捕食者系魔法少女   作:バショウ科バショウ属

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 残業辛スギィ!


残響

 インクブスどもは馬鹿じゃない。

 だが、昨夜の一戦は罠を疑うほど順調に推移し、最終的に1011もの屍が生み出された。

 想定していた以上の行動は見られず、ただただ鏖殺されたのだ。

 何か見落としているのではないかと不安になる。

 

「え、なにあれ…」

「作り物じゃないよね…?」

 

 黙々と肉団子を口に運びつつ、次の一手について思考を巡らす。

 昨夜の一戦で駆逐した数は最多記録だが、手放しに喜ぶことはできなかった。

 もう同じ手は通用しないからだ。

 ならば、インクブスどもは次に何をしてくるのか?

 

「す、すげぇ…」

「あの座ってる子、誰?」

「ご存じ、ないのですか!?」

「いや、誰だよ」

 

 昨日の今日で動きはない、はずだ。

 だからといって思考を止める理由にはならない。

 

 ──わざわざ学校に来てまで、と冷めた視線を送る自分がいた。

 

 インクブスどもは必ず来る。

 あの程度で諦めるなら世界の軍事大国が苦境に陥るものか。

 私にできることは考え続けることだ。

 

「東さん……場所、変えませんか?」

 

 頭の上でベニシジミと対峙するパートナーの困惑気味な声。

 現実に引き戻してくれるな。

 場所を変えたいのは山々だが、逃げる機会を逸したのだ。

 諦めてトマトを食む。

 

「きれい……」

「いや、気持ち悪いでしょ」

 

 周囲から注がれる好奇の視線に溜息が漏れそうになる。

 

 ──どうしてこうなった?

 

 肩に止まるアオスジアゲハは翅を揺らすだけで答えてくれない。

 

「このままだと私が追い出されそうです…!」

 

 弁当を作ってきたはいいが、見たがっていた相手は休み。

 無意識のうちに教室を出た私は、中庭にあるベンチで弁当を開けていた。

 某階段と同じくらい人気のない場所だが、その理由は背後のサクラに集まる虫たちによるもの。

 つまり、私にしてみれば、た(・)だ(・)の(・)ベンチ。

 だったのだが──

 

「あれって2年の……」

「平気なのかな?」

 

 朝方の雨が生み出した水たまりに集うジャコウアゲハ、クロアゲハ、ルリタテハ、エトセトラ。

 1匹、2匹ではない。

 眼前に色鮮やかな絨毯が広がり、ここはバタフライファームかと錯覚しそうになる。

 

「そこは譲りませんよ!」

 

 頭の上から肩まで降りてきたパートナーは、アオスジアゲハに前脚を上げて威嚇するも無視される。

 ハエトリグモの姿を模しているだけで実態は異なるモノと察しているらしい。

 しかし、花でもない私に止まる理由はなんだ?

 

「むぅ……まるで私を脅威と思っていませんね」

 

 吸水のため水たまりに集まるのは百歩譲って分かる──私の周囲に集まる必要は一切ないが。

 

 ファミリアではない、ただの昆虫にとって私は厄介な大型動物としか映っていないはず。

 空になった弁当箱の蓋を閉めると、膝元のキアゲハが驚いて飛び上がる。

 

「原因はなんだ?」

 

 手を合わせる動作と同時にパートナーへ短く問う。

 注目されている以上、堂々と話せないのだ。

 

「…東さんの放つエナに引き寄せられたのではないでしょうか?」

 

 ウィッチへ変身しているわけでもないのにエナを放つことがあるのか。

 

 私の場合は──ある。

 

 ファミリアとの交信で使用するテレパシーだ。

 極微弱なエナを発するマジックの一種。

 しかし、敏感であるはずのウィッチやインクブスにすら勘付かれたことはないぞ。

 

「ここ最近、交信量が増えて、エナの放射量も微増していますよね?」

 

 それはどうしようもない。

 出現するインクブスの数が増えれば、動くファミリアの数も増える。

 ファミリアへ指示を出すにはテレパシーが必要不可欠なのだ。

 しかし、生物が平等にエナを宿すとして、昆虫に知覚できるものなのか?

