1月25日 L3宙域
資源衛星コロニー「ヘリオポリス」
シリンダー型のコロニーで先端には衛星がくっ付いており、
名前の通り衛星から鉱石といった資源を得ることが出来る。
そのため、宇宙でのオーブの生産拠点であり、コロニー内にはモルゲンレーテの支社もある。
ここー工業カレッジのキャンパス内は若者で賑わっていた。そんな中、
少年キラ・ヤマトはゼミの教授に依頼されたプログラム解析の仕事と格闘していた。
「キラ!」
名前を呼ばれて顔を上げる。
そこにいたのは友人のトール・ケーニヒとミリアリア・ハウだった。
「こんなところにいたのかよ。カトウ教授がお前の事探してたぜ」
「また~!」
「見つけたらすぐ引っ張って来いって」
「なーに?また何か手伝わされてるの?」
「たくっ。昨日渡されたのだってまだ終わってないのに」
パソコンから流れていたニュースが騒がしくなり、それに気になった彼らは画面を覗き込んだ。
「おっ、なんか新しいニュースか?」
「ああ、華南だって」
《ーこちら、華南から七キロの地点では、以前激しい戦闘の音がー》
「うわ、先週でこれじゃ、今ごろはもう陥ちゃってんじゃねぇの、華南?」
「うん」
トールの言葉に、キラは気のない返事を返しながらパソコンをしまう。
「華南なんてけっこう近いんじゃない?大丈夫かな、本土」
ミリアリアは不安そうな口調で言うが、
「ああ、それは大丈夫でしょう。近いったってうちは中立だぜ!
本土が戦場になる事はないって」
「だといいけど」
対してトールは楽観的にお気楽そうに言った。それを聞いたキラは何とも言えない不安を感じた。
それでも彼らは、「戦争」なんて、自分達とは関係ないと思っていた。
「ほら、行くぞ」
「ああ、うん」
トールに先導されるような形で歩き出すのだった。
その頃輸送船に偽装したマルセイユ三世級とドレイク級護衛艦はヘリオポリスに入港。
地球連合軍のドレイク級護衛艦ギルデルク艦長、クラウス・ローグスター中佐と
イーグル隊の隊長ムウ・ラ・フラガと隊のエース、ソーマ・ベリアルインは話し合っていた。
「これでこの艦の任務も終了だ。護衛の任、ご苦労だったな。フラガ大尉、ホーキンス中尉」
「航路何事もなく幸いでした。周辺にZAFT艦の動きは?」
「三隻トレースしているが港に入ってしまえば問題はなかろう」
「中立国ですか?聞いてあきれますな。」
「オーブとて地球の一国という事だ。」
クラウスとムウが話している間ソーマは黙って話を聞いていた。
それを怪訝に思ったムウがソーマに話しかける。
「どうした?さっきから黙って?」
「いえ、艦長と隊長は本当にZAFTは動かないと考えますか?」
「どういう意味だ?」
「我々は中立国でMSを開発してるんです。もしかすれば敵も気づいているからこそ
此方をトレースしてきているのかもしれません。ならヘリオポリスが中立国の
コロニーだという言い訳は通じませんよ」
「確かに。艦長。」
「そうだな。イーグル隊はパイロットスーツを着て待機」
「「了解」」
ムウとソーマは艦橋を出ていく。
「ソーマの勘はよく当たる。流石に無視するわけにはいかんからな。」
クラウスは各員に指示を出していった。
ソーマはパイロットスーツを着て自分の機体に向かう。
機体は一見ムウと同じメビウス・ゼロと同型に見えるが中身は全く違う。
ソーマは一般的な兵士に比べて動きが早く取り回しが激しい。
その為燃料の消費が恐ろしく早い。
そこで考案されたのがソーマが乗るメビウス・ゼロCだ。
四つあるガンバレルの内左右二つをガンバレルとしての機能を潰し燃料タンクとした。
結果ガンバレル二つとなったが左右の二つの前面部分を小型ミサイルを取り付けた。
更に問題となっていた航続距離の問題も解決された。
そのメビウス・ゼロCに乗り込み待機する。
「まだ出撃じゃないんでしょ?早すぎない?」
彼女はルーン・ドレイク曹長。
メビウス・ゼロCの改良案を出した女性であり
