機動戦ガンダムSEED-風神と雷神-   作:秋月 了

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PHASE-33 タッシル

数時間前

 

 

 

アフリカを牛耳る砂漠の虎こと、アンドリュー・バルトフェルドは次なる一手を打とうとしていた。

 

「ではこれより、レジスタンス拠点に対する攻撃を行う」

 

点在するレジスタンスの基地は分からなくとも、彼らが守ろうとしているものはわかる。

ならばそこを叩くのが、レジスタンスへの打撃になる事を、バルトフェルドは理解していた。

 

「昨夜はおいたが過ぎた。悪い子にはきっちりとお仕置きをせんとな」

 

自分たちの守るものを攻撃されたら彼らは出てくる。まるで女王アリを守る働きアリのように。

 

「目標はタッシル!総員、搭乗!」

 

ダコスタの号令と共に兵士たちは自分の搭乗機に乗り込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「レジスタンスの基地に居るなんて…なんか、話がどんどん変な方向へ行ってる気がするな」

 

レジスタンスのメンバーが物資などの荷物を運び込んだり、

テントで野営の準備をしている様子を眺めながら、手持ち無沙汰になったサイはポツリと呟いた。

今のブリッジはノイマンたちが変わって周辺警戒をしており、サイたちはいっときの休憩時間を、

地球の景色を眺めることに費やしていた。

 

「ハァ…。砂漠だなんてさ…あ~ぁこんなことならあん時、残るなんて言うんじゃなかったよ」

 

見渡す限り砂、砂、砂。そしてあったとしても岩肌が露出した山ばかり。

初めて見る光景にカズイが疲れ切った体を下ろしながら嘆いた。

それを聞いたトールが、顔をしかめる。

 

「何言ってるんだ。シャトルに乗ってたとしても結局はここだろ」

 

そこでカズイは思い出した。

現在避難民はアークエンジェルに乗船している。

シャトルの修理が終わり次第オーブへと向かうのだが戦闘などのごたごたで

今も修理が終わっておらず更に部品の不足もあり完了の目処もたっていない状況だ。

つまりはどちらの選択をしてもあまり変わらなかったのだ。

むしろカズイの選択はこの場限りでいえば間違ってはいなかったと言えるかもしれない。

ストライクとデュエルの戦闘でビームが翼に掠り姿勢の維持に一時的であるが困難を極めた。

そこで避難民は死に目にあったのだ。いやルークがその命を懸けて守っていなければ、

そしてその後、キラやソーマ、アークエンジェルが保護の為に動いていなければ、

確実に死んでいただろう。そのような目に合っていないだけまだマシといえるのかもしれない。

 

「それにしてもフレイ、頑張ってるよな」

 

このままいけばカズイのマイナストークに巻き込まれることを察したトールは話題を変える。

それはフレイの話題。地球降下後からフレイは半ば無理やりルーンに連れ出され

整備士たちの指導を受けながら今もてきぱき働いている。

最初こそ荷物運びだったがわずか数日でルーンの助手扱いだ。

 

「それだけ才能があったって事でしょ?」

 

「そりゃそうなんだけどさ。今のフレイって前より親しみやすくないか?」

 

「ああ。それ分かる。前はお嬢様って感じがあってちょっと近づきにくい所あったもん」

 

トールのいう事はカズイやミリアリアにはわかるところがあった。

前までのフレイはどこかお嬢様という感じがあり

男女の差もあるのだろうがカズイやトールにとって何となく近づきにくいような雰囲気があった。

ミリアリアも同様で彼女との感覚の違いは多々あったように思う。

それが如実に出ていたのはキラに対する行動だろう。

宇宙にいたころは普通に接していたがキラ自身気づいていないだろうが

フレイはキラと距離を取ってた。

それはキラだからではなくコーディネーターへの恐怖心から来る行動だというのは分かる。

それが大きく変わったのはラクスと出会ってからだろう。

キラだけでは変えられなかった何かがラクスとの間で会ったのだろうと4人は考えていた。

 

 

 

 

 

 

 

ソーマはシュンとキラと機体の整備手伝っていた。

 

「どうだ?キラ君」

 

「昨日の戦闘で弄った部分の方は終わりました」

 

「こっちも外装チェックは終わったよ」

 

「これで全部終わりか。やっぱ砂がかなり絡んでいたな」

 

伸びをしながら今後の問題点を口にする。

 

「そうですね。そこらへんの点検も注意していかないと」

 