 アオスジアゲハと押し合うパートナーに視線で先を促す。

 

「それが、彼らにとって最適なエナの滞留濃度を生み出しているのではないかと……それに──」

 

 それに?

 

「東さんのエナは、優しい香りがしますから」

 

 それは精神的な表現なのか、物理的な現象なのか──いや、やめよう。

 

 どちらにしろ、私には不似合いな言葉だ。

 ともかく、昆虫はエナを知覚している可能性がある。

 エナの放射量は感覚的にしか把握できなかった。

 だが、昆虫を指標にすることで、ある程度推測できるかもしれない。

 

 種や分布の傾向からエナの滞留濃度を測る──それが可能となれば、情報収集の際に切れる手札が増える。

 

「しかし、ここまで集まるとは…!」

 

 視界の端でアオスジアゲハに押し負けるハエトリグモ。

 何をやっているんだ。

 ひとまず昆虫の指標化は後回しにして、そろそろバタフライファームを閉園しなければ昼休みが終わってしまう。

 しかし、どうやって頑なに離れないチョウたちに道を空けてもらうか。

 

 ──脳裏を過るコガタスズメバチ騒動。

 

 まさか、と内心は疑いながらも物は試しと口を開く。

 

「散れ」

 

 ただ一言、それは周囲の喧騒をすり抜けて中庭へ響き渡った。

 

 そして──色が躍る。

 

 羽音もなく、一斉に舞い上がったチョウ。

 ひらりひらりと羽ばたく翅が陽光を浴びて輝く。

 無秩序に見えて、意思を持っているかのように舞う色の螺旋。

 まるで、一陣の風に乗った花吹雪だ。

 その様を、通りすがりの男子生徒やケータイを構えた女子生徒、教材を抱えた教員までもが茫然と見送っている。

 

「バタフライファームみたいです…!」

「……そうだな」

 

 半ば諦めの境地にあった私は、投げやりに応じる。

 これで私が奇人変人の類で認知されてしまったのは間違いない。

 もう無口な女子生徒では通らないだろう。

 中庭を舞う色とりどりの翅を眺めながら、これからを憂いて溜息を漏らす。

 

◆

 

 鉛色に濁った空が泣いている。

 雨粒の受け皿たるコンクリートジャングルは、ただ雨音だけが響く物寂しい世界だった。

 その一角、朽ちたホテルの屋上に佇む5つの人影。

 

「本当にインクブスが現れたんですの?」

 

 亜麻色の髪と浅緑のサーコートを等しく雨に濡らすウィッチは、地下鉄駅出入口を睨む。

 つい先日、オークを逃した場に再び足を運ぶ羽目となったウィッチナンバー11の視線は幾分か険しい。

 

「間違いありません」

 

 その隣に佇むウィッチは、事務的な口調で返す。

 金の装飾が施された紅白の軍装を纏い、クラウンを被った姿はトランプのキングを思わせる。

 その背後には無言で雨に打たれる機械仕掛けのロイヤルガード。

 

「私のファミリアが強い反応を捉えたのは、ここです」

 

 そう言ってウィッチナンバー10は周辺に放ったファミリアのテレパシーへ意識を傾ける。

 膨大に見えて精度の粗い情報から価値あるものを選別しなければならないのだ。

 

「でも、気配が一切しないね」

 

 とんがり帽子の端から雨水を滴らせながら現状を確認するのは、ウィッチナンバー6。

 その場にいる誰よりもウィッチ(魔女)らしい格好の黒いウィッチはスポッティングスコープを構えたまま動かない。

 

「うむ! 800ものインクブスが一夜で消えてしまうとは驚きだ!」

 

 プリマヴェルデの肩に止まるフクロウが雨音を打ち消す朗らかな声で言う。

 ナンバーズがお(・)茶(・)会(・)以外で集った理由を。

 

「初めからいなかった……わけないよね」

「はい」

 

