機動戦ガンダムSEED-風神と雷神-   作:秋月 了

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PHASE-31 明けの砂漠

「艦長、味方と判断されますか?」

 

ブリッジでは戦闘状況から解放された中で、ナタルがマリューに指示を

仰ごうとしていた。ナタルの言葉に、マリューも考えるように顎先へ指を添える。

 

「銃口は向けられてないわね。ともかく、話してみましょう。その気はあるようだから。

上手く転べばいろいろと助かるのも確かだし」

 

例えば物資面。宇宙では事足りていたことが、地球では不自由になる事もある。

そんな中で補給を受けられる可能性があるなら、乗らない手は無いとマリューは判断した。

 

「ストライクは外で待機を。フラガ少佐とベリアルイン大尉で向かいます」

 

マリュー艦長席を離れる。

 

「後お願い」

 

そう言ってブリッチを離れた。

 

 

 

 

ストライクは外で待機してソーマはスカイグラスパーを格納庫に戻す。

 

「レジスタンスですか?少佐」

 

「みたいだな。さてどうなるか?」

 

ソーマとムウはスカイグラスパーを降りて話し合いの為に外に出るマリューと合流する。

 

「こっちのお客さんも一筋縄ではいかないようだな。

(こっち)はあんま得意じゃないんだけどねぇ・・・」

 

やれやれと嘆じながら腰のホルスターに銃を収める。

『エンデュミオンの鷹』として何機ものジンを墜としてきたムウがその様な事を

言うとは思っていなかった。意外に思いながらマリューは微笑む。

その感覚が今のマリューには必要だった。

行動で示すソーマは勿論だが隣にいるだけで心強く感じるムウが。

 

「開けるぞ」

 

「ええ」

 

ムウがハッチを開けて外に出る。

 

 

 

 

 

 

「助けていただいたとお礼をいうべきなのでしょうかね。

地球軍第8艦隊、マリュー・ラミアスです」

 

 

 

アークエンジェルから砂漠に降りたマリューは、

深くかぶった軍帽の下から相手の様子を注意深く窺っていた。

黒い肌に、恰幅のいいガタイ、そして目つきはギラギラしていて、お世辞にも

人相がいいとは言えない相手であるが、今はこちらに対してどう出てくるか。

マリューの興味はそこにあった。

 

「俺達は明けの砂漠だ。俺はサイーブ・アシュマン。

礼なんざいらんさ。分かってんだろ?別にあんた方を助けた訳じゃない。

こっちもこっちの敵を討ったまででねぇ」

 

「砂漠の虎を相手にずっとこんなことを?」

 

「あんたともう一人の顔はどっかで見たことがあるな。何処だったか?」

 

「ムウ・ラ・フラガだ。こっちはソーマ・ベリアルイン。このへんに知り合いはいないがね」

 

「エンデュミオンの鷹に連合の赤き雷神にこんなとこで会えるとはよ」

 

ムウは表情を変えずに驚いていた。

こんな砂漠の真ん中でハンドランチャー片手にほそぼそと戦闘しているにしては

中々の情報通である。

 

「情報も中々お持ちのようね。私たちの事も?」

 

「地球軍の新型特装艦アークエンジェル、だろ。クルーゼ隊とロドクルーン隊に追われて、

地球へ逃げてきた。そんで、あれが…」

 

「X-105。ストライクと呼ばれる、地球軍の新型機動兵器のプロトタイプだ」

 

そんなサイーブの隣に立つ、この場には似合わない少女が恨めしさを含んだ目で

ストライクを見上げていた。なんでこんなところに少女が?と疑問に思うムウの隣で、

ソーマはその少女の姿を吟味していた。

 

 

 

カガリ・ユラ・アスハ。

 

 

 

ヘリオポリスでの戦闘後、無事にオーブに帰国を果たすも、あくまで中立の立場を貫く父親に

反発した彼女は、今ある世界をその眼で見るため国を飛び出していた。

その後、護衛のキサカと共に、彼の故郷である北アフリカに行き、

そこでレジスタンス「明けの砂漠」に加わり、対ザフト軍抵抗活動を続けている。

ソーマの印象として銃を手にする事だけが守る事では無いという事をまだ知らぬ今の彼女のあり方は

まるで抜き身の刀身のように思えた。

 

