モニターに映るアルカナとブレリュードの戦闘を見ながらハルバートンは舌打ちする。
その間にも訃報が次々と舞い込んできていた。
「セレウコス、被弾、戦闘不能!」
「サンドロス、沈黙!」
「アンティゴノス、プトレマイオス、撃沈!」
「敵ナスカ級二、及びローラシア級接近!」
「セレウコス、カサンドロスに突撃照準!」
その報告にハリバートンは再び舌打ちする。
そして二隻の艦が戦闘不能に陥り、離脱しようとする艦をルークも観ていた。
「二コルとアスランは少し甘いな。人を残せば、そいつはまた新たな武器を手に、来るぞ!
ルイス、アデス!マーク85イエロー50チャーリーに離脱艦だ!沈めろ!!」
『了解。主砲照準』
インテグラとヴェサリウスの主砲からビームが放たれる。
ビームは離脱していた二隻を確実に捉えて撃った。
ビームを受けた二隻を爆発と共に破壊された。
「離脱中の艦を……おのれロドクルーン!」
ルイスとラクスの最大の違い。それは年齢や歌の上手い下手ではない。
差の最大の違いは何と言ってもその容赦の無さだ。
今の場面、もしラクスなら確実に拒否していただろう。
だがルイスにはそれが無い。いや亡くなったと言うべきだろう。
ルークと共に戦場を駆けてここまで生き残ってきたのだ。
彼女は敵を残す事の危うさをいやでも理解させられた。
アークエンジェルからの通信が入ったそんな時だった。
「なんだ?」
『本艦は、艦隊を離脱し、方向、降下シークエンスに入りたいと思います。許可を!
「なんだと!?」
「自達だけ逃げ出すという気か!」
マリューの発言にハルバートンは驚きの声を上げホフマンが怒りの声を上げる。
『敵の狙いは本艦です!本艦がいれば、このまま艦隊は全滅です!』
「うっ…」
マリューが確かな事実を告げる。
マリューの発言は尤もな事と自身でも理解していたホフマンは黙ってしまった。
『アラスカは無理ですが、この位置なら、地球軍制空権内へ降りられます!
突入限界点まで持ちこたえれば、ジンとザフト艦は振り切れます。閣下!』
ハルバートンは悩む。
確かにこのままいけば第8艦隊は壊滅的被害を受ける事は間違いない。
ソーマや第7艦隊のMA組が頑張っているが肝心のG兵器の足止めは出来ておらず、
護衛艦や第8艦隊のMAはただ的になっているだけというのが現状だった。
ここでハルバートンはある決断をする。
「相変わらず、無茶をする奴だな。マリュー・ラミアス」
『部下は、上官に習うものですから』
「いいだろう。 アークエンジェルは即座に降下準備に入れる。
限界点までは正確に言ってやる。送り狼は、1機も通さんぞ!
アーガマにはそのまま戦闘状態の維持を命じろ!ベリアルイン中尉を呼び戻せ!」
「「はい!」」
マリューは通信を切り、降下準備の為に指示を出した。
地球への降下が艦内に伝わる。
ムウとマードックは待機しながら話していた。
「降りる!この状況でか?」
「俺に怒鳴ってって、しゃーねぇよ!まあこのまんまズルズルよりかはいいんじゃねえですか?」
「いや…でもさぁ」
「ザフト艦とジンは振り切れてもあの4機が問題ですね」
「キラ」
二人の話にキラが加わる。
「ベリアルイン中尉は?」
「多分。ロドクルーンにかかりっきりなんだろう。
抑えることが出来るのはあいつだけだろうしな」
「フラガ大尉」
「わかってる」
ムウは一度、コックピットに戻り通信を開く。
キラもストライクに戻り通信を同調させる。
「艦長!…ギリギリまで俺達を出せ!何分ある?」
『何を馬鹿な!』
『カタログスペックでは、ストライクは、単体でも降下可能です!』
『キラ君・・・・・わかりました。ただしアークエンジェルの直掩に。4機への牽制をお願いします
イザワ少尉はそのまま待機を!』
「『『了解』』」
エールストライカーを装備したストライクとメビウス・ゼロが発進していく。
それを見届けたマリューも降下への準備を急いだ。
「降下シークエンス、再確認。融除剤ジェル、噴出口、テスト」
「降下シークエンス、チェック終了。システム、オールグリーン」
「修正軌道、降下角、6,1、シータ、プラス3!」
「閣下!」
『うむ。アークエンジェル降下開始』
「降下開始!機関40%。微速前進。4秒後に、姿勢制御」
アークエンジェルはメネラオス旗下の艦隊から離れ、徐々に地球へとその艦体を下ろしていく。
アークエンジェルから出撃したストライクは艦のすぐ近くに陣取る。
するとすぐにレーダーに反応があった。
「デュエル!装備が!」
「堕ちろーーーー!」
イザークの叫び声と共にデュエルはビームを放つ。
ストライクはそれを回避してビームサーベルを抜き、切り込んだ。
デュエルもそれに受けて立つ為にビームサーベルを抜いて切り込んだ。
「足付きが降りるか。予定通りだな」
ルークはそうつぶやいて機体をアークエンジェルに向ける。
ここまではルークにとって予定通りの範疇だった。
原作を知るからこそ彼は急ぐ。
何としてもあれだけは止めないといけない。
そう思っている事があった。
そんな時だった。
『何をやっているのです。戻りなさい!ガモフ!ゼルマン艦長!』
ルイスの声が通信越しに聞こえてくる。
「どうした?」
『それがガモフが勝手に前進を!』
「なんだと!」
急いで通信を開いてガモフに呼び掛ける。
「ガモフ。応答しろ!何をやっているんだ!ゼルマン」
