整備班総出で行われた作業が落ち着いたころ、アークエンジェルの2番ドックには、
メネラオスから発進した移送用のランチが着艦していた。
デュエイン・ハルバートン提督。
第8艦隊を率いる指揮官であり、ブルーコスモスの過激な思想に染まっている
連合の将官、上層部の中でも、数少ない常識的で穏健派な人物である。
そんな彼が彼がアークエンジェルにやってきたのはつい先ほどのことだ。
「ヘリオポリス崩壊の知らせを受けた時は、もう駄目かと思ったぞ。
それがここで、君達と会えるとは…」
「ありがとうございます!お久しぶりです、閣下!」
クルー総出で出迎える中、ハルバートン提督は険しい航海をしてきたアークエンジェルのクルーや
ギルデルクの乗組員を労わるように見渡してから、
自分の前に出て敬礼をするマリューの手を優しく握った。
「先も戦闘中との報告を受けて、気を揉んだ。大丈夫か?」
ハルバートン提督の言葉に、マリューは目尻に涙を溜めながら頷いて答える。
すると、ほかの乗組員の中から、何名かが前に出て敬礼を打った。
「ナタル・バジルール少尉であります!」
「第7機動艦隊、イーグル隊所属、ムウ・ラ・フラガ大尉であります」
「同じくソーマ・ベリアルイン中尉です」
「同隊所属シュン・イザワ少尉です」
「第7機動艦隊、ドレイク級宇宙護衛艦ギルデルク艦長、クラウス・ローグスター中佐です」
敬礼し名を述べた者から順に、ハルバートン提督は固く握手を交わしていく。
「皆、ご苦労だった。ローグスターくん、久しいな。それにイーグル隊。
君たちが居てくれて幸いだったな」
するとハルバートン提督は乗組員たちの一角にいるサイやトールたちを見た。
「そして彼らが…」
「はい、艦を手伝ってくれました、ヘリオポリスの学生達です」
「おお、そうか」
ハルバートン提督は笑顔でサイたちとも握手を交わした。
その笑顔には軍人らしい強張った気配も、作り物のような張り付いた雰囲気もなく、
心から彼らに感謝をしているような、そんな笑顔だった。
「君達の御家族の消息も確認してきたぞ。皆さん、御無事だ!とんでもない状況の中、
よく頑張ってくれたなぁ。地球連合軍を代表して礼を言う」
まくし立てるようにハルバートン提督が学生グループに声をかけていくが、
提督の副官であるホフマンが耳打ちするように声をかけた。
「閣下、お時間があまり…」
「うむ。後でまた君達ともゆっくりと話がしたいものだなぁ」
そう言って笑顔で挨拶を交わして、ハルバートン提督はマリューやナタル、クラウスと共に
ハンガーを後にした。
ルークSAID
「ヴェサリウス、キリネイラム、ガモフ、ツィーグラーと合流しました」
『ご苦労様です。ロドクルーン隊長』
モニターにイザークが映る。
その顔には顔の左側を覆うように包帯が巻かれていた。
「先の奇襲戦の報告は聞いた。傷はいいのか?」
『はい。問題ありません』
「なら次の戦闘でも動いてもらう。
足付きは艦隊と合流した。さてどうするか?」
『攻めるのですか?』
「私はそのつもりだ。君の意見は?」
『私もそのつもりです。ですが』
「ああ、相手は艦隊二つだ。無策で突っ込めばやられるのはこっちだ。
俺達が攻めた場合、艦隊がとる行動は二つしかない。
自分たちを盾にして足付きを地球におろすか?
逆に足付きを囮にしてモビルスーツを引き寄せての艦隊決戦かだ」
『なるほど』
「俺は前者で来ると踏んでいる。艦も機体の数も向こうが圧倒的だ。
それに雷神もいる。うまく動かせば守り切れると考えるはずだ。
ならこちらは全力で足付きを堕とす」
『後者だったらどうしますか?』
「後者なら簡単だ。足付きを諦めて向かってくる奴らを堕とす」
『了解です』
イザークはそこで通信を切った。
「ルイス、艦を頼むぞ」
通信を切りブリッチを出ていく。
「さて久々の勝負だ。ソーマ、キラ・ヤマト」
ルークは笑みを浮かべていた。