かの機体の専属整備士だ。
「いつ出るかわからんからな?早いという事はないさ。とにかく急いでくれ」
「分かったわ。でも出来るだけ壊さないでね。」
「それはZAFTに言ってくれ。」
「無理だからあんたに言ってんでしょうが」
「無茶言うなよ」
「なんか言った?」
「いえ何も」
「そう」
ルーンとの話を切り上げて再び目を閉じた。
そのヘリオポリスから離れた衛星の影。
真っ暗な宇宙を飛ぶ艦三隻。
その内の一隻ナスカ級インテグラの艦橋内の二人とモニター越しに映る二人で話していた。
「隊長、後二時間ほどでヘリオポリスに到着します。
しかしよろしいのでしょうか?評議会の返答を待たずに行動を起こしても?」
最初に声を上げたのはルイス・クライン。
インテグラ艦長であり同行していないもう一隻と共に二隻を率いるロドクルーン隊の副長を兼任し
更にプラント現最高評議会議長の娘である女性だ。
『私もクライン艦長に同意します。評議会の返答を待ってからでも遅くはないのでは?』
同意の声を上げたのはフレデリック・アデス。
ヴェサリウスの艦長でクルーゼ隊の副官である。
「遅いな。俺はそう考えてる。ラウはどう思う?」
ルイスが座る艦長席にの少し後ろに立ち二人の意見を否定したのはルーク・ロドクルーン。
インテグラともう一隻を預かる隊長であり、開戦から多くの功績をあげ、
特務隊にも所属するエリートである。
ZAFTの軍人で彼を知らにない人間はいない。
『私も同意見だとも、ルーク。君のハッキングと私の情報網でとらえた情報の信憑性は高い』
もう一人の仮面が印象的な男がラウ・ル・クルーゼ。
ルーク同様開戦の頃から多くの功績をあげたクルーゼ隊を率いる隊長である。
ルークとは友人でもある。
「だがまだ二時間ある。ギリギリまで待つさ。だが準備はしておこう。
ルイス、アスランを艦橋まで呼び出してくれ。」
「はい」
『こちらもイザークたちを呼びだせ。ブリーフィングを開始しよう。』
『はっ』
ほどなくして全兵士がそれぞれの艦橋に集合する。
『さて諸君我々がこんなところにいるのは他でもない。信じ難い情報を得たからだ』
インテグラと共に航行している艦ヴェサリウスで二人いる隊長を代表して
【ZAFT】でもトップクラスの実力を誇る男、ラウ・ル・クルーゼが話し出す。
それを士官学校を一〇位以内という優秀な成績で卒業した者の証である赤服を着た少年、
アスラン・ザラは自分の隊長や他の部隊員と共に聞いていた。
『ここから先にある中立国オーブの資源衛星【ヘリオポリス】にて、
連合の新型機動兵器が開発されているとのことだ』
『まさか、ナチュラルにそんな技術が……』
『クルーゼ隊長。その情報の信用性と出所はどこでしょうか?』
モニター越しにラスティ・マッケンジーとイザーク・ジュールが
クルーゼに質問を投げかけるのが聞こえてくる。
「それは俺だ。ラウが独自に手に入れた情報を元に俺が連合のメインコンピューターに
ハッキングを仕掛けた結果だ」
『失礼しました』
「気にするな。信じられないのは分かるからな」
『ありがとうございます』
『続けるぞ。ルーク隊長の調査の結果ヘリオポリスにおいて
五機の新型MSと艦が建造されているのが分かった。これは放っておくわけにはいかない。
MSは奪取し、艦は爆破する』
『はっ!』
「ここからは俺が変わろう。ラウ」
『任せたよ』
「では作戦の説明に入る。諸君、まずはこれを見てくれ」
先程まで宙域図の映し出されていた台に、何かの内部構造らしきものが映し出された。
『ルーク隊長、これは……』
「これは、【ヘリオポリス】工廠の構造図だ。イザーク」
『どうやってこんなものを……』
『我が友に不可能は無いということだ』
「説明を続けるぞ。諸君らはここから侵入。センサーがあるが、時間になると解除されるように
してある。その先には恐らく、新造艦があると思われる。艦に爆薬を設置後、奥に進め。