 昨夜、推定800を超すインクブスの群れが旧首都の中心部に出現した。

 巧妙に気配を分散させていたが、ナンバー10が察知に成功し、ナンバーズ──いつもの5人──は群れを殲滅すべく集う。

 しかし、交戦どころか目視することなくインクブスは全(・)て(・)消失した。

 

「逃げちまったのかもしれないにゃぁ」

 

 無機物であるはずのスポッティングスコープからくぐもった笑い声が響く。

 人を食ったような、実に胡散臭い声色だった。

 

「誰から逃げるのさ」

「そりゃ、怖い怖いナンバーズからだろうにゃぁ」

 

 地下鉄構内に出現したインクブスがウィッチの接近を知る術はない。

 ナンバー10のファミリアが発見された可能性はある。

 しかし、小型ゆえに隠蔽性が高く、万に一つも発見されてナンバーズの存在が露呈するとは考えにくかった。

 

「戦いがあったのは間違いないよ〜」

「ベニヒメや、大丈夫かえ?」

「すごく臭いけど……まぁ、大丈夫?」

 

 紅の雅な和傘を差すウィッチナンバー9は狐耳を倒し、鼻を袖で隠す。

 コンクリートジャングルの下層より漂う臭気。

 それはインクブスを構成するエナが破壊され、無秩序に混ぜられた破滅的なもの。

 戦闘の痕跡である。

 

「あ(・)い(・)つ(・)以外いないだろ」

 

 各々の考えを一刀両断し、端的に述べられる結論。

 言い放ったのは、雨を遮る大楯の陰にて腕を組む純白のウィッチであった。

 

「ナンバー13だと?」

 

 ナンバー10から返される平坦な視線。

 それに対してウィッチナンバー8は不本意そうだが、確信した様子で頷く。

 ここはナンバー13のテリトリーであり、他のウィッチによる活動は確認されていない。

 消去法で彼女しか残らないのだ。

 しかし、ナンバーズであっても一夜で殲滅するには地形が悪く、非現実的に思われた。

 

「仮にそうだとして、あの数を一体どうやって…」

「まぁ、ファミリアだろうね〜」

 

 顎に手を当てて疑問を呈する浅緑のウィッチへの回答は、紅のウィッチから成された。

 

 ──雨音が満ち、5人は黙して灰色の世界を見下ろす。

 

 しばしの沈黙の後、情報の選別を終えた紅白のウィッチが口を開く。

 

「ファミリアですか」

 

 戦闘の補助的な存在という常(・)識(・)を覆し、単独戦闘可能なファミリアを召喚したとして、エナの消費量は生半可なものではない。

 しかし、召喚に伴うエナの急激な増減は観測されなかった。

 強力なファミリアの存在を疑うのも無理はない。

 

「信じられねぇと思うが……あいつはファミリアしか使ってない」

 

 それは百も承知。

 

「昨日も言ったけど〜大きなカブトムシとか、すごいんだよ〜」

 

 しかし、複雑な表情を浮かべるゴルトブルームは、男児のように目を輝かせるベニヒメは、見たのだ。

 たとえネームドであろうとファミリアの物量と多様性をもって駆逐するシルバーロータスを。

 

「2人が見てるわけだし、私たちが認識を改めるべきなんだろうね」

「目撃者がいるわけだからにゃあ」

 

 スポッティングスコープから目を離したナンバー6は、パートナーの言葉に頷く。

 今まで蓄積してきた情報をテンプレート(常識)としているだけ。

 それが不変とは限らない。

 そして、これまでシルバーロータスがインクブスを屠ってきた事実は揺るがないのだ。

 

「確かに、その通りです」

「…お二人が現に見ているわけですものね」

 

 常識に固執していても前進はない。

 完全に納得はしていなくとも、無意味な問答を繰り返すより生産的である。

 今は地下鉄構内のインクブスを一夜にて滅ぼすという常識の埒外を、いかに実行したか解き明かすべきだった。

 

