アークエンジェルはラクスをどうする事も出来ずにそのまま乗船させて行動していた。
ようは後回しである。
だがこのお嬢様の能天気さというか箱入り娘っぷりを甘く見ていた。
鍵を掛けていれば大丈夫と士官室にいさせればまさかの鍵を勝手に開けて食堂に来てしまったのだ。
それにはフレイたちは驚きの声を上げる。
そしてソーマやシュンは溜息を付いた。
「中尉。この船って最新鋭の戦艦ですよね。民間人に簡単にロック外されてるんですけど」
「はぁ~。わかってる。ラクス嬢。申し訳ないのですがあなたはプラントの人間です。
一応今は客人として対応させてもらっていますがあまり勝手に出歩かれるとスパイ扱いを
しないといけなくなります」
「残念ですわ。私も皆様と一緒にお話ししながら食事をいただきたかったのに」
「規則ですのでご理解ください」
そう言ってもめ事が起こる前にラクスを遠ざける。
そしてソーマはシュンとキラと共にある場所に向かう。
「あの、どこに向かうんですか?」
「ん?ギルデルク」
「え!」
「良いんですか?」
「俺は勝手に出歩くなとは言ったが出歩いてはならないとは言ってない」
「ははは」
「まぁ」
シュンは乾いた笑いを上げてラクスは満面の笑みを浮かべキラは頭を押さえた。
そこに人影が現れる。
「フレイ!」
「ちょっとね。それよりどこに向かうのよ。その子の部屋はそっちじゃないでしょう?」
「ギルデルクだ。君も一緒に来るか?」
「え!」
「大丈夫だって艦長には許可を取ってあるから」
キラとフレイはどこか安心したようについて行った。
「というわけで一時、ラクス嬢をギルデルクにお連れしました」
マリューは開いた口がふさがらなかった。
勝手にクラウスとソーマの間でラクスを連れ出されていいたのだから。
クラウスやソーマにとっては機密云々は建前で本当はマリューに負担が偏りより過ぎていると
感じた為攻めてものという感じだった。
ソーマの言っていたのはクラウスの事でマリューはそこに含まれていなかったのだ。
勿論キラは二人の事だと思っていたので知った時は大変驚いていた。
それを思い出してソーマは心の中で笑っていた。
「な、なにを!」
「いや、だって最新鋭の機密の塊であるアークエンジェルに敵の親玉の娘を
居させるわけにはいかんでしょう」
そう言われると何となく納得してしますものがマリューたちにはあった。
どの道、扱いに困っていたのは事実だ。
むしろ厄介ごとの種を引き受けてくれるのだから感謝すべきかもしれない。
既に艦長の仕事に経験のないことだらけで内心いっぱいいっぱいのマリューには
それ以上反論する気にはなれなかった。
何かを言おうとしたナタルを黙らせて口を開く。
「わかりました。彼女の事はお任せします。責任は取ってくださいね」
「了解」
ギルデルクにも女性はいるし、女性特有の問題は特にどうという事もないだろうと
マリューはラクスに関する事をソーマたちギルデルクのメンバーに丸投げしたのだった。
ソーマたちがマリューに許可を取り付けている最中、
キラ達はシュンと共にギルデルク内を歩いていた。
「良いんですか?」
「いいの、いいの。その辺はそーまや艦長がどうにかするって」
「そんな適当な」
「いいんだよ、これで。適当に気を抜いておかないときついから」
本当に良いのかとキラは周りを見回すがギルデルクのクルーはラクスに手を振っている。
軍とは一体とキラは悩んだ。
「私、軍艦を見学するなんて初めてですわ」
「アンタ…課外学習じゃないんだから…」
そんなことを他所に、ラクスはキャッキャッと年頃の娘のようにギルデルクの艦内を見渡す。
そんな彼女をフレイは止める。
なぜ自分がこんな事をと思わなくもないがフレイもコーディネーターが苦手だが
放って置くと何をしでかすかわからず下手をすれば船外に出かねない今の彼女を
放置するほど残忍にはなれなかった。
「よう、ラミアス艦長の許可取れたぞ」
その内ソーマが合流した。
「おーこの子があの有名な…」
「俺!CD持ってます!サインください!」
「あ、握手をお願いしてもいいですか!?」
ソーマについてくるようにギルデルクのクルーたちが集まってきており、
ラクスもそれに嫌な顔一つせずに答え、気が付けばサイン会、握手会が始まっていた。
キラは再び軍とは?と悩んでいた。
「この戦争っていったい?」
その光景を見ていたフレイにはもはや父親が言っていた事が馬鹿らしくなっていた。
敵であるコーディネーターのはずのラクスに地球軍の軍人が群がりサインや握手を求める。