調査の結果、新型は五機あるのはわかってる。しかしその五機を製造場所までは
わからなかった」
図に線を引きながら説明をしていく。ルークの説明を、全員が真剣な面持ちで聞き入る。
『では、どうしますか?』
「突入に合わせてジンを突入させる。
そうすれば奴らは慌てて五機を新造艦に移すはずだ。そこを狙う。
新型五機の奪取はイザーク、アスラン、ディアッカ、ニコル、ラスティに任せる。
五人を班長として班を組み他の者は赤服を援護。
万が一赤服の誰かが失敗する事があれば同班員が代われ。
突入班の指揮はイザークに任せる。頼むぞ」
『はっ』
「ジン部隊は俺とミゲル、マシューが突入し、残りは外で陽動。
突入指揮は俺が取る。外の指揮はクロエに任せる」
「隊長自ら出るのですか?」
クロエは驚きながら顔を上げた。
「ああ、不測の事態への備えだ。仮にも相手は中立国のコロニーだ。
面倒ごとは避けたいからな。さて、作戦説明は以上になる。ラウの方で何かあるか?」
『全て君が話してくれたからないな』
「では作戦開始時刻は、二時間後だ。アスランは艦が止まり次第
ヴェサリウスに移動。以後帰還するまでクルーゼ隊長の指揮で動け」
「はっ」
「では解散とする。」
ルークのその言葉を最後に、一斉に少年たちは艦橋を後にする。
ルークは席に身を預け目を閉じた。
大学を出て数分後
「だからぁ、そういうんじゃないんだってばーっ」
大学のレンタルエレカポートに着いた時、前方から華やいだ嬌声が上がった。
その様子を見てみると、複数人の少女がいて、
その中にフレイ・アルスターの姿がありキラの鼓動は一瞬高まった。
「あ、ミリアリア!ねぇっ、あんたなら知っているんじゃない?」
「えぇ、何何?」
「もうっ、やめてってばぁ!」
「この子ね、実は……サイ・アーガイルから手紙もらったんだって」
「えぇ〜!?」
ミリアリアは素っ頓狂な声をあげた。
「ーんんっ、乗らないなら先によろしい?」
その時、後ろから女性の落ち着いた声がかかり、振り向いた。
そこには2人の男性とサングラスをかけた女性がおり、
おそらく先頭の女性が声をかけたのであろうとすぐに察した。
「あ、すいません、どうぞ」
トールが頭を下げながら道を譲り、それに続いて道を開けていく。
女性はきびきびとした動作でエレカに乗り込み、去って行った。
「もう知らない!行くわよ」
「「ああ~。待ってよ~」」
フレイが言い早々と次に来たエレカに乗り込んで行った。
それに続いて他の二人も慌てたようにエレカに乗り込み、去って行った。
「なーんか意外だよなぁ、あのサイが。けど、強敵出現、だぞ、キラ!」
「は?な、何…僕は別に・・・」
キラは次に来たエレカに乗り込み、トールとミリアリアも乗り、
ラボがあるモルゲンレーテに向かった。
この時、誰もがこの平穏な日常が続くと思っていたが、
戦争という脅威が刻一刻と近づいていることを知らずに。
「──父は多分、深刻に考え過ぎなんだと思う」
今でも、アスランはあの時のことを思い出せる。三年前、月面都市コペルニクス。
まだ戦争は起きていなかったが、それでも日に日に不穏なニュースが聞こえて来るように
なった頃であった。
当時の彼は、その日一人の友……四歳の頃から一緒に過ごした、親友とも呼べる少年を呼び出して、
幼年学校の敷地にある並木通りに来ていた。今にも儚く消えてしまいそうな色の花弁が
風に吹かれる中で、彼はそう切り出した。
「プラントと地球で、戦争になんかならないよ」
「うん」
親友は頷いた。少なくとも、彼もその時はそう信じていた。そう信じたかった。
「でも、避難しろと言われたら行かない訳にはいかないし……」
彼らは確かに、賢明な子供であった。
例え彼らが望まずとも、絶えず変動する世界は彼らを取り巻く環境をも変化させてゆく。
望む、望まないに関わらず。それに抗う事など出来はしないのだ、と理解していた。
だから彼も、そして友も頷いて、俯くしか無かった。
