先頭を跳ぶルークのシグーアサルト
それに続いて五機のジン型のモビルスーツが飛ぶ。
「ここで別れる。クロエ!外の陽動は任せるぞ!」
『はっ。隊長もお気をつけて』
三機のジンと桜色のジンハイマニューバが別れていく。
「よし、俺達はこのまま中をたたく」
『『はっ』』
ルークたちは港を目指した。
『フラガ大尉!』
『船を出してください。港が抑えられます。此方も出る』
『直ぐに出す』
「やっぱ来たか。」
『お前の勘は本当によく当たるな。ソーマ』
「当たってほしくないですよ。ムウさん」
『だがそのおかげで備えられるんだよ。ゲイル、シュン出るぞ』
『『了解』』
「先行きますよ、大尉。ソーマ・ベリアルイン。メビウス・ゼロC出るぞ。」
護衛艦から切り離されソーマはメビウス・ゼロCを宇宙へと飛翔していった。
ソーマに続きムウのメビウス・ゼロとゲイルとシュンのメビウスが追いつき
ムウを先頭に編隊を築いて敵に向かっていく。
クロエのジンハイマニューバのライフルが火を噴くが
ソーマは軽々躱してガンバレルを展開し攻撃を開始する。
《こいつ今までのモビルアーマーと動きが違う。
あの機体色、そうか、雷神》
ソーマの頭の中にガンバレルの攻撃を躱す敵パイロットの声が響く。
これは神から与えらえた力だ。神は相手の声が聞こえる力をソーマとルークに与えていた。
そのせいで相手の相手の悲鳴すら聞こえてくる。
ソーマはそれを聞きながら戦場に出ていた。
《あの赤いモビルアーマー、まさか赤い雷神か》
途端三機がソーマの方に向かってくる。
『各自散開』
『『「了解」』』
ムウの指示で四機はバラバラに散らばる。
ソーマはジンのライフルの攻撃を躱しながら再びガンバレルを展開し反撃を加える。
《ぐっ》
ソーマのガンバレルによる攻撃がジンの左腕と右足に当たり損傷を与える。
《オロール無事?》
《大丈夫です。まだいけます》
《駄目よ。下がってクルーゼ隊長に雷神がいる事を伝えて》
《くっ、了解》
損傷を受けたジンが母艦に下がる。
『逃がすか!』
「だめだ。ゲイル下がれ!」
《ナチュラルのモビルアーマーが調子に乗るなー!》
『うわあああああああ』
追撃を加えようとしたゲイルに
下がっていたジンがいきなり反転し重斬刀で切り裂きゲイルのメビウスが爆散した。
『ゲイルー』
「あのバカ野郎」
『ジン二機が来るぞ!切り替えろ。シュンは俺とエレメントを組め!ソーマ、一人だが行けるな』
「当然!」
『よし、ジン一機ずつ相手にする。生き残るぞ!』
「『了解』」
戦闘は続く。
別の港口から侵入したザフト兵やジンやシグーは、ヘリオポリスの港や、
新造艦のドッグで破壊の限りを尽くした後に、一般市民がいる市街地へとその姿を現していた。
「モ、モビルスーツ!?」
何も知らされていない一般市民たちは、突如として現れたザフト、
そして連合のすずめの涙のような地上勢力の戦闘に否応なく巻き込まれていく。
「あれだ。クルーゼ隊長の言ったとおりだな」
地獄絵図となったコロニーの惨状には目もくれず、赤いパイロットスーツに身を包む青年、
イザーク・ジュールは、電子双眼鏡を離して、その視線の先に鎮座している兵器群を見つめた。
「突けば慌てて巣穴から出てくるって?やっぱり間抜けなもんだ、ナチュラルなんて」
イザークの隣。彼と同様の赤を着るディアッカ・エルスマンが、
地上でなんとか抵抗している連合の兵士たちを、まるで侮蔑するかのような目で見下ろしている。
彼の目には、イザークと同じように、
コロニーで戦禍に巻き込まれる何の関係もない一般市民は入っていない。
少し離れた市街地。
『お宝を見つけたようだぜ。セクターS。第37工場区!』
「情報通り──地球軍はものの見事に中立コロニーを隠蓑にしていた形だな」
隔壁を爆砕し、ヘリオポリス内部に侵入を果たしたルークは瞬時に目的の物を発見した
強奪部隊の指揮を執るイザークから送られて来た画像データを見ていた。
データには、大型トレーラーに積み込まれたMSの姿が克明に写し出されていた。
黄昏の魔弾という二つ名を持つパイロット、
ミゲル・アイマンは、ヒュウと口笛を鳴らした。
『了解。流石イザークだな。早かったじゃないか』
「気を抜くなよ。何があるかわからないんだ。
各機、イザーク達を援護する。迎撃システムを破壊しろ」
『『はっ』』
「ラミアス大尉!艦との交信途絶。状況…不明…!!」
丁度その時、空からジン二機とその戦闘を飛ぶシグーアサルト
「ザフトの!!」
状況は最悪だった。
完成したG兵器の5機を、新造艦であるアークエンジェルへ輸送する最中に襲われ、
進路も退路も絶たれた。