平時ならイベントとして親しまれる光景だろう。
だが今は戦時中、ラクスは憎むべきコーディネーターのトップの娘なのだ。
そのはずなのにとフレイは再び自身の常識を疑ってしまうほど
ほほえましい光景がそこにはあった。
「まぁ、ギルデルクの人間はコーディネーターとかそう言うのに対して
あまり忌避感のない連中が集まっているからな。
案外ミーハー集団と言えるかもしれないが。
でも人間そんなものだ。俺だって敵対してても敵対国の文化料理は普通に食える自信がある」
関わってなければそこまで忌避はしない。
勿論すべてではないが人間そんなものだ。ソーマも前世では
とある国が自国の領海侵犯を繰り返していたがその国に文句を言いながら
その国の料理を普通に食べていた。
何も考えていないというのは極論かもしれないが
それに近いのかもしれない。
「そうだ。フレイさんにクラウス艦長から伝言があったんだ」
「間違いないの!?」
時を同じくして、パルのもたらした吉報はアークエンジェルにも届いていた。
「間違いありません!これは地球軍第8艦隊の、暗号パルスです!解析します!」
《こちら…第8艦隊先遣…モントゴメリー…アー…エンジェル…応答…》
その音声を聞いたマリューは立ち上がって叫んだ。
「ハルバートン准将旗下の部隊だわ!」
その言葉に、アークエンジェルのブリッジは「うわぁあ」と歓喜の声で湧きあがった。
「探してるのか!?俺達を!」
「位置は!?」
ノイマンとトノムラがパルに聞き返す。
「まだかなりの距離があるものと思われますが」
「だが合流できれば…!」
「ああ!やっと少しは安心できるぜ!」
ノイマンの一言に、下士官全員が安堵する。
この長い旅路もようやく終わろうとしているような気がした。
「ええ!パパが!?」
「ああ!先遣隊と一緒に来てる」
ソーマがさっきマリューから聞かされた情報をフレイに告げる。
彼女も飛び上がるように喜んでいる。
「パパが…よかったぁ」
第八艦隊のモントゴメリー。アークエンジェルとは別に、同様の光学通信を受け取った
ギルデルクには、その船にフレイの父親であるジョージ・アルスターが乗艦している事を
知らされていた。
もともと、フレイを回収したのはアルスターの出した電文が理由だ。
イーグル隊の旗艦であるギルデルクに、娘が乗っているのだろうと踏んでの通信だ。
なんとも運がいい。ソーマは優しい笑みをフレイに向ける。
「君が乗っている事もアークエンジェルが伝えてくれている。
アルスター事務次官から君宛の伝言も預かっているよ」
「パパが…よかったぁ」
「よかったね。フレイ」
そう笑いかけるキラに、フレイは嬉しそうに頷くのだった。
同時刻ルークの部隊も同宙域にいた。
「間違いないか?」
「はい。先ほど諜報であれから送られた極秘電波をとらえ
第八艦隊所属であると更に補給物資の運搬してきていること、
それとこれはあまり関係ないのですが我が娘フレイ・アルスターと話がしたいと」
「確定だな。あの船は足付きに合流しようとしている。これを阻止する」
「仕掛けるんですか?我々にはラクス・クラインの探索が…」
「心配な気持ちは理解している。アスラン。だが俺達は軍人だ。
敵が力をつけようとしている今それを見過ごすことは出来ない。
レイラ!ルイス!モビルスーツ隊全機発進準備。俺も出る。
戦闘目的は敵戦艦三隻を無力化し外務次官ジョージ・アルスターの捕縛だ」
「『はい』」
しばらくして準備が整う。
「各員、作戦目標は聞いているな。間違っても戦艦をつぶすなよ」
『了解』
「ルーク・ロドクルーン、ブレリュード出るぞ」
ルークを先頭にイージス、シグーアサルトHM、一機、ジン、五機が出撃する。
『隊長』
「アキトか。怪我は大丈夫か?」
『大丈夫です』
「元は俺の機体だが扱いは大丈夫か?」
『ピーキーですが何とか』
「なら、活躍を期待している」
『はい』
三人称
その頃ルークの目的である三隻の艦を率いる男。コープマン大佐は
急ぎ戦闘準備を始めていた。
「モビルアーマー全機発進急げ。CIC敵の数は?」
「ジン5、シグー1、アンノウン1、それとイージスです」
「ヘリオポリスを襲った部隊か?アルスター外務次官、急ぎ救難艇に。
いざとなればあなただけでもアークエンジュエルに」
「ふざけるな。自分たちで作ったモビルスーツにやられてたまるか。
あのイージスだけは何としても墜とせ」
「く、了解」
次々とモビルアーマーが出撃していく。
(あの中で何人帰ることができるか?)