「しかし、あの群れを一夜で倒すことができるとはな!」

「閉所だからこそ可能と考えます。シルバーロータス殿のファミリアは接近戦を主眼としていました」

「ベニヒメと我が見ただけでも相当な数じゃ……逃げ場がなければ揉み潰されるじゃろな」

「おぉん、スチームローラーかにゃぁ?」

 

 最終的な意思決定以外の場では、頻繁に言葉を交えるパートナーたち。

 簡易的な意思しか伝達できないテレパシーは用いない。

 ウィッチへ情報を共有しつつ、推察を行う。

 降雨の真っ只中でも。

 

「……あれだけの数、どうやって維持しとるんじゃろな」

「召喚時のエナを使い果たせば、通常は消滅するはずです」

 

 エナの変動を見るに召喚は行われていない。

 であれば、ファミリアは常時顕現しているということになる。

 少数ならエナの供給も可能だろうが、シルバーロータスの率いるファミリアを少数とは呼ぶまい。

 

「謎だね、やっぱり」

「うむ! こればかりは本人に聞くしかあるまい!」

「はい、本人に聞くべきでしょう」

 

 確実ではあるが、実現の難しい案に間髪入れず賛同するナンバー10。

 シルバーロータスの微弱なエナを探し出すことは難しい。

 そもそもウィッチは人探しに向いていないのだ。

 とんがり帽子を上げ、ナンバー6は困惑気味な視線を投げかける。

 

「また、お茶会に呼ぶのかい?」

「来ないと思うけどな」

 

 言葉を交え、彼女の為人を一部でも知ったゴルトブルームは、お茶会よりインクブス駆逐を優先するという確信があった。

 そもそも、今までの誘いを全て断ってきた相手なのだ。

 来るはずがない。

 

「来ないなら迎えに行くまでです──ナンバー9」

「うん?」

 

 狐耳が立ち、紅の傘から雨粒が落つ。

 例外的に人探しも(・)できるウィッチはいる。

 断片的な情報だけでファミリアからシルバーロータスまでを辿ったベニヒメが、その例外であった。

 

「お願いできますか?」

 

 あくまで個人主義のナンバーズが、偶発遭遇や個人の気まぐれ以外でウィッチへ干渉する。

 バディ制の復活といい、今までからは考えられない変化であった。

 

「いいよ。でも──」

 

 翠の視線と紫の視線が交錯する。

 

「今日は帰ろうよ~風邪ひいちゃうよ?」

 

 インクブスの存在が確認できない以上、雨に打たれ続ける意味はない。

 まったくもって、その通りである。

 

◆

 

 草木のない不毛な大地、血のように赤い月が瞬く空。

 彼らにとって不変の景色を無為に監視することは苦行に他ならない。

 

「交代の時間だ」

 

 急造の物見櫓へ風に吹かれながら登った矮躯のインクブスは、歩哨を務める同志へ交代を告げた。

 柱に背を預けて寛ぐ同志は、気怠げな欠伸を一つ。

 

「ようやくかよ」

 

 そう言って起き上がり、傍らに置いていた護身用のボウガンを拾い上げる。

 歩哨にあるまじき態度だと憤る者はいない。

 士気が奮わないのも無理はなかった。

 

「…インプの機嫌を窺うより気楽だと思うがな」

「どうだか」

 

 最近になって派遣されてきたインプたちは、安全にファミリアを討伐できる優れた術士である。

 その認識から特権意識が日に日に増しており、付き合わされるゴブリンたちは辟易としていた。

 玩(・)具(・)を独占される機会も増え、不満に拍車がかかっている。

 

「こんなもん建てたところで無駄なのになぁ」

「ここは俺たちの巣だ。何もしないわけにはいかないだろ」

 

 粗削りの柱を小突きながらゴブリンは鬱屈とした溜息を漏らす。

 歩哨は重要な役目だ(・)っ(・)た(・)。

 しかし、今やエナを感知する能力でゴブリンより優れるインプによって、歩哨に仕事は回ってこない。

 急造の物見櫓は我々も協力しているというポーズに過ぎなかった。

 

「なぁ、あの噂聞いたか?」

 

