機動戦ガンダムSEED-風神と雷神-   作:秋月 了

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PHASE-06 アルカナ

インテグラMSハンガー内

 

 

 

アスランは技術士官たちと共に急ピッチで解析を急いでいた。

 

「第5プログラム班は待機。インターフェイス、オンライン。

データパスアップ、ウィルス障壁、抗体注入完了」

 

連合軍が威信をかけて手がけたモビルスーツ。ジンやシグーに対抗し、

持てる技術を惜しげもなく投入して完成させたそれは、ザフトの技術者たちにとっては宝の山だ。

ナチュラルが作った物などと見もせずに粗悪品だと唾棄する者もいるが、

そう言った技術を軽視する者から時代や技術に取り残されていく。

現場で解析を続ける技術士官たちはそれをよく理解していた。

現に駆動系や装甲面の技術は、ザフトのジンやシグーを上回っているのも確かだ。

 

「データベース、コンタクトまで300ミリ秒。外装チェックと充電は終わりました。

そちらはどうですか?」

 

「こちらも終了だ。…しかしよくこんなOSで…」

 

「全くですね。先ほどOSを拝見させてもらいましたが彼らはMSを知らなさすぎる」

 

「実際知らなかったんだろうよ。なんせ連合にはMSはないんだから」

 

技術者と共に、G兵器の一つイージスを解析していたザフトの赤服であるアスラン・ザラは、

自分が再設定する前のOSのデータを眺めながら眉を顰めた。

よくもまぁ、こんな粗末なOSでこれほどの機体を動かそうと考えたものだ。

それに技術者たちが答える。

これのOSを設計したものは現場やモビルスーツを知らなすぎる…いや、現に知らなかったのだろう。

なにしろ、連合は今までモビルスーツなんてものは持っていなかったのだ。

そう話す技術者に同意を向けつつ作業を続ける。

アスランが所属するザフトも、モビルスーツ「ジン」の展開力や汎用性、

その機能性が連合軍が持つ既存兵器を大きく上回っていたから、戦争を有利に進められたのだ。

ジンがあれば、連合軍のモビルアーマーなど、敵ではない。誰もが開戦当初はそう思っていた。

赤い雷神が現れるまでは。

 

「ロドクルーン隊長機帰還。被弾による損傷あり。消火班、救護班はBデッキへ」

 

アナウンスが聞こえた後左腕に融解した何かを装備したアスランの知らない機体が入ってくる。

アスランはコックピットを出て、偶々近くにいたクロエとレオンハルトの下に向かう。

 

「アスラン。お疲れ様」

 

「お疲れ様です。あの機体は?」

 

「隊長が鹵獲した機体。でもすごい事になってるわね」

 

「ああ、左腕のあれはなんだ?」

 

「恐らく盾かなにかじゃないかしら?完全に溶けてるけど」

 

装甲冷却開始!という合図と共に、ブレリュードの装甲が開き冷却が始まる。

機内に篭っていた熱も相当な高さを保っていた。普段のルークならば、

ここまで追い詰められたような姿にはならない。

帰投してから、先輩に聞いた、雷神の話をアスランは思い出した。

グリマルディ戦線で十機以上のモビルスーツを撃破し、

その後の戦場でも多くのモビルスーツを撃破した、メビウス・ゼロとメビウスの混成部隊。

命からがらなんとか生き残ったパイロットから得られた情報。

それは、真っ赤なメビウス・ゼロが捕捉不能な軌道を描き近づき、パイロットを翻弄し、

精神を追い詰めた上で、コクピットをレール砲やガンバレルで穿った事実。

小規模な戦闘ではあるが此方側有利に進んでいた戦闘が雷神が現れた瞬間、

一気に逆転されたという記録もある。

そこから、ザフト兵に恐れられて付けられた二つ名が雷神。

又は真っ赤な機体色から赤い雷神とも呼ばれている。

しかし、それよりもアスランには気になることがあった。

戦火の炎に包まれた場所で再会した、自分の幼馴染。

 

(…まさか…でもあいつなら…いや、違う。あいつがあんなところにいるはずがない)

 

破損したブレリュードを見つめながら、アスランの思考の中には、

一瞬浮んだ遠い昔に別れた幼馴染の事を思い出したが違うとかき消した。

 

 

 

ルークSIDE

 

 

 

 

 

『ミゲルがこれを持って帰ってくれて助かったよ』

 

ブリッジで、クルーゼとルークはミゲルが持ち帰ったストライクのデータを眺めていた。

クルーゼの前には、規則正しく直立したミゲルと、オロール、マシュウ、

そしてルークの前にはアスランと彼の先輩であるレオンハルトとクロエがいる。

 

「全くだな。いくら言い訳したところで、地球軍相手に機体を損ねたは俺は、

大笑いされていたかもしれない」

 

更にモニターには赤いメビウス・ゼロとオレンジのメビウス・ゼロ

そしてメビウスの編隊が映し出された。

 

『オリジナルのOSについては、君らも既に知っての通りだ。なのに何故、

この機体だけがこんなに動けるのかは分からん。だが我々がこんなものをこのまま残し、

放っておく訳にはいかんと言うことは、はっきりしている』

 

そこで、クルーゼが提案したのは殲滅戦。

それをルークは反対した。

ヘリオポリスを破壊する訳にはいかないからだ。

 

『ではどうするというのかね?』

 

「俺の隊の合同で戦う。目的はモビルアーマーへの攻撃。

コロニー内で数を減らしてその後、調整の終わった敵のモビルスーツを含めた

総力戦で一気に殲滅する」

 

