機動戦ガンダムSEED-風神と雷神-   作:秋月 了

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PHASE-29 砂漠の夜

「ふわぁぁ…はぁぁ…眠い…」

 

そう言いながらも制服に腕を通したトールは、しっかりと身支度を整えているミリアリアに

連れられてアークエンジェルのブリッジへ向かっていた。

夜が更けているとは言え、ここはザフトの領域。監視を疎かにすることもできないので、

少ない人員の中、二直交代制で周辺警戒を行なっている。

今夜の担当はミリアリアとトールだった。

 

「もう、ちゃんと着なさいよー。そんな顔でブリッジに入ったら、

バジルール中尉に怒鳴られるわよ?」

 

そう言ってだらし無く着流すトールの制服を整えながらブリッチに向かう。

その時向かいからサイとフレイが談笑しながら歩いてくる。

トールとミリアリアはすれ違う少し手前の通路を曲がりブリッチに向かった。

 

「婚約者だったってのも驚いたけどなぁ…」

 

「婚約者じゃないわよ、まだ話だけだって…」

 

「同じようなもんじゃん?」

 

そう言うトールの言う通り、サイもフレイもまんざらでもない雰囲気だった。

トールはキラが、フレイのことを少し意識していたことを知っていたが、あれは勝ち目ないと

心の中で確信しながら友人を慰めた。

 

「フレイ…変わったよね」

 

「うん。いい意味でな」

 

「ほんとね。前はキラのこと、嫌ってたって訳じゃあないけど…」

 

「コーディネーターが嫌いだったんだろ。親父さんの影響もあって」

 

「そうみたい」

 

「コーディネーターが居なくても、ナチュラル同士でも戦争になってた、かぁ」

 

「フレイの言ってた言葉?」

 

首をかしげるミリアリアに、トールは頷いて応えた。

 

「俺たちってコーディネーターとかナチュラルとか言ってるけど、

一体何と戦争してるんだろうな」

 

「そうねぇ」

 

二人は同時に首をかしげる。

この戦局でも尚、地球軍内は二分化している。

コーディネーターこそが悪とするブルーコスモス思想と

この戦争はあくまでプラントが敵であるとする思想。

誰もが悩み考えるがそれもわからない。

今のミリアリアやトールにはとにかく大切な人に攻撃をしてくる相手を、

倒すことだけが全てだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

ルークSIDE

 

 

ジブラルタル基地に着いたルークは軍の通信機を利用してルイスと通信していた。

 

『ご無事で何よりです。隊長』

 

「ああ。イザークのビームがシャトルの破壊しようとした時は焦ったがな。

それよりもだ。しばらくそっちを任せていいか?ルイス」

 

『お任せを。それとザラ委員長から通信が確立次第連絡をしろと』

 

「わかった。すぐ連絡する」

 

『お願いします』

 

ルイスは通信を切った。

ルークはそのまま国防委員長の執務室に通信を入れる。

通信相手は国防委員長、パトリック・ザラだ。

 

『無事だったか。ロドクルーン隊長』

 

「死にかけましたがね」

 

『報告は聞いた。よく救難シャトルを守ってくれた。

もし撃墜していたらオーブとも事を構える事となっていたところだ。

このような件を見過ごすわけにはいかない。

イザーク・ジュールへの処分が決まった。

三週間の謹慎処分となった。君から伝えてくれ』

 

「了解です」

 

『話は以上だ。必要な資料は基地司令から受け取ってくれ』

 

パトリックは通信を切った。

それから基地司令から資料を受け取りイザークの元に向かう。

 

「「ロドクルーン隊長!」」

 

「イザークもディアッカも無事だったようだな」

 

「はい。それとありがとうございました」

 

「その様子だと自分がやらかした事を理解しているようだな」

 

「はい」

 

「なら、改めて処分を告知する。お前には三週間の謹慎処分が下った。

未遂に終わったとはいえ処分は逃れられない。

基地司令が一室用意してくれている。そこでしっかり反省しろ」

 

「はい」

 

イザークはうつむきながら部屋を出て行った。

 

「イザーク」

 

「イザークが心配か。ディアッカ」

 

「ここ数日、すごく悩んでいたようなので」

 

「そうか。なら大丈夫だろう。怒りで我を忘れてもあいつにもちゃんと意思はある。

友人ならそれを信じて待っていてやれ」

 

「はい」

 

「さて。お前には別の任務がある」

 

「任務ですか?」

 

「ああ。バルトフェルド隊が足付きとぶつかるそうだ。

その救援部隊に同行する。お前も準備しておけ」

 