 噂好きの同志は物見櫓を下りず、その場に居座って問うた。

 出所が怪しい噂ばかりで真偽も二の次、ただの暇潰しでしかない。

 またか、と呆れながらゴブリンは求められた回答を返す。

 

「遠征軍の話か?」

 

 頷いてみせる同志は深刻そうな表情を見せ、幾分か声を潜めて言う。

 

「全滅したらしいぜ」

 

 それを耳にしてもゴブリンは大して動じなかった。

 まだ派遣されて時が経っていないからだ。

 総勢1000を数える遠征軍が早晩全滅するものか、と。

 

「それの出所はインプだろ? いつもの出まかせだって」

 

 そもそも全滅したという情報を誰(・)が(・)伝えたというのだ。

 インクブスでも抜きん出て性格の悪いインプの虚言に違いなかった。

 付き合うだけ馬鹿馬鹿しい。

 

「いや、違うぜ……第二陣が解散になったのさ。続々と同志が戻ってきてる」

 

 物見櫓から同志を追い出す方法を考えていたゴブリンは、その言葉に動きを止める。

 遠征軍の第一陣が築いた拠点より展開する予定だった第二陣。

 それが解散されるということは、全滅の噂を虚言と切って捨てることが難しくなる。

 

「……奴らがいない場所を選んだって話だろ?」

 

 生還した偵察隊の証言から安全と判断された場所へ遠征軍は赴いた。

 そして、各地の偵察隊との戦いでウィッチが疲弊している間に拠点を築く手筈であった。

 

「災厄のウィッチの罠だった…とかな」

 

 かのウィッチはファミリアを駆り立て、確実に、そして徹底的に、インクブスを滅ぼす。

 偵察隊は逃(・)れ(・)た(・)のではなく見(・)逃(・)さ(・)れ(・)た(・)可能性は否定できない。

 唯一異界に侵攻し、数多のインクブスを屠ったウィッチならば、あるいは──

 

「それは考えたくねぇが……」

 

 上から情報が下りてこないゴブリンは噂から連想するしかない。

 それが言い知れぬ不安を醸成し、物見櫓の空気は重いものとなる。

 ファミリアの脅威から解放されるためには、元凶たるウィッチを倒さなければならない。

 その未来が遠のいたのだ。

 

「これからどうすんだろうな」

 

 第二陣の解散とは、ウィッチ討伐の延期を意味する。

 遠征軍の第一陣が全滅したとすれば、その被害は甚大であり、回復には時間を要するだろう。

 インクブス全体から見れば一握りだが、数の問題ではない。

 第一陣および偵察隊を構成していた者は、群れを統率するような実力者ばかりだった。

 影響は計り知れない。

 

「総長たちは次の手を打ってるらしいぜ!」

 

 重くなる空気を振り払わんと噂好きの同志は努めて大きな声で話す。

 インクブスの各総長が連日会合を行い、対策を協議していたことは周知の事実であった。

 

「次の手?」

 

 久々に悲観的でない話題だが、真偽は二の次な噂に疑いの目を向けるゴブリン。

 その視線を受けようと自信ありげな態度を崩さない同志。

 

「なんでも捕らえたウィッチを──」

 

 下卑た笑みを浮かべた口が、不意に止まる。

 表情を硬くする同志の視線の先には、赤き月の照らす夜空が広がっていた。

 

 不変の景色──否、月光を背負う漆黒の影があった。

 

 漆黒の外骨格に覆われ、4枚の翅で飛翔する異形。

 72に及ぶゴブリンの巣を滅ぼし、近辺のインクブスを全て駆逐した災厄。

 それが群れを成し、獲物と苗床を求めて再(・)び(・)襲来したのだ。

 

「敵襲!!」

「くそっインプの奴ら昼寝でもしてんのか!」

 

 ボウガンを手に取り、備えられた銅鑼を打ち鳴らす。

 腹底に響く銅鑼の音すら飲み込む重々しい羽音。

 インクブスを狩る者たちは疲労など存在しないかのように連日連夜、襲来する。

 その度に戦術を変化させながら──




 東パッパの話も書きたいネ(鬱回確定)
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