機動戦ガンダムSEED-風神と雷神-   作:秋月 了

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PHASE-38 束の間の休息

ルークSIDE

 

「久しぶりだな。バルトフェルド」

 

「うん。久しぶりだね。ルーク」

 

今ルークはバナディーヤのバルトフェルド邸に来ていた。

 

「それで、君が来たという事は援軍が来てくれるという事かな?」

 

「ああ、バクゥを中心に援軍をそろえた」

 

「それはありがたいね」

 

「正直、ストライクと戦うのにザゥートじゃただの的にしかならないからな。

軌道戦で後ろを取れたやつが抑えるしかない」

 

「その様だね。先日やり合ったが雷神との連携も見事だ」

 

「ソーマはそういう奴だ。強引に自分のペースに持ち込んでそのまま自分ペースで敵を倒す。

それを高速でやって来る。特にストライクのような特大の獲物が目の前にあると

そちらに目が行きがちだからな。そこに付け込むのが特にうまい。

本人の技量も合わさってとにかく厄介だ」

 

「君に厄介と言わせるとは珍しいこともあるもんだ。

でも君の意見には賛成だね。僕もそのせいでやられたよ」

 

「ストライクに気を取られすぎたな。後はモビルアーマーだったのも理由の一つか?」

 

「耳が痛い話だよ。全く。ところでこれから街に出るんだけど君もどうだい?」

 

「断ってもつれてくんだろうが大の男が二人はきもいぞ。俺はしばらくゆっくりさせてもらう」

 

「そうか、では遠慮なく、出かけさせてもらうよ」

 

「おう」

 

バルトフェルドは着替えて出て行ってしまった。

ルークはそのまま眠ってしまった。

 

 

 

 

 

 

「じゃぁ、4時間後だな」

 

賑わっている街並みに停車したジープから降りたカガリは、残っているサイーブやキサカに

小さな声でそう告げると、同乗していたキサカも頷いた。

 

「気を付けろ。どこにザフトの目があるかわからんからな。ヤマト、

ベリアルイン殿、カガリをよろしく頼む」

 

カガリに続くように降車したソーマとキラに、キサカが囁く。

地球軍の制服から目立たない現地住人の服装に変わったソーマとキラは了解、と小さく答えた。

 

「そっちこそな。アル・ジャイリーってのは、気の抜けない奴なんだろ?」

 

「キラ、準備はいいか?」

 

「オーケーです」

 

カガリの後ろで互いに準備をするキラとソーマ。

 

「ヤマト少っぃ…しょっ少年……た…頼んだぞ…」

 

「バジルールさん、リラックスリラックス」

 

「わ、わかってる」

 

いつもの調子でキラの名前を要望としたナタルが慌てて言いなおし、後ろからトノムラがフォローする。

最低限の挨拶を交わして、サイーブやキサカ、そしてアークエンジェル側の人間としてやってきた

ナタル達を乗せたジープは街の喧騒へ消えていく。

 

「よし、行くぞ」

 

「へぇ…これはまた…」

 

カガリの後を付いて歩き始めてみるが、街は賑わいや活気にあふれていて、

とてもザフトの勢力下とは思えない穏やかな空気を漂わせている。

 

「どうした?ぼさっとして、一応お前らは護衛なんだぞ?」

 

「ほんとに、ここが虎の本拠地?随分賑やかで、平和そうなんだけど」

 

キラの疑問に、カガリは小さく息をついて歩いていた進路を変える。

 

「…付いて来い」

 

カガリに連れられてきたのは、砲撃でボロボロになった瓦礫で覆われた場所。

そしてその先には砂漠の虎の城とも言えるレセップスが街のすぐそこに鎮座していた。

 

「平和そうに見えたって、そんなものは見せかけだ。ーーあれが、この街の本当の支配者だ。

逆らう者は容赦なく殺される。ここはザフトの、砂漠の虎のものなんだ」

 

そう言うカガリとキラは気付かない。街角のテラスで陽気なシャツと帽子、そしてサングラスを

かけた男性がその黒いレンズ越しにこちらを観察していることを。

ここは砂漠の虎が手中に収める街。

ソーマ達は敵の本拠地たる場所で、残り少なくなった物資の補給をしようとしていた。

 

 

 

 

 

 

艦長室で、昨日のストライクの戦闘記録を見ていたマリューとムウは、

深刻そうに息を吐いて事の重大さを噛み締めていた。

 

「でも…いつからそんな…」

 

「おそらく、地球に降りてからだろうな。それまで…そんな余裕なかっただろ?