彼はそんな友を励ますように言った。
「キラも、そのうちプラントに来るんだろ?」
アスランはこれからプラントに移るのだ。元々アスランはプラントの出身であり、
情勢の変化に従って母と自分だけがコペルニクスに移り、プラントには父が残っていた。
だが、昨日になって父が家族をプラントに呼び寄せたのだ。
戻って来い、そこも危険なのだ、と。
それ自体は仕方のない事だ。だが、そのためにここで過ごした中で出来た友と別れるとなれば、
彼としても一大事だ。彼も精一杯母に掛け合ったのだが、無駄だった。
「多分……」
「そうか、ならまた会えるさ」
そう言って、彼は肩に下げていた鞄から金属のケースを取り出した。
友が見守る中で、彼はその蓋を開いた。
そこには、彼が丹精込めて、友の為に、と自作したロボット鳥が収められていた。
スイッチを入れると赤い目に灯が点き、メタリックグリーンの
華奢な身体が起き上がって羽ばたき始める。
「これって……!」
「引っ越す前に渡しておきたくてさ」
「僕の、ために……?」
「まあ……そうだよ。別れの……いや、また会える事を願ってのプレゼントだ」
小さな掌で、友はそれを受け取ってくれた。友がやっと顔を上げたのを見て、彼は小さく微笑んだ。
きっとまた、会える。きっと。
そう信じて別れ、早三年──。
『──アスラン、アスラン!』
ハッとなって、アスラン・ザラは周囲を見回した。
彼は今、宇宙を漂う岩塊の上に居た。周囲には彼と同じようにノーマルスーツを着込んだ人影が
数人居て、その中の一人が彼を覗き込んでいた。
『大丈夫ですか? なんか上の空でしたけど』
「ああ……すまない、大丈夫だ」
心配そうに声を掛けてきた同僚の二コル・アマルフィに手を挙げて応えると、
アスランは自分のリストウォッチを見た。
あれから三年……。たった三年で、世界は大きく変化してしまった。戦争が起こり、母はなくなった。
自分はこうして軍に入隊して、プラント……いや、ZAFTの為にと戦っている。
今もこうして、任務に従事している。
思わず吐いた溜息に反応して、ノーマルスーツが自動で補正を掛けたのが分かった。
開戦以来、コペルニクスで別れた親友の行方は分からずじまいだった。
あのまま引っ越していたのならキラも恐らく目の前のヘリオポリスにいるだろう。
(無事でいるよな?)
これからアスランは親友の生活を脅かしに行く。
それをわかっていてもアスランはそう願わずにはいられなかった。
ルークはパイロットスーツを着込みハンガーにある自分の機体、シグーアサルト
腰部装甲表面に着地して、ハッチが開かれたコックピットに潜り込んだ。
他の機動兵器のコックピット同様、MSのコックピットも座席一つで一杯になってしまう程度の
広さしかない。棺桶よりも狭い、とは良く言った物である。
ルークは頭からコックピットハッチを潜ると、身を翻してシートに着座し、
身体を所定位置に収めた。同時にパイロットスーツの背中とシートの背凭れに設けられたロックが
起動し身体からロックされ、その上からシートベルトを装着する。
「メインシステム、戦闘モード、起動」
所定の手順に従い、機体を立ち上げる。
『総員、第一種戦闘配備。モビルスーツ隊発進準備、エアロック開放。整備班、待避急げ』
ルイスの声を聞きながら機体を所定の位置に向かわせる。
「ルイス。艦は任せる」
『はっ。隊長もお気を付けて』
「ルーク・ロドクルーン。シグーアサルト
発進口の頭上にあるカウントダウン表示がGOサインを出し、
瞬間的に5G近い加重がルークの身体にのし掛かった。
シグーアサルト
横並びになった二枚の板状のリニアカタパルト・レールの間を高速で駆け抜けた。
同時にコンジットの接続が解除され、シグーアサルト
スラスターを吹かせるまでもなく、戦闘速度に近い高速で漆黒の宇宙空間へと躍り出た。
(始まるな。ガンダムSEEDが)
そう独り考えを巡らせていた。