機動戦ガンダムSEED-風神と雷神-   作:秋月 了

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PHASE-35 追撃

タッシルの住人たちがいる場所から少し離れたジープが止められている場所。

呼び出されたサイーブはその場所に向かった。

そこには多くのレジスタンスメンバーが集まっていた。

その中には先ほどまでソーマの話を聞いていたメンバーも何人かいる。

 

「なんだ?」

 

「奴等、街を出てそう経ってない。今なら追い付ける!街を襲った後の今なら、

連中の弾薬も底を突いてるはずだ!」

 

「俺達は追うぞ!こんな目に遭わされて黙っていられるか!」

 

「バカなことを言うな!そんな暇があったら、怪我人の手当をしろ!

女房や子供に付いててやれ!そっちが先だ!」

 

サイーブは怒りながらも呆れた。

さっきの話を聞いていなかったのか?こいつらは。

そもそも虎が弾薬を使い果たすまで街を焼き尽くしていたなら生き残りが出るわけがない。

サイーブ自身その理由は分かっている。彼等にも余裕が出来てしまったのだ。

先程までは家族が無事かどうかの心配で心にはそれしかなかった。

だが今は違う。家族が無事だった安堵が憎悪と怒りに変わったのだ。

 

「それでどうなるっていうんだ!見ろ!タッシルはもう終わりさ!家も食料も全て焼かれて、

女房や子供と一緒に泣いてろとでもいうのか!そんな負け犬のような真似はごめんだ」

 

「まさか俺達に虎の飼い犬になれって言うんじゃないだろうな。サイーブ!」

 

憎悪と怒りにまみれた言葉に、サイーブは最早何も言えなかった。

 

「行くぞ!」

 

そんなサイーブを置き去りにしてメンバーはジープに乗り込み虎を追っていった。

サイーブもジープに向かったメンバーの後を追う。

 

「行くのか?!サイーブ!」

 

「放ってはおけん!」

 

サイーブの動きを知ったカガリも、ライフルを肩に下げてサイーブのジープへ駆け寄る。

 

「サイーブ!私も!」

 

「駄目だ!お前は残れ!」

 

「サイーブ!!うわっ!!」

 

聞く耳を持たぬと行った様子でサイーブがジープを発進させる。

途方にくれたような表情をするカガリの目の前に、今度は若いレジスタンスのメンバー、

アフメドが運転するジープが砂埃をあげて停車した。

 

「乗れ!」

 

アフメドの言葉に頷いたカガリは、すぐさま乗り込み、それを見ていたキサカも

アフメドのジープに乗り込む。

 

「なっ!カガリ!アフメド!駄目だ!残れ!」

 

「この間バクゥを倒したのは俺達だぜ?」

 

「こっちに地下の仕掛けはない!戻るんだ!アフメド!」

 

並走しながら必死に叫ぶサイーブに、アフメドは陽気な笑顔を見せて答えた。

 

「戦い方はいくらでもある!」

 

 

 

 

 

 

 

「なんとまぁ…風も人も熱い御土地柄なのね」

 

土煙を上げて爆走していくジープを見送りながら、ムウは心底呆れたように呟いた。

 

「全滅しますよ?あんな装備でバクゥに立ち向かえるわけがない!」

 

ナタルがムウに物申すが、ムウもただ困ったように苦笑を漏らす。

 

「だよねぇ。どうする?」

 

「わ、私に言われても。ですが」

 

「そうだな。見殺しにはできんよな。まったく素人どもめ」

 

これだから民兵は嫌いだ。と言いながらムウは自身の機体に戻り通信機に手を伸ばす。

 

「少佐。先行きますよ」

 

「任せる」

 

ソーマはスカイグラスパーで飛んで行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんですって追っていったなんてそんな!なんてバカなことを。

何故止めなかったんです、少佐!」

 

ムウからの報告に、マリューは頭を抱えた。出て行った彼らの装備を見たが、

どう考えてもザフトに太刀打ちできるものではない。

マリューの苦言に、ムウも少々腹ただしさを宿した目で答えた。

 

『止めたらこっちと戦争になりそうな勢いでねぇ…。一応、ソーマが後を追ってくれてる。

それよりこっちも怪我人は多いし、飯や、何より水の問題もある。死にに行った奴らよりも

生きてる奴らの方が大事だ』

 

マリューはそこでムウは既に追っていったレジスタンスの事を見捨てているのだと知った。

その気持ちはマリューにも理解できた。ロケットランチャーや自走砲で

バクゥを倒せるわけがない。死にに行くようなものだ。

それよりも生きようとする者達を助ける方が合理的と言える。

だが今のマリュー達の生命線はレジスタンスだから得られる情報だ。

特にサイーブを失えばそれは致命的だろう。

簡単に見捨てるという判断はマリューには出来なかった。

 

「ヤマト少尉に行ってもらいます。見殺しには出来ません。

残っている車両で、そちらにも水や医薬品を送らせます」

 

『了解。よろしく』

 

一つ息を吐いて今後の対応を考える。

 

「ハウ二等兵!ストライクの発進を!」

 

「はい!キラ、ストライク発進願います!」

 

 

 

 

 

 

 

発進命令が下りたキラはストライクのシステムを機動していく。

 

『キラ、現在暴走したレジスタンスメンバーをベリアルイン大尉が追ってるわ。

合流してジープを止めて。』

 

「了解。キラ・ヤマト。ストライク。行きます」

 

ハッチが開きストライクは飛び出して空に舞い上がった。

 

 

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