機動戦ガンダムSEED-風神と雷神-   作:秋月 了

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PHASE-20 作戦会議

捕虜交換から数時間。

アークエンジェルとギルデルクを囲むようにモンゴメリ、バーナード、ローが飛ぶ。

あれから整備士たちが総出でエンジンのみ修理を行い、何とか航行している。

そんな中、アークエンジェルではマリューとムウが話していた。

 

「艦隊と合流まであと少しか」

 

「ようやくこの着の身着のままな旅も終わりが見えてきた、という事でしょうか?」

 

「まだ気は抜けないがな」

 

この先、どうなるかはわからない。現状先遣隊は武装のほとんどを吐かされた状態であり

ほぼ足手まといと言わざるを得ない。更にアルスター外務次官が乗っている為、

更に気が抜けない。キラがストライクに乗っている事を知れば何をするかわからない。

だからこそ、あえてその辺の報告は上げていなかった。

方向にあげたのは民間人が乗っている事だけだ。

その民間人だって名前のみで詳細は報告していない。

その辺りはクラウスがコープマンに話をつけていた。

 

「あのナスカ級にはロドクルーンが乗っていたしな。

アイツからの追撃が可能性として消えただけでもだいぶ気が楽だぜ」

 

ムウは本心から安堵している自分を認めた。

 

 

 

 

 

 

プラント本国へと向かう戦艦インテグラとキリネイラム。

そのインテグラの士官室にラクス・クラインはいた。

 

「失礼します。ラクス嬢、お食事をお持ちしました」

 

「あら、アスラン! どうぞ」

 

「失礼します」

 

やはり見知った仲の者が来てくれるのは気が楽であった。

キラやソーマ、フレイにギルデルクのクルーとは楽しい時間を過ごした。

それは彼女の中ではとてもいい思い出となっている。

だが所詮は敵の船。自分から父親の名を晒しておいてなんだが

ラクスにはありえないとわかっていながらもいつ銃を向けられてもおかしくない状況に

小さな不安があった。

もっともギルデルクに移ってからはそんな不安は彼女からは吹っ飛んでいたが。

そんな普通に生きていれば絶対に体験できないであろう体験を現在進行形でしている

彼女にとってアスランの存在は気も休まる存在と言えた。

そのアスランはハロとは別に彼女が何枚か持つ写真をみた。

 

「何か?」

 

アスランの視線に気が付いたラクスはアスランに微笑みながら問いかける。

 

「あっ…いえぇ…あ…何を見てるのかと思いまして……その…いろいろありましたから…」

 

「私は元気ですわ。あちらの船でも、皆さんや、貴方のお友達が良くしてくださいましたし」

 

見てくださいなと、ラクスが差し出した写真をアスランは眺めた。

そこには歌うラクスとそれに合わせて持ち込んでいたであろう楽器を弾く地球軍の士官。

それを楽しそうに笑いながら見ている他の士官たちが映っていた。

他にも食堂でミニライブを行っていたと楽しそうに話すラクス。

写真の中にはキラもいて、地球軍の制服をきた何人かの男性乗組員とじゃれ合ったり、

笑顔で話をしたりしている様子も映っている。

 

「キラ様はとても優しい方ですのね。そして、とても強い方」

 

その写真を見て、ラクスの言葉を聞いて、アスランは固く拳を握りしめた。

 

「あいつはバカです!軍人じゃないって言ってたくせに…まだあんなものに。

あいつは利用されてるだけなんだ!友達とかなんとか…あいつの両親は、

ナチュラルだから…だから…」

 

「貴方と戦いたくないと、おっしゃっていましたわ」

 

気がつくと、ラクスは悲しそうな目をしてアスランを見ていた。

その目を見ていると今まで押し殺していた感情が溢れ出し、

アスランは堪らずに心の縁から溢れた思いを口にする。

 

「僕だってそうです!誰があいつと…」

 

戦いたいと思うものかーー。そこで、アスランはキラの言葉を頭の中で反復させた。

自分の大切な人を傷つけると言うならーー。アスランは、

すでに大事な母をナチュラルに殺されていた。その死の苦しみからも、苦難からも、

立ち直れていないし折り合いも付けれていない自分がいる。

その弱さを、自分はザフトの赤服で覆い隠しているのではないかーー?

