな方が、どうしてこんなところに?」
気を取り直したマリューが、ラクスに問うと、彼女の表情に陰が差していく。
「私、ユニウス7の追悼慰霊の為の事前調査に来ておりましたの。そうしましたら、
地球軍の船と、私共の船が出会ってしまいまして…」
そう、それはとても不運なことと言いたげに、ラクスの表情は曇っていく。
「臨検するとおっしゃるので、お受けしたのですが……地球軍の方々には、私共の船の目的が、
どうやらお気に障られたようで…些細ないさかいから、船内は酷い揉め事になって
しまいましたの。そうしましたら、私は、周りの者達に、ポッドで脱出させられたのですわ」
「なんてことを…」
マリューの落胆した声が響く。クラウスは通信機の前で顎に手を添えて思考を深める。
地球軍が何ら事前連絡もなく民間船を臨検するなど、異例だ。少なくとも、
臨検を実行する宙域の連絡くらいはするはずだろう。
と、なれば。その臨検は仕組まれたもの。その民間船にラクス・クラインが
乗っていると知って過激な手段に出たのかもしれない。
問題は、地球軍がそれをどこで知ったかだ。
「それでー、貴方の船は?」
「分かりません。あの後、地球軍の方々も、お気を静めて下さっていれば良いのですが…」
ラクスの悲壮な声に、誰も答えることはできなかった。
なんて言っても、その民間船は撃沈されている。そこに残っている資材や食料を回収する
作業を行なっていた時に、キラがポッドを見つけたのだから。