ジンが出てきている以上、ここがザフト兵によって制圧されるのも時間の問題だ。
技術士官でもあるマリュー・ラミアスは、緊迫する状況の中で、最善の選択を模索していた。
完成したG兵器をザフトの手に渡せば、連合軍の反攻の手立てが断たれることになる。
それだけは何としても防がなければならない。
コロニー内を跳び弾丸をまさに雨のように浴びせかけるザフトのジンと特殊武装のシグー。
それを睨み、さらに森林地帯に潜伏していたザフト兵が、降下してくるのが見る。
近くにいる兵達が抵抗を試みるが、肉体的ポテンシャルも、能力的にも、
ナチュラルはコーディネーターに大きく劣る。兵達も次々と討ち取られていく。
「X-105と303を起動させて!とにかく工区から出すわ!」
これしかない。輸送の道が断たれたなら、G兵器そのものを運用して、運ぶしかない。
しかし、できるのか?完成したばかりのモビルスーツの操縦を、
ナチュラルである自分たちが?OSもまだまだ未完成だというのに。
思考を巡らせるたびに、自分たちの置かれてる状況の悪さに、マリューは顔を歪める。
「けれど、希望はあります!」
同行していた連合兵であるハマダが、ザフト兵と撃ち合いながら叫んだ。
「ここには、雷神が…彼らがいます!!」
マリューは、ハマダが言った言葉に、一筋の希望を見た。
技術士官でしかない自分でも聞いたことがある、神話や与太話のようだと思えた話。
モビルスーツの脅威に未だ何も手を打つことが出来なかった地球連合で唯一、
モビルスーツを撃破し、ザフトに幾度となく煮え湯を飲ませた
メビウスとメビウス・ゼロの混成部隊。
連合の雷神と恐れられる彼らが、ここに?
そうだ。彼らがいればーー。
そう誰もが信じたかったが、現実はそれほど甘くは無いのをマリューは知っていた。
「彼らがコロニー内にも手を回す余裕があればの話よ。とにかく工区へ」
「はい!」
マリューは生き残りで集められる人員を連れてX-105と303の下に向かった。
緩やかな旋回を掛けて、僚機のジンがコロニーの地表面へと降りて行く。
重突撃銃が火を吹き、市街に紛れて展開していた対空車輌が次々と破壊されて行く。
それはさながら、他国へ武力をもって踏み込んだ侵略軍と、
自由の為とそれに対抗する市民軍のようにも見えた。
「──結構じゃないか」
ルークは一人呟いて、鞘に収めた重斬刀を取り出した。
問題の新型兵器は幹線道路に出た所で停止しており、
赤や緑のノーマルスーツを着た強奪部隊が群がり始めている。
ルークはシグーアサルトHMを減速させ、コロニー外壁の回転速度と自機のマニューバを同調させた。
円筒型コロニーの常として、壁面は人工重力を発生させる為に回転し、
またその上空は無重力空間のままとなっている。降下の際にこの同調作業を怠れば、
着地ではなく墜落と言った方が正しいランディングが待っている。
無論そこでしくじるルークではない。
「イザーク、少し下がれ。纏めて斬る」
『了解』
ザフト兵が下がったのを確認したルークは瞬時に目標の対空砲との距離を詰めると、
重斬刀を振るい対空砲を破壊した。続けて地表面を滑走しながら、舞うが如く重斬刀を走らせる。
あっという間に、抵抗可能な対空火器は無くなっていた。
ついでに言えば、滑走時に半ば巻き込まれる形で歩哨も多くが潰れていた。
血と肉片を踏み付けたまま、ルークは愛機に重斬刀を収め再び突撃銃を取り出した。
「ミゲル、マシュー。ここは任せる。俺は工場区のアスランを援護する」
赤服の人影がトレーラーに積み込まれたMSの腹部に取り付くのを尻目に、
ルークは地表面滑走状態のまま工場区へと機体を走らせた。
工場区は、既に戦闘が開始されていた。強奪部隊は内部深くにまで侵攻を果たしつつあり、
レーダーマップ上に表示された施設見取り図には、味方歩兵からの信号を示す光点が複数灯っていた。
「これでは、モビルスーツで踏み込む訳にも行かない、か……」
工場区の側に降り立った途端、システムコンピュータが警告を発した。
近隣の施設から一斉に銃を持った人影が姿を現し、ルークのシグーアサルトに攻撃を始めていた。
無論、歩兵用銃火器如きでMSの装甲は抜けない。ルークは敵歩兵の集まる施設に向き直ると
重斬刀を横に振るった。手応えと共に施設の上半分が地に落ち、
展開していた歩兵達が瓦礫の中に消える。ルークは武装を突撃銃に持ち替えると、
左腕で保持したそれを別の施設に向けた。
トリガーを引く。白の映える工場区の景観が瓦礫の山へと変わっていった。
『こちらラスティ、ロドクルーン隊長!援護感謝します』
無線に声が入った。ラスティ・マッケンジー……強奪部隊に参加した赤服パイロットだ。