おかしくなってそうなったのか…そうなったからおかしくなったのかは知らんが、

ともかくうまくないな、坊主のあの状態は…」

 

類稀なる戦闘能力と、砂漠への対応能力、そして何よりも目を見張ったのが、

敵パイロットへの容赦の無さだ。キラが討ち込んだ攻撃のほぼ全てが、

ザフトのパイロットを即死させるものだった。ムウからの報告を受けたマリューは、

普段見せない弱々しい顔をして頭を抱えた。

 

「キラくんはパイロットとしてあまりにも優秀なものだからつい、

正規の訓練も何も受けてない子供だということを私は…」

 

「君だけの責任じゃないさ。俺も同じだ。いつでも信じられないほどの働きをしてきたからなぁ、

必死だったんだろうに…」

 

ムウも、宇宙、そして地球でのキラの活躍を思い返しながら顔をしかめる。

たしかに、自分たちはイーグル隊として戦ってきたが、

パワーレートとしては、ソーマとキラに頼っている側面も否めない。

 

「いつ攻撃があるか分からない。大切なものを守るって言って、全てを背負って、

そう思い詰めて、追い込んでいっちまったんだろうなぁ…自分を…」

 

見ていた感じソーマやシュンと絡んでいるおかげもあって

心に余裕はあるのはムウにもわかった。だがキラは正規の訓練を受けた兵士ではない。

ムウ自身注意していたが、

やれやれ、ソーマ達の様に上手くは立ち回れないなとムウは自分の不器用さを噛み締めていた。

 

「解消法に心当たりは?先輩でしょ?」

 

マリューの純粋な言葉に、ムウはマリューの体を見て、

咄嗟に浮かんだ邪な考えを誤魔化すようにぎこちなく笑った。

 

「え?…あ…ん~…あまり…参考にならないかも…」

 

それがどうやら、マリューの地雷を踏み抜いたらしい。弱々しかった彼女の表情は

みるみる不機嫌になり、最後にはフンっとムウから視線を逸らした。

 

「のようですわねぇ。取り敢えず、今日の外出で少しは気分が変わるといいんですけど!」

 

私もデッキでの洗濯物干し、手伝ってきます!とマリューは怒った様子で立ち上がり艦長室を

退室していく。ムウは困ったように頭を掻いて、天井を仰いだ。

 

「ハァ…いいよねぇ若者は…!」

 

 

 

 

 

カガリの案内で買い出しを行う三人。

だが護衛のはずのキラとソーマの手には買い物袋がいくつもあり

背中にはリュックサックを背負うほどの大荷物だ。

「護衛とは荷物持ちの事だったか?」などとソーマは考え始める中も買い物は進む。

そして買い物を終えた三人は道端のテーブルに座って休憩していた。

ソーマやキラの周りには、アークエンジェルや難民たちで使う日用品や物資が紙袋がてんこ盛りで

いくつも並んでいる。

 

「これでだいたいそろったな。しかし、このフレイってやつのの注文は無茶だぞ。

ヘリザリオの乳液だの化粧品だのこんなとこにあるもんか」

 

「えっと、何を頼まれたんだっけか?」

 

「化粧品類と電動式ドライバーなんかだ」

 

「ま、ここでその程度で済ませている辺りまだまともだな」

 

「ルーンさんのすごかったですもんね」

 

「ゴットフリートの冷却装置だの、ビーム兵器用の発電機だの思いっきり軍事物資じゃねえか。

そんなもん街中で売ってるわけねぇだろ!」

 

「そいつ馬鹿なのか?」

 

「ああ。機械馬鹿だ」

 

「ははは(どうしよう、否定出来ない)」

 

ルーンの悪口を言い合うソーマとカガリを見ながらキラは苦笑を浮かべる事しか出来ない。

 

「というかフレイもかなり毒されてますよね」

 

サイ経由渡された注文のメモを見た時からキラはそう思っていた。

ソーマなど本気でサイに、

 

「お前の彼女どんどんあの機械馬鹿に毒されてるぞ。大丈夫か?」

 

と言って後ろからルーンに思い切り手袋を投げつけられていた。

 

「まだ美容に気を向ける余裕があるだけ大丈夫だろう。後はサイ次第だな」

 

と言いながら途中で買った水を飲む。

 

「お待たせネー」

 

そんなキラたちの間に割って入って白いコックスーツを着た店員が、

どっかりとテーブルに皿を置いた。

 

「何、これ?」

 

白い包み、そしてドンと2本ずつ置かれた赤と白のソースを見つめながら、キラが首をかしげる。

 

「ドネルケバブさ!あー、疲れたし腹も減った。ほら、お前らも食えよ。

このチリソースをかけてぇ…」

 

カガリは包みを開けると、満遍なくケバブに赤いチリソースをかけていく。するとーー。

 

「あーいや待ったぁ!ちょっと待ったぁ!」

 

となりの席に座っていた男性が突如として立ち上がり、チリソースをかけるカガリに

待ったをかけたのだ。

 

「ケバブにチリソースなんて何を言ってるんだ!