「わかりました」

 

ルークは部屋を出てブレリュードの整備状況を見に行った。

 

 

 

 

 

アークエンジェルブリッチ

 

 

 

 

「船の排熱は、ブラックホール排気システムを通じて冷却されるから、

衛星からの赤外線探査さえ誤魔化せれば何とかなるし、

レーダーが当てになんないのは、お互い様だしさ?」

 

「交代です」

 

「お疲れさん」

 

話をしていたオペレーターと通信制御権を交換して、ミリアリアは慣れた手つきで

アークエンジェルの管制モニターを操っていく。

トールはノイマンから操縦桿の制御権もらいシステムをチェックしていく。

 

「ニュートロンジャマーかぁ…撤去できないんですか?」

 

チャンドラとカズイの会話を再開する。

 

「無理無理。地中のかなり深いところに打ち込まれちゃっててさぁ、

数も分かんないんだぜ?出来りゃやってるよ」

 

それはそうである。

被害を考えたら誰だってそうしたいのは当然である。

 

「電波にエネルギー、影響被害も大きいけどなぁ。でも、核ミサイルがドバドバ飛び交うよりは

いいんじゃないの?ユニウスセブンへの核攻撃のあと、核で報復されてたら、今頃地球ないぜ?」

 

二人の会話を聞きながらトールはそんな未来を想像してゾッとする。

自分たちが見たユニウスセブンの光景で地球が埋め尽くされていると考えたら、

それはもう地獄としか言いようがない。

 

「異常はないか?」

 

「はっ。異常はありません」

 

しっかり身支度を整えたナタルがブリッチに入ってくる。

急なことで驚いてチャンドラが驚きながら返答する。

 

「先刻の歪みデータは出たか?」

 

当直のメンバーにボトルを渡しながらノイマンの元に

着たナタルは現状を聞く。

最初の頃、トールやミリアリアににとって彼女はきつい女性という印象が強かった。

何だったら自分たちがこの艦と行動を共にするきっかけになったマリューの方が

印象が良かったくらいだ。

だが彼女は軍人ではあるが、冷酷な人間ではないということを、

トールやミリアリアも何となく理解し始めていた。

彼女もクラウスやイーグル隊と交流を深める内に自分の軍人としてのあり方を

少し考えるようになっていたのだ。

それもこれもソーマ達の活躍が大きい。

もしクラウスやソーマ達がいなければその様な事を考える余裕はなかっただろう。

だがイーグル隊のおかげで彼女にも自分の在り方を考える余裕が出来ていた。

その証拠に彼女の腕には、ブリッジにいるメンバー分のボトルが抱えられている。

 

「簡易測定ですが、応力歪みは許容範囲内に留まっています。詳しくは…うわぁ!」

 

ナタルから受け取ったボトルを無重力でいた頃と変わりなく、何気なしに離してしまい、

ボトルが床に落ちる。その様子を見て、ナタルは少し笑ってから、ごほんと咳払いを放つ。

 

「少尉…いつまでも無重力気分では困るな」

 

「す、すみません…」

 

いつもは仏頂面のノイマンが赤面しているのは珍しいと、トールがながめていると、

それに気づいたノイマンが鋭い目でこちらを睨んでこようとしたので咄嗟に視線を外した。

 

「重力場に斑があるな。地下の空洞の影響が出ているのか?」

 

ナタルの言葉に、トールは首をかしげる。

 

「なんです、それ?」

 

「戦前のデータで、正確な位置は分からないんだが、この辺りには、

石油や天然ガス鉱床の廃坑があるんだ。迂闊に降りると大変なことになる場所だよ」

 

ナタルのかわりに、辺りにスキャンをかけていたノイマンが答える。

石油や天然ガスといえば、簡単に連想されるのは爆発や火だ。

もし、今ここでザフトに襲撃されてもしたら、たまったものではない。

 

「ここは、大丈夫なんですか?」

 

「ですよね?」

 

トールの問いにノイマンがかぶせるようにナタルを見た。

ナタルは黙ったままボトルに着いたストローをくわえたままモニターを見ていた。

その時ブリッチに警告アラートが鳴り響いた。

 

「本艦、レーザー照射されています!」

 

チャンドラが叫んだ言葉に、ナタルやノイマン、トールも反応して、

穏やかな雰囲気を一変させ、即座に対応へ移っていく。

 

「照合!測的照準と確認!第二戦闘配備発令!繰り返す!第二戦闘配備発令!」

 

砂漠の夜はまだ明けそうにない。

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