「そうね」

 

「で、ルーン。質問があるんだが?」

 

「何よ。改まって?」

 

「フレイちゃんがつなぎを着てるんだが?」

 

「それが何か問題あるの?彼女、志願した軍人でしょ?」

 

「うん、そうだ。それは問題ない。だがその報告、艦長にしたか?」

 

「あ!」

 

数秒の沈黙が格納庫を支配する。

 

「え!してないんすか?」

 

「まずいっすよ。彼女、アルスター事務次官の娘ですよ」

 

「それにいろいろ問題があるんじゃ」

 

「しょうがないじゃない。人手が足りなかったんだもの?」

 

それは事実なので誰も言い返せない。

 

「そうだろうと思って報告書出しといた。艦長からも許可を得てる。

実際彼女をどうするか艦長も悩んでいたしな。ただしちゃんと責任をもって指導するように

とのことだ。任せたぞ」

 

「さっすがソーマ。頼りになる上官だわ」

 

「こんな時だけ調子いいな。全く」

 

その時外で警笛が鳴り響く。

ジルは急いで通信端末を操作してブリッチに通信を入れる。

 

「そうした?敵襲か?」

 

『いえ、どうやらレジスタンスの街が燃えているそうです。

大尉は少佐と共に出撃をと指示を受けています。

ヤマト少尉とイザワ中尉はその場で待機しろと』

 

「了解した。すぐ準備する」

 

通信を切る。

 

「どうやらレジスタンスの街が燃えているらしい。

俺と少佐が出る事となった。キラとシュンは待機だ。

別動隊の可能性を考慮してだと思う。

だがすぐ出れるように準備しておけ」

 

「「了解」」

 

ジルは急いでパイロットスーツに着替えてスカイグラスパーに乗る。

 

「しまった。ここら辺は地形データがなかったんだ。ナビゲーターが居てくれれば…」

 

地球に降りて感じた気流の変動差に加えて、この一帯の地形すら

マッピングできていないのが実情だ。まだここが地球軍の勢力圏だった時の

マップデータは残っているものの、戦闘やら占領やらで新たにできたクレーターや

軍事施設のデータがこれっぽっちも無い。本来なら偵察飛行でマップデータを更新するのだが、

そんな暇すらなかった。

困り果てているソーマだったが、ハンガーを通ったキラの学友メンバーの一人が手を挙げた。

 

「あ、俺ナビゲーターなら出来ますよ?」

 

手を挙げたのはトールだった。そんな彼を見て、隣にいたミリアリアがギョッと目を剥く。

 

「トール!?ちょっと正気!?」

 

「いつもノイマン少尉にしごかれてたし、それに今ここに居てもやれる事はないだろ?」

 

トールのいう事は分かる。たしかに残ったとしてもアークエンジェルが動くことはない。

シュンが真っ青な顔で止めに入る。

 

「トール君やめた方がいい。ソーマの機動に耐えられる人は多分キラ君位だ」

 

シュンはある事を思い出していた。

それはまだソーマにモビルアーマーの指導を受け始めたての頃、

操縦の感覚を知る為に複座をつけた特殊なモビルアーマーに同乗したことがある。

最初はよかった。だが途中からソーマの破天荒なモビルアーマー機動を味わった。

それ後全身圧迫症で丸一日寝込んだのを今でも覚えている。

それと同時によくこの人についてこれているものだと自分をほめたくなる。

それもありトールを止める。だが現実としてナビゲーターいるのは事実だし

ムウよりソーマの方が早く飛ぶのは確実なので乗るならソーマの方になるのは確実だ。

 

「よし、じゃあパイロットスーツに着替えて複座に座ってくれ」

 

「了解!」

 

トールは更衣室へ向かう。

トールが着替え終わり二号機の複座に座り込むのを確認したのを見てカタパルトに向かう。

 

「先行くぞ!ムウ・ラ・フラガ!スカイグラスパー出る!」

 

ムウのスカイグラスパーを見送り

 

「ソーマ・ベリアルイン、スカイグラスパー。出る」

 

自分たちも空に舞い上がった。

当然凄まじいGををもたらしながら。

 

「トール。どうだ?」

 

どうせ気絶しているだろうと思いながらトールに声をかける。

トールはパイロットスーツに内蔵された加圧装置に頼りながらも、

なんとか意識を保っていて、ソーマにこう答えた。

 

「いやぁ…もう…最高ですね…」

 

トールがその才能を開花させた瞬間だった。

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