このヨーグルトソースを掛けるのが常識だろう!」

 

陽気なシャツと帽子を着たサングラスの男性は、テーブルに置かれた

白いヨーグルトソースを持って高々と宣言する。

 

「いや、常識というよりも…もっとこう…んー…そう!ヨーグルトソースをかけないなんて、

この料理に対する冒涜だよ!」

 

「なんなんだお前は!見ず知らずの男に、私の食べ方にとやかく言われる筋合いはない!」

 

「あーなんという……」

 

チリソースたっぷりのケバブにかじりついたカガリを見て、

男性は絶望したようにうつむき、胸で十字架を切った。

 

「っんまーーーーいーーー!ほぅらお前も!ケバブにはチリソースが当たり前だ!」

 

「んー、俺はヨーグルトソース派だな。辛いのも嫌いじゃないがこっちが好みだ。だろキラ?」

 

「そうですね」

 

ソーマとキラは既にヨーグルトソースをかけてケバブを食べていた。

 

「お、君達はよく分かってるじゃないか!」

 

途端男子は機嫌がよくなる。

 

「何、勝ち誇った顔してるんだよ!」

 

「落ち着けよ。人の好みとこだわりなんてそれこそ人の数だけあるんだ。

気にしても仕方ないだろ。それより早く食おう。まずくなる」

 

「確かに。これは君に一本取られたね」

 

そう言いながら開いている席に座りコーヒーを飲みだした。

 

 

 

 

 

 

「チッ!いい気なもんだぜ」

 

そんなカガリたちのやり取りを物陰から見ていた怪しげな男が、怒りを含んだ声で毒づく。

 

「あのテーブルに居る子供は?」

 

「その辺のガキだろ、どうせ虎とヘラヘラ話すような奴だ。殺しても何ら問題ない」

 

彼らの手には黒く光る銃が握られている。この時のために何日もかけて

潜入したのだ。失敗は許されない。

 

「では行くぞ。開始の花火を頼む」

 

「ああ。魂となって宇宙へ還れ!コーディネイターめ!」

 

 

 

 

 

「いや~はっはっはっ。悪かったねぇ~」

 

割り込んできた男性は快活な笑い声をあげながら先ほどの行為を謝罪してきた。

なんでもケバブとコーヒーのことになると黙っていられないらしい。

そんな彼の隣にいるカガリは絶賛不機嫌状態である。

 

「しかし凄い買い物だねぇ。パーティーでもやるの?」

 

「五月蠅いなぁ、余計なお世話だ!大体お前は何なんだ?勝手に座り込んであーだこーだと…」

 

男性とカガリが言い合いのような言葉を交わす最中、ソーマは街の異変に気がついていた。

さっきまで現地住人で賑わっていたはずの街が、妙に静かだった。

あたりには住民らしき人がちらほらといるが、街を歩いているというよりは

何かを観察しているようにも見える。

そして、何よりソーマはこの先に起こる出来事を知っている。

知っているからどうこうできる訳ではないが、起こることに対する覚悟は持っていた。

 

「キラ」

 

テーブルの下でハンドサインをキラに見せる。

ケバブを食べながらキラも、何度も見て覚えたそのハンドサインを見て小さく頷く。

 

「伏せろ!」

 

途端、カガリと機嫌よく話していた男性がカガリの首根っこを掴むと、

勢いよくテーブルを上へ蹴りあげた。

銃声とロケットランチャーの弾頭の発射音が響いたのは、それと同時であった。

何発かの弾丸が男性が蹴り上げたテーブルに当たり、

ロケット弾がキラ達の後方の建物の中に入り、爆発する。

 

「なんなんだ一体…うわぁ!」 

 

首根っこを掴まれて倒されたカガリが立ち上がろうとするのを、ソーマがぐっと抑え込む。

すぐ後ろで金属製の看板に弾丸が跳弾する音が聞こえた。

 

「伏せてろ!死にたいのか!」

 

ソーマの有無を言わせない言葉に、ようやく状況を理解したカガリは抵抗せずに地面へ伏せる。

 

「無事か君達!」

 

テーブルを蹴り上げた人物も無事だったようだ。まぁ当たり前だがとソーマは思いながら、

テーブルの陰から撃たれた方向を見た。

 

「死ね!コーディネイター!宇宙の化け物め!」

 

「青き清浄なる世界の為に!」

 

それを見てからすぐに顔を引っ込める。

 

「ブルーコスモスか!」

 

「あぁ、これだからブルーコスモスは!これじゃテロリストと変わらん!

キラ!緊急事態だ、敵を排除するぞ」

 

「了解」

 

ソーマ達は銃を取り出し敵を撃つ。

本当はこの騒ぎに紛れて逃げたいが状況がそれを許してくれない。

 

「構わん。全て排除しろ」

 

男が叫び周辺にいた男たちがそれにこたえるように銃を撃つ。

 

そしてものの数分で全てを排除してしまった。

 

「お前!銃の使い方知っていたのか?」

 

キラも軍人だ。地上に降りてから暇を見つけてはソーマやシュンと共に

アークエンジェルやギルデルクで一通りの銃火器の訓練を受けていたのだ。

因みにそれを見ていたムウやクラウスの評価は非常に高いものだった。

 

「それにしてもーー」

 

カガリは後ろを振り返る。

 

「隊長、ご無事で!」

 

「ああ!私は平気だ。彼のおかげでな」

 

すると、さっきまで人の気配がなかった路地からゾロゾロとザフト兵が現れる。

不思議なことに全員が銃を構えていなかった。

そんな男性を眺めながら、カガリが震える声で言った。

 

「アンドリュー・バルトフェルド…砂漠の…虎…」

 

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