ルークは施設と迎撃部隊の破壊を続けながら通信回線を開いた。
「どうした?何かあったか?」
『やべぇ事になりました。連中が作ってた兵器は五機じゃない!≫
「何だと?」
『侵入中にアスランが偶然見つけたんです。連中、味方にも内緒でもう二機ばかし作っています!』
「わかった。場所を教えてくれ。俺が確認する」
『お願いします』
間もなく、シグーアサルトHMのコンピュータにデータが送信されて来た。
それをそのままミゲルのジンに送信する。
「ミゲル!今送ったデータをヴェサリウスとインテグラに送信してくれ。
それと俺はこのデータの確認に向かう。アスランたちの事も任せるぞ!」
『了解』
ルークはジンアサルトHMを旋回させ、コロニーの中心部へと向かった。
アスランが入手した新たな機体の所在、それはモルゲンレーテではなく、
モルゲンレーテと専用の地下リニアトラムで結ばれた先──
コロニーに接続された資源衛星の最奥部、
原則コロニー管理部門関係者以外立ち入り禁止エリアに隠された、極秘区画であった。
「なるほど地球軍のコンピュータにないはずだ」
機体を膝を付かせて
コックピットから降り拳銃を取り出し一人データを元に奥に向かった。
真っ赤に染まったランプ。下層の避難シェルターへ続くドアの前で、キラは息を整えた。
キラは一人は知る。さっきまで一緒にいた金髪の女の子を
シェルターに押し込み自身は走る。
一人分くらいしか空きがない。そう中から訴えられた時、キラは自分が入るのではなく、
迷わず少女をシェルターに押し込んだ。
銃声飛び交う只中に一人残されて、それを掻い潜って別のシェルターに向かわねばならなくなる、
と知っていながら。
自分は、ここで死ぬかも知れない。ぼんやりだが頭に浮かんでいた可能性が、
キラの中でくっきりと形作られつつあった。
隣できゃんきゃんと騒いでいた彼女がいなくなった事で、
嫌でもそこに意識を集中せざるを得なかった。それが、キラにある事柄を意識させた。
が眼下の銃撃戦がキラを現実に引き戻す。
更に工場区内にニュースで見たのとは違う特殊武装付のシグーが入ってきて、
建物を斬り飛ばしてその破片が降り注ぎ、モビルスーツを守っている兵士を押しつぶしていた。
それを下手に動くと危ないと思ったキラは隠れながら見ていた。
そしてシグーが去った頃には護衛の兵士はほぼ全滅。残っているのは
さっき自分を殺そうとしたオレンジ色のつなぎを着た兵士と数人位だ。
その数人だって撃たれて死んでいった。
ここもそう時間を置かずZAFT兵に制圧されるだろう。
(とにかく急ごう。巻き込まれたらたまらない)
そう思って立ち上がろうとした時、
さっきの女性の背後から、一人のZAFT兵が彼女に銃を向けている。
「危ない! 後ろ!」
迷わず、キラは彼女にそう叫んでいた。途端、ZAFT兵の銃口が女性作業員から
キラへと向けられる。当たり前の反応だ。多分、今の叫びでキラに狙いを変えたZAFT兵は
彼だけではあるまい。
しかし、女性作業員は素早く振り返って、キラに気を取られているZAFT兵を手早く射殺した。
彼女はたった今自分の生命を救った声の主を探して辺りを見回し、その姿を見つけ怒鳴った。
「来い!」
「左ブロックのシェルターに行きます! お構いなく!」
「あそこはもうドアしか無い!!」
叫んでからマリューは少し後悔した。
生き残っているのが自分だけのこの状況で何ができるというのか。
むざむざ彼を死地に来させているのだ。
それに彼はどう見ても民間人だ。
足手まといを連れてもどうしようもない。
だが少年はすでに飛び降りていた。
「あの子!」
マリューは上下逆さまになって自分の足元に転がり込んで来たキラに
問い正そうとするが、状況がそれを許してくれない。
途端腕に痛みが走る。銃で撃たれたのだ。
痛みでバランスを崩し座り込む。
そこに一人のザフト兵がナイフを片手に突っ込んできた。
しかしその刃がマリューに刺さる事はなかった。
「アスラン……?」
「……キラ……?」
二人の間に生じた空白の時間。それを一発の銃弾が引き裂いた。
マリューが取り落とした銃を拾い上げて、人影を……アスランを撃ったのだ。
アスランは背中のランドムーバー吹かして後退り、
今立っていた機体のすぐ隣に寝転がっているMSの上に降り立った。
追い掛けようとキラは立ち上がる。が、それより先に女性作業員が立ち上がって、
キラを開かれたままのハッチの中へ押し込んだ。
それは、キラとアスランの再会の舞台となったMSのコックピットであった。
続いてマリューもコックピットに乗り込み、ハッチが閉じられた。