だがコープマンはこのままジョージの無茶な命令をこなすしかない。
ルークSADE
戦闘が始まって五分。モビルアーマーが攻撃してくるが次々落とす。
「クロエ、レオンハルト。船の方はどうなっている?」
『ビーム砲とミサイルはつぶしました。すぐ終わらせます』
「急げ、足付きが来る前に終わらせろ。雑魚に時間をかけるなよ」
『『『『『『はっ』』』』』』
それぞれが動く。
その間にもメビウスが攻撃を仕掛けるがそれらを全て躱してそれらを撃墜する。
「数ばかり多い」
舌打ちしつつ数分で周りのメビウス全て落とした。
「全機残りは?」
『すべて終わりました』
『隊長、敵旗艦の艦長から降伏の申し出が来ました。
更に脱出を図っていたジョージ・アルスター事務次官の存在も確認しています』
「よし、計画通りだな。全機一旦帰還して次に備えろ」
それぞれが行動を開始する。
先遣隊がZATEから攻撃を受けていると聞いて
急いで救援に向かったが既に戦闘は終了し旗艦モンゴメリーをはじめ
バーナード、ローも既に鹵獲されているという報告が上がって来た。
(ルークの仕業か?もしクルーゼなら原作通り撃墜しているだろうしな)
ジョージ・アルスターの生死は不明だが彼は外務次官でありブルーコスモスの盟主だ。
正直、どちらに転ぶかわからない。
「ここら敵機の数は分かる?」
「はい。かろうじてですがジン5、シグー1、それとブレリュードとイージスです」
「ちっ、ロドクルーンか。厄介な」
ムウは舌打ちし、ソーマは考えを巡らせる。
『それも見越して捕らえたのか?偶々捕えてみればいたのか?』
「それはわからんがこっちは一大事だ」
『とにかく今後の方針を決めなければならない。
救出するのか、それとも・・・・・見捨てるのかをな」
クラウスが突き付けたのは残酷な二択だ。救出に向かえばあれらと戦闘になるのは必然だ。
そうなればイージスは勿論ジン五機にシグーも相手にしなければならない。
対するこちらはユニウスセブンで物資を集める事が出来たとはいえ
キラのストライクにソーマのアルカナ、ムウのメビウス・ゼロにシュンのメビウスだけだ。
いくら雷神と言えども戦力差は歴然。
勝てる見込みはない。
かといって見捨てれば自軍に小さくない損害になる。
更にこの船にはフレイ・アルスターが乗っている。
いつ錯乱して何をしでかすかわからない。
誰もがだまってしまう中、ナタルが口を開く。
「では、ラクス・クラインと交換してはどうでしょう?」
この場所にいたという事はもしかすればラクスを探しに来たのかもしれないと
ナタルは可能性を述べる。
時間的に考えればその可能性はある。
その中で偶々先遣隊を見つけたのかもしれない。
「だがそれだとこちらが危険だ。
相手はあのロドクルーンだ。へたに通信をつなげばこちらが危険になる」
「そのことも大丈夫かともしこの艦を攻撃すればラクス・クラインにも危険が及びます。
それくらいあちらも理解しているかと」
「それはそうだが」
『民間人をそのような事はしたくはないが仕方がないか』
そして通信を入れる。
「こちらは地球連合軍所属アークエンジェルです。ZAFT軍聞こえますか?」
代表してマリューが話す。
『ZAFT軍ロドクルーン隊、隊長ルーク・ロドクルーンだ』
モニターにルークの姿が映る。
その姿を見てアークエンジェルクルーはキラと似ているなと思う。
だがすぐに切り替えて気持ちを切り替えた。
「それでわざわざ自分たちの所在を明かして如何様な要件だ?」
インテグラのブリッジに戻ったルークは通信越しにマリューと話す。
『我々は今、シーゲル・クラインの令嬢、ラクス・クラインを保護しています』
「それで、こちらの捕虜と交換してほしいと?」
『はい』
少しの時間沈黙の後、ルークは口を開いた。
「いいだろう。こちらで捕えた艦は交換とさせてもらおう」
『ありがとうございます』
「ただし、アルスター事務次官に関してはこのまま捕虜として本国に護送する。
勿論国際条約は遵守することはこの場で約束しよう」
『そんな』
「当然だろう。いくら何でも不釣り合いだ。
そもそも、あなたの話は国際問題になりかねない。
彼女は議長の娘とは言え、民間人だ。
その民間人を盾に交渉している自覚はあるのか?」
『それは!自覚しております。本来なら交渉すらできない事は理解しております。
ですがお願いします』
マリューは頭を下げた。
それを見たルークは一つ溜息を付いた。
「わかった。ただしラクス・クラインの返還を最初とさせてもらう。
双方の艦を停止しラクス・クラインの返還し彼女の無事を確認後、
救命艇でジョージ・アルスター事務次官と艦と人員を返還する。
更にこの場において相互に攻撃をしない事。これが条件だ」
『ありがとうございます』
通信を切った。
(これでよかったのか。それは後にわかる事だ)
ルークは一人思案の海に意識を持って行った。