『ふむ、それでいこう。ではすぐに準備を行う』

 

「こっちも準備だ。急げよ」

 

「「「はっ」」」

 

三人は出て行った。

 

 

 

 

 

 

 

「君、コーディネーターだろ」

 

「……はい」

 

ムウの確信めいた問いかけに誤魔化せないと判断して意を決してキラは答えた。

答えを聞いた銃を持った兵士数人が反射的に銃をキラに向ける。

 

「民間人に銃を向けるな。馬鹿が」

 

「しかし、彼はコーディネーターで」

 

キラに銃を向ける兵士をソーマが止め、

ナタル反論するがソーマが睨んでこれ以上の反論を封じ込める。

 

「勘違いするな。俺達の敵はプラントだ。コーディネーターじゃない。

そもそもここは中立国オーブのコロニーだ。

コーディネーターが居たとしても何の不思議もない。違うか?

それともお前たちは国際法も知らない無知な馬鹿か?どうなんだ?」

 

「申し訳ありません」

 

ナタルは謝罪し兵士達は銃を降ろす。

 

「いやー悪かったな。俺は確かめたかっただけなんだよ。これに乗るはずだった

ヒヨッコ供を見てきたが、連中のろくさ動かすのにも四苦八苦してたからな。

それをジンを撃破出来るだけの力を持った奴がどんなのか知りたくてな。」

 

ムウは場を騒がせた事を謝罪した。

それからその場は直ぐに解散となりそれぞれの作業に戻っていく。

そもそもあんなところで長々と話している余裕はないのだ。

相手はクルーゼ隊とロドクルーン隊だ。

外にはZAFTの戦艦が三隻いるのだ。

当然モビルスーツもさっきの五機だけではないだろう。

整備班は急いでメビウス・ゼロの補給作業に映る。

その時一機のメビウスが着艦許可を求めてきた。

搭乗者はシュン・イザワ少尉。イーグル隊の隊員の一人だ。

 

「大尉、中尉もご無事で何よりでした」

 

「そっちはどうだ?」

 

「こちらはあれからは特に、現在反対側の港について物資を搬入しています」

 

「わかった。これからアークエンジェルはヘリオポリスを脱出するからお前も手伝え」

 

「了解です」

 

シュンはムウの下を離れ自分の機体の方へ向かう。

シュンと別れたムウはマリューとナタルがいるブリッジに向かう。

そこで今後の動きを話し合うためだ。

ムウがブリッジに向かい始めた頃、警告のアラートが鳴り響いた。

 

「レーダーに反応あり!」

 

レーダー関連の調整をしていたトノムラが叫びナタルが反応した。

 

「もう攻めてきたのか?数は?」

 

「一機です。機種は特定できていませんが」

 

「アンノウンという事?」

 

マリューも返して映像を出すように指示する。

正面の画面には戦闘機を思わせる機体がふらふら飛んでいる映像が映し出された。

 

「アルカナだわ!」

 

「ラミアス大尉。あれをご存知なので?」

 

「ええ、G計画の遂行と同時に進められていた計画なの。

元は二機あってフラガ大尉とベリアルイン中尉向けの

可変モビルスーツ開発を目的としていたの。

尤も一機は奪われてしまったけれど」

 

「アンノウンより通信。着艦許可を求めています。搭乗者は地球軍仕官と判明」

 

「許可して整備班にすぐに場所を開けるように指示を!」

 

「はっ」

 

トノムラは指示に従ってアナウンスを流した。

 

 

 

 

 

 

 

 

『不明機が着艦する。整備班及びハンガー内で作業中の乗組員は至急退避せよ。

繰り返す。不明機が着艦する。整備班及びハンガー内で作業中の乗組員は至急退避せよ』

 

「不明機?なんだそれ?」

 

「俺に言われても分かりませんよ」

 

コジロー・マードックから修理状況の説明を受けていたソーマはアナウンスを聞いて

徐々に開いていくハッチの向こうを見た。

そこからふらふらとこちらに降り立ったフィーチャーを眺めていた。

 

(あれってZガンダムか?)

 

コックピットから這い出るように人が出てくる。

そのまま倒れたのでその場にいた者たちが駆け寄る。

 

「おい、大丈夫か?」

 

ソーマが駆け寄って状態を確かめるが

足はほぼつぶれており、左うでは肘から先がなくとても助かる状態ではなかった。

 

「機体を・・・・・ラミアス大尉に。はぁはぁ・・・・・これだけでも」

 

「ああ、よく頑張った。お前がつないだ希望は俺たちが引き継ぐ」

 

それを聞いた仕官は安心したように息を引き取った。

 

「くそっ」

 

遺体はストレッチャーに乗せられて運ばれていった。

 

 

 

 

 

 

数分後。

整備班によってきれいにされたコックピット内で

ソーマはマニュアルに沿って機体の調整に入る。

 

「何とかなるか?正直まだ所々お粗末極まりない部分はあるが

一応戦えるほどまでにはなったか」

 

流れてきた汗を拭い一人ぶつぶつとしゃべりながらコックピットから出る。

外にはブリッジから戻ってきたムウが立っていた。

 

「どうだ?ソーマ」

 

「一応何とかなりました。戦闘でも使用できるかと」

 

「そうか。頼むぞ」

 

「でも、俺でいいんですか?大尉の方が」

 

「おいおい、勘弁してくれよ。俺にはあれは扱えねーって」

 

「はは、大尉なら何とかしそうですがね。俺はちょっと水貰ってきます」

 

「おう」

 

ハンガーから出て食堂に向かった。

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