格納庫の周りの瓦礫と共に壁ごと吹き飛ばしたアークエンジェルは
コロニー内を飛ぶ。
《開口部を抜けました!コロニー内部に進入!》
《モルゲンレーテは大破!ストライクが起動中!…いや、戦闘中です!》
戦闘をしていた四人やマリューもそれを認識した。
『ん?新型か!仕留め損ねたか!?』
《戦艦?コロニーの中にか!》
誰もが呆けてそれを見ている中、ラウはストライクに向かう。
『フェイズシフト。これはどうだ?』
《伏せて!》
とっさに伏せるマリューたちをキラはストライクを使って壁になる。
強化APSV弾が装甲に当たりフェイズシフト装甲はそれをはじく。
『チッ!強化APSV弾でも…』
クルーゼがストライクに苦戦する間にルークは機体をアークエンジェルに向かわせる。
《艦尾ミサイル発射管、7番から10番まで発射準備!目標、敵モビルスーツ!
レーザー誘導!いいな、間違えてもシャフトや地表に当てるなよ!てぇ!》
ミサイルが放たれてルークに向けて飛んでくる。
ルークはそれをビームサブマシンガンで破壊した。
《じょ!冗談じゃない!》
キラはストライクの大型砲でシグーを狙う。
《待って!それは!うっ!》
マリューがそれに気づいて止めにかかるが既に遅く、
ストライクの320mm超高インパルス砲アグニから打ち出された一撃は
クルーゼのシグーの左側の腕と武装を破壊しそのままコロニーの壁に当たるかに思えた。
がルークがそれをアンチビームシールドで防いだ。
「こえぇー---。でもここでそれはまずいでしょ」
ルークは何とかストライクの攻撃を防ぎ切った。
尤もシールドであるシールドクローは装甲と素材が融解し原型をとどめておらず、
シールドクローを装備していた左腕の装甲も一部はげかけていたが。
「ラミネート装甲が無かったらやばかったな」
『大丈夫か?ルーク!』
「ああ、とりあえず引き上げるぞ。このままじゃ今度はこっちがまずい」
『そうだな。そうしよう。しかしこれほどまでの火力、モビルスーツに持たすとは』
「ああ、これは本当にヤバイ脅威になりかねない。
(最もその脅威はすぐ近くにあるのかもしれないが)」
『どうした』
「何でもない。少し考え事をしていた」
『そうか』
ルークはシグーを肩を貸し飛んで入ってきたシャフトの穴を使って引き上げていった。
ルークたちが撤退したのを確認したソーマは視線をストライクに向ける。
『大丈夫か?ソーマ!』
「はい、すいません、しくじりました」
『生きているのならそれで十分だ。とりあえずアークエンジェルに降りる。もしかしたらだが』
「可能性のレベルですがね」
『確かめる必要があるだろう』
「はい」
ムウとソーマはアークエンジェルに着艦した。
「ラミアス大尉!」
「バジルール少尉!」
なんとかヘリオポリス内部に降下したアークエンジェルは、一時の休息の中にあった。
ブリッジからハンガーへ降りてきたナタルは、
連絡が取れなくなっていたマリューとの再会を心から喜んでいた。
「御無事で何よりでありました!」
「あなた達こそ、よくアークエンジェルを…おかげで助かったわ」
にこやかにマリューがそう言うと、あたりからざわつきが起こる。
ナタルも、周りが騒ぐのに気がついて、全員が目をやるストライクへ視線を向けた。
コクピットから降りてきたのは、正規兵ではなく、まだあどけなさが残る子供だ。
当然と言えば当然である。
「おいおい何だってんだ?子供じゃないか!あのボウズがあれに乗ってたってのか」
整備長であるマードックが、無精に伸びきった髪をガシガシとかき、呆れたように言う。
G兵器は連合軍の機密中の機密。だというのに、それを操っていたのが子供?