 

「失礼しました。では私はこれで」

 

ハッと意識を切り替えて、アスランはラクスに敬礼を向けた。

 

「辛そうなお顔ばかりですのね。この頃の貴方は」

 

扉から出る直前に言われた言葉を今でも覚えている。そして返した言葉も。

 

「ニコニコ笑って戦争は出来ませんよ」

 

笑って戦争をするなんて、そんなもの狂人の考えだと思ってアスランは部屋を後にした。

ラクスは悲しげに目を伏せる。

ニコニコ笑って戦争をしてほしいなんて、思っていない。できることなら、笑顔で、

あの船の乗組員たちのようにーーナチュラルもコーディネーターも分け隔てなくいられる世界を、

ラクスはアスランに願って欲しかった。

だがラクスのその思いは婚約者には届かない。

彼は今も母親を失った悲しみと殺された恨みに捕らわれているのだから。

 

 

 

 

 

 

アークエンジェルをはるか遠くから追跡する者たちがいた。

イザーク率いるジュール隊だ。

イザークは先日のクルーゼ処刑の後、隊長に任じられた。

もっとも隊長としてどころか軍人としても新米の彼はルークの指揮下にある。

立場的には普通の軍隊に例えるとロドクルーン隊を小隊とするなら彼は分隊長と言った所だろう。

その事もあり、副長のアデスにはイザークの監督という任も与えられている。

今ヴェサリウスのブリッジにはイザーク、アデス、ディアッカ、二コルの四人が集まり

宙域図を見つめながら作戦会議が行われている。

 

「艦隊との合流前に追いつくことはできますが、この計算だと月艦隊の射程を

考慮して撤退するまでは精々10分しかありませんよ」

 

「おいおい、10分はあるってことだろ?」

 

「10分しかないのか。それとも10分はあるのか。

それは人によって捉え方は違うだろうが、俺は十分はあると考えている。

このまま何もしないで合流を見逃し足つきを見送り、ロドクルーン隊長と合流など、

俺はごめんだがね」

 

「同感だな。奇襲の成否はその実働時間で決まるもんじゃない」

 

「それは、わかってますけど……」

 

慎重論を展開しする二コルはイザークとディアッカに反論され、言葉を失った。

 

「ならばどうする?このまま無策で突っ込むわけにはいくまい」

 

アデスがイザークに問いかけた。

その目には何か策があるんだろうなという意思が込められていた。

 

「それはわかっている。現状俺達ではあの可変MSを撃つのは不可能だ。

だからこそ母艦を討つ。後はこちらの消耗を抑えつつ戦う」

 

母艦さえ落とせば打つ手はある。

イザークはそう考えていた。

勿論艦隊に合流される可能性はあるがMAが何機来ようが敵ではない。

 

「俺とディアッカとあと二人でモビルスーツとモビルアーマーを引き離す。

アデス艦長は艦砲で注意を引き付けてくれ。

その間に二コル、お前がブリッツの特殊装備で足付きに取り付け」

 

正直、イザークとしてはミゲルがいない事に惜しいと思った。

現在、この艦にはパイロットはイザーク、ディアッカ、二コルと

この場にはいないもう二人しかいない。

ミゲルとラスティはガモフで別の部隊に異動となった。

ミゲルがいれば他にももう少しいい作戦も足られただろうと内心思っていた。

 

「オーケー。任せろ」

 

「わかりました」

 

イザーク達は行動を開始する。

アデスはそれを黙って見送った。

 

「最初は心配だったがどうやら大丈夫のようだな」

 

そう呟いて艦長席に座る。

 

「ヴェサリウス、最大船速。出来る限り早く追いつくぞ!」

 

アデスはクルーに指示を出す。

全ては勝利の為に。

 

 

 

 

 

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