しかしガモフからの返答は無かった。
(甘かった。俺はゼルマンの覚悟を図り間違えていた)
ガモフの乗組員はアークエンジェルとの直接戦闘はこれまで無かった。
だからこそ原作のような無茶はしないだろう。
ルークはそう考えていた。だがそれは甘かったのだ。
それを示すようにガモフは全身を続けて一番近かったドレイク級と戦闘を開始した。
「くそっ」
ルークは機体をそちらに向ける。
MA形態のまま、ビームサブマシンがでドレイク級の艦橋を破壊した。
ここでようやくガモフから通信が返ってきた。
『ロ……ドク……ちょう。おこころ……かん……ます』
「俺の事はいい。行け!行って己が自分に課した使命を果たして見せろ!」
『!・・・・はっ』
ゼルマンは覚悟を決めた表情で返答し通信を切った。
《くっそーーーー!》
ムウのメビウス・ゼロがガモフに接近してガンバレルとレールガンを使用して攻撃を加える。
「させるか!」
それをルークはガンバレルをビームサブマシンで全て堕として防いだ。
「ゼルマンの最後の意地だ。邪魔をさせるわけにいくか!」
退避していくムウを見送る。
丁度その時ガモフの下部にあるMS格納ブロックが爆発を起こした。
「な!ちぃ。ソーマか!」
モニターにソーマのアルカナが映る。
その後ろには追い付いてきたアーガマの姿もあった。
《させねぇぞルーク!》
「邪魔するなよ。ソーマ!」
再び両者はビームサーベルを抜く。
ソーマはスラスターを全開にしてルークを押し出した。
「何を!」
《お前相手に真っ向から勝負しても時間を食うだけだからな。邪魔はさせないぞ!》
舌打ちをしてモニターを見る。
ガモフは現在メネラオスと交戦している。
しかしそれを後方からアーガマがメガビーム砲やミサイルを撃ちまくっている為、
すぐに撃沈されてしまうのは目に見えていた。
「ちぃ。ルイス!アスランと二コルは呼び戻せ!他のジン部隊もだ!」
『しかし、ガモフが』
「今から向かっても何も出来ない。それより部隊を連れて戦闘宙域を離脱しろ」
『隊長は?』
「俺は出過ぎた馬鹿二人を連れ帰る」
『了解』
ルークはアルカナから掛かる力を受け流す事で外して今度はデュエルの下へと向かう。
丁度、メネラオスを追い越してアークエンジェルをレーダーで捕えた時、
後方で爆発が起こると同時にレーダーからガモフの反応が消えた。
「ゼルマン・・・・・すまない」
そう言ってからデュエルの下への向かう。
既にバスターは大気圏に突入しており戻る事は叶わない。
それはデュエルも同様だ。
そもそもルークには最初からデュエルやバスターを連れ戻す気はない。
戦闘で大したダメージを追っていない2機なら原作通り地球に降下出来るだろう。
そう考えているからだ。
降下しながらモニターとレーダーを駆使して
メネラオスから射出されているであろう脱出用シャトルを探す。
「見つけた!」
シャトルは丁度ストライクとデュエルの真上を降下していた。
「まずい!」
スラスターをフルスロットルにして機体をシャトルに向ける。
ストライクがデュエルの頭部を蹴り飛ばして距離が出来る。
デュエルがビームライフルを向けるが丁度その時、シャトルがストライクとデュエルの間を通った。
『良くも邪魔を!』
「イザークよせ!それは民間機だ!」
しかしイザークは頭に血が上り、ルークの声が聞こえていなかった。
「くそっ」
ブレリュードはデュエルを通り過ぎてシャトルを目指す。
当初はデュエルに体当たりする事も考えたがもし、デュエルに損傷が出てしまえば
イザークが生きて降下しきれないかもしれない。
それだけは生きないとルークは考えて機体をシャトルに向ける。
「変形は間に合わない。仕方がないか」
モニターでデュエルがビームを撃ったことを確認して、
機体でビームを受けるように射線上に滑り込ませてそれを防いだ。
「イザーク!」
『隊長!』
「これは民間機だ。撃つな!」
『申し訳ありません』
「命令だ。お前とディアッカそのまま降下してジブラルタルに向かい、そこで次の指示を待て」
「しかし、隊長は?」
「俺は大丈夫だ。気にするな」
ルークは機体をMS形態にして近くにあったデブリを捕まえてその陰に隠れるようにして降下する。
「ぎりぎりだな」
ルークは地球へと降下していった。
同時刻アークエンジェルでも降下が最終段階に向かっていた。
「ストライクとアルカナは?」
モニターにシールドで熱を防ぎながら傾き始めていたシャトルの姿勢を戻そうとする
ストライクとアルカナが映る。
「あのままシャトルと降下する気か!」
「本艦とストライク、アルカナ、突入角に差異!このままでは降下地点が大きくずれます!」
「キラ!ベリアルイン中尉!戻れないの?艦に戻って!」
「無理だ。ストライクの推力では…もう…!」
ミリアリアが二人に必死に呼びかけるがナタルはそれを苦しげに否定した。
だがマリューに咄嗟に考えが浮かんだ。
「艦を寄せて!アークエンシェルのスラスターならまだ…!」
「しかし!それでは艦も降下地点が!」
「ストライクを見失ったら意味がないわ!早く!」
ノイマンが指示に従ってすぐに艦をストライク側に寄せる。
キラ達はそれに感謝しつつ、機体をアークエンジェルに着艦させた。
「ストライク、アルカナ、シャトル着艦」
パルの報告にブリッジメンバーは安堵しつつ、降下を続行。
数時間後アークエンジェルは地表に降り立った。