軍人の彼らからすれば由々しき事態だ。
「ラミアス大尉…これは?」
ナタルは軍人らしい面構えで、戸惑うマリューを見つめた。マリューも答えを渋るように声を
くぐもらせたが、彼女が答える前に、ハンガーの奥からヒューっと口笛が響く。
「へー、こいつは驚いたな」
声に気付いて全員がそちらを向く
そこに居たのは、メビウス・ゼロから降りたムウと、その後ろのをメビウスゼロCから降りた
ソーマが近づいてくる。
「地球軍、第7機動艦隊所属、イーグル隊、隊長ムウ・ラ・フラガ大尉だ」
「同じく、イーグル隊ソーマ・ベリアルイン中尉です」
ソーマとムウは、疲れ切っている表情をしたマリューへ敬礼で自己紹介を行った。
「あ、貴方達が…あの雷神…」
消えそうな声で、マリューがそう言ったのが聞こえた。ザフトだけではなく、
連合内でも名声はあるようだな、とムウは気恥ずかしそうに頷く。
「第2宙域、第5特務師団所属、マリュー・ラミアス大尉です」
「同じく、ナタル・バジルール少尉であります」
マリューとナタルもビシッとした敬礼で返す。
(うわ、アニメで見てた時より生で見た方が美人だな。何もなければ呆けてたな俺)
と美人二人を見ながらソーマはそんな感想を頭の中で述べる。
何せ主人公側では恐らく一、二を争う美人だ。※作者の個人的感想です。
SEEDファンである彼はこの運命の出会いに心を打ち震わせているが仕方なことだろう。
しかし、今のソーマ達にそんな戯言を言う余裕などなかった。
「乗艦許可と補給を受けたいんだがねぇ。この艦の責任者は?」
ムウの言葉に、ナタルの表情が沈痛なものになっていく。
「……艦長以下、艦の主立った士官は皆、戦死されました。
よって今は、ラミアス大尉がその任にあると思います…。
無事だったのは艦にいた下士官と、十数名のみです。私はシャフトの中で運良く難を」
「艦長が…そんな…」
ナタルから言われた現場に、マリューは深いショックを受けている様子だった。
しかし、悲しみに暮れている暇はない。
とにもかくにも、今は補給をしなければ話にならない。
いつZAFTの攻撃が再開されるかわからないのだ。
「やれやれ、なんてこった。あーともかく許可をくれよ、ラミアス大尉。
俺たちが乗ってきた船は、落ちてなければ反対側の港に待機はしているが、
ここから戻るにも燃料が厳しいから」
自分たちの船は無事。その言葉を聞いたマリューもナタルも、目を見開いて驚いていた。
あれだけの急襲作戦だ。ヘリオポリス周辺の連合艦は、根絶やしにされていると
彼女らは思っていた。さっきのシグー二機が撤退してからというものあるだろうが
今はザフトからの追撃も止んでいる。外に居たであろうモビルスーツを、
彼らが追い払ったのだろうか。マリューそんなことを考えていると、
ムウが催促するようにマリューを見つめる。やっとムウ達が焦れているのがわかったのか、
マリューは姿勢を正した。
「あ…はい、許可致します」
「で、あれは?」
さらにと、ムウの射抜くような目がマリューを貫く。あれというのは、
ストライクから降りて友人達に囲まれている少年、キラ・ヤマトを指している。
「御覧の通り、民間人の少年です。襲撃を受けた時、何故か工場区に居て…
私がGに乗せました。キラ・ヤマトと言います」
「ふーん」
そう何気なく言うムウの言葉の中には、明らかに呆れや、
侮蔑のような色が混ざっていた。それはナタルのような、一般人にG兵器と関わらせるなど、
といった軍人的な呆れではない。
もっと人間性や、倫理観に基づいたものだ。
「…う、彼のおかげで、先にもジン1機を撃退し、あれだけは守ることができました」
「ジンを撃退した!?」
「あの子供が!?」
マリューの言葉にナタルや下士官が驚いたように声を上げた。
連合の兵器では全く歯が立たなかったジンを、少年が撃破した。
その真実がどれほどの衝撃を与えたか。すげぇと歓喜した下士官をソーマは睨みつけて黙らせる。
「だが、そんな甘い決断と指揮で、ヘリオポリスの外壁に穴を開けかけて、
戦艦をコロニー内部で飛ばすことになったんでしょうがね」
ソーマが放った言葉は、ナタルとマリューを突き刺した。ナタルは明らかな敵意に満ちた眼差し、
そしてマリューはぐうの音も出ないと言う罪悪感にまみれた瞳だ。
「護衛任務に、俺たちが来ていたことは知っていたはずです。
ならば、何故俺たちに通信をしなかったんですか。貴方達が勝手な判断をしなければ、
ヘリオポリスへの損害は防げてたはずなのに…!!
あのオレンジのモビルスーツが防いでなければ今頃、コロニーに穴が開いてましたよ⁉」
「それは、そちらの言い分だ!!こちらの事情も知らないで…!!」
「ZAFTが強襲してきた際はアークエンジェルは待機となっていたはずですが?
まさか少尉であるあなたが知らないという事はありませんよね?」
「それは………………」
売り言葉に買い言葉で、ナタルが怒り心頭な表情でこちらに詰め寄ろうとするが、
ソーマに正論を突かれて言い返すことが出来なくなり黙る。
それをムウが間に入って制する。いや、制してきたのはソーマに対してだ。
肩口で覗くムウの瞳が「落ち着け」と言っている。
「まぁまぁ。――俺たちは、あれのパイロットになるヒヨっこ達の
護衛で来たんだがねぇ、連中は…」
「ちょうど指令ブースで艦長へ着任の挨拶をしている時に爆破されましたので…共に…」
ナタルの言葉に、ムウは暫く何も言わず
「…そうか」
そう小さく言った。
ムウは、実際に護衛対象の兵士達と交流を持っていた。
自分達の教訓やこれまでの事を聞かせてほしいと言われた時
話してやればまるで子供が昔話を聞くように目を輝かせて聞いていたの思い出していた。
ムウは、ゆっくりと友人に囲まれているキラの下へ歩き出した。
ソーマはただムウの行く先を見つめる。
アークエンジェルに着艦してすぐにムウとソーマが話していた可能性。
それを確かめるために。
そしてそれは必要なことだ。
ムウがキラの前に立ち止まり、まるで品定めするような目でキラを見つめる。
「な、なんですか?」
「君、コーディネイターだろ」
ソーマを除いて、その場にいた全員に衝撃が走った。