「さて、お互い何者だか分かってめでたしってとこだがな、

こっちとしちゃぁ、そんな災いの種に降ってこられてビックリしてんだ。

こんなとこに降りちまったのは事故なんだろうが、あんた達がこれからどうするつもりなのか、

そいつを聞きたいと思ってね」

 

「力になっていただけるのかしら?」

 

「ーー話そうってんなら、まずは銃を下ろしてくれ。あれのパイロットも」

 

サイーブが指差す先を見て、マリューは小さくため息をついた。

 

「ふぅ…分かりました。大尉、お願いできる?」

 

「了解」

 

キラを出したら十中八九厄介なことになる事をジルは知っているがここで反対意見を

言うわけにはいかない。

ストライクに向けて音声通信で降りてくるように指示する。

 

「キラ、降りてきてくれ」

 

『了解』

 

するとコックピットのハッチが開いてラダーを使いキラが下りてくる。

 

「…ああっ!」

 

「ああ?あれがパイロット?まだガキじゃねぇか」

 

レジスタンスの声を聞き流しつつ、

ソーマはキラと合流し、声をかけた

 

「お疲れ。ナイス判断だった」

 

「ありがとうございます」

 

ソーマとキラは拳を合わせる。

これはいつの間にかイーグル隊でやるようになった挨拶のようなものだ。

 

「お前…!」

 

取りつく島も与えないようにしたつもりだったが、猪突猛進なカガリの前では無意味だったのか、

彼女はソーマを押しのけて、キラの顔を一発殴りかかった。それもグーで。

 

「お前…お前が何故あんなものに乗っている!?」

 

殴ろうとするカガリの手をキラは掴む。

 

「君、あの時ヘリオポリスにいた!」

 

「何?知り合い?」

 

あえてすっとぼけながら話題を変えようとする。

 

「はい、はい。なんか知らないけど落ち着いた、落ち着いた」

 

キラに殴り掛かろうとするカガリを抑えいると後ろから長髪の男キサカがやって来る。

 

「カガリ!」

 

一声かけるとカガリは落ち着きを取り戻す。

 

「なんか知らんが助かった」

 

「いやこちらも申し訳なかった」

 

大人な対応をしているソーマとキサカ。

 

「何なんだ?一体…」

 

そんなムウのつぶやきをフォローするものは誰もおらず、

マリューは一人また問題事かと内心、頭を抱えたい気持ちでいっぱいだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

『OK、引っ張って!』

 

「了解!」

 

しばらくしてから、アークエンジェルは明けの砂漠が拠点を置く岩山の合間に

移動することになった。ストライクの協力の元、アークエンジェルには防塵処理や、

カモフラージュ処理が施されていく。

しばらくして作業も終わりストライクから出るキラ。

そこでキラは近くにいたアーガマからモビルスーツ整備のヘルプの為に

アークエンジェルに来てそのまま戦闘に突入してアーガマと離れてしまったために、

現在仮でアークエンジェル所属になっている整備兵達にある疑問をぶつけた。

 

「こんなものでカモフラージュになるんですか?」

 

「地球のレーダー網はNジャマーでズタボロだからな。やった本人でもあるZAFTも

その影響から逃れられないんだ。

赤外線レーダーにさえ引っかからなければ、割と何とかなるんだよ」

 

そう答えてくれる整備兵に、キラはふーんと感心したような声を上げた。

たしかに、目視による監視に頼るこの世界では、カモフラージュの効果は絶大なものだろう。

 

「ところで、キラ君。さっきの女の子は?」

 

「え?」

 

同様に作業を終えたシュンの問いに今度はキラが間抜けな声を出した。

それを聞いてルーンが話に入ってくる。

 

「気になってたのよね。モニターで見ていたけど

さっき殴られそうになってたじゃない。何?もしかして元カノ?」

 

「い、いえ、違います」

 

過剰と言えるキラの反応を見て、シュンとルーンたちとは別にカモフラージュの作業をしていた

整備兵が思わず噴き出した。

 

「その辺にしといてあげましょうよ。キラはその辺は純情だからな」

 

「え?これ、もしかしてバカにされてます?」

 

「はっはっはっ、どうかな?」

 

整備兵達は一斉に笑う。

キラは顔を赤くしていた。

 

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