IS~インフィニットストラトス~ Noblesse Oblige 作:白姫彼方
~バス内~
「海っ!見えたぁっ!」
トンネルを抜けたバスの中でクラスの女子が声をあげる。
臨海学校初日、天候にも恵まれて無事快晴。陽光を反射する海面は穏やかで、心地良さそうな潮風にゆっくりと揺らいでいた。
「あれが海なの?お姉ちゃん」
「うん、とっても綺麗でしょ?」
「うん!♪」
美紗緒が元気良く笑顔で答えると近くの女子から「お持ち帰りしたい」等と聞こえ、美緒の顔が少し引き攣る。
「ねぇねぇ、お姉ちゃん」
「うん?どうしたの?美紗緒ちゃん」
「何か歌って?」
「ん、わかった♪」
「(あれにしようかな……うん♪そうしよう)」
美緒は喉の調子を確かめてから目を閉じ歌い始める。
しばらくして美緒が歌い終わって目を開けると何故か静かになっているバス内に気付く。
「あれ……?何で静かになってるの?」
何処からか拍手が鳴り、段々とバス内全体に広がる。
「え、えぇ?どうして?え?」
「あはは……お姉ちゃんの歌声を皆で聞いてたんだよ~」
美紗緒の言葉に全員が頷く
「そんなに私の歌声良くないよ?」
美緒はそう言うが「それはないっ!」と千冬、真耶と運転手以外の全員が言った。
「そろそろ目的地に着く。全員ちゃんと座って静かにしろよ」
千冬がそう言うと全員が元気の良い返事をする。
~海岸~
「ん~っ!夏はやっぱり海だねぇ~♪」
そう言って伸びをしているのは美緒で黒地のビキニに胸元から白のレースがアクセントのセンターストラップのトップス、同じ黒地のボトムでハイレグのフルバックだ。その上から同じ黒地の専用ミニスカートを履いており、そのスカートにも二段のフリルが付いており、可愛さをアピールしている。
ビーチサンダルは黒のローヒールトングTストラップサンダルを履いている。
「あちちっ!こ、これが夏の海なんだ~」
そう言って出てきたのは美紗緒であり、美緒と同じデザインではあるが色がスカイブルーになっている。
こちらは青のトングTストラップサンダルを履いている。姉妹揃ってほぼ同じ格好なのは驚きだ。
「あー!お、織斑君が肩車してる!」
「ええっ!いいなぁっ!いいなぁ~」
「きっと交代制よ!」
「そして早い者勝ちよ!」
なにやら女子達が騒いでいるのを美緒は見て、美紗緒の肩に乗る。
「わわっ!お姉ちゃん!?」
「美紗緒ちゃん、ゴー!」
美緒は一夏が居る方向を指差す。美紗緒は訳も解らずにとりあえず向かった、そこで二人が見たのは鈴音が一夏の肩から降りるところだった。
「よっと!」
美緒は美紗緒の肩から降りて高く跳ぶ。その目標地点は一夏だ。
「いっちか~♪」
「げぇっ!美緒!」
美緒は一夏の背後に飛び降り、そのまま一夏の肩に乗った。
「ちょっ!まっ!」
「ん~♪やっぱり一夏の肩車は乗り心地が良いね♪」
「美緒、降りろ~!」
一夏は美緒を降ろそうともがくがそれが逆効果となり、美緒が一夏の頭にしがみ付く、当然そうなると美緒の豊満な乳房が押し付けられるわけで……
「/////!!」
「ふふ♪一夏赤くなってる~♪」
赤くなった一夏を美緒はコロコロと笑い、からかう。
「こら!美緒!さっさと降りなさいよ!」
「そ、そうですわ!早く降りるべきですわ!」
「まぁ、二人がそういうなら仕方ないね~」
美緒は二人が言うと素直に一夏の肩から降りる。
ちなみに鈴音はスポーティーなタンキニタイプでセシリアは鮮やかなブルーのビキニでパレオを腰に巻いていた。
「ふふ♪私は十分愉しんだから、また後でね♪」
そう言って美緒は一夏達から離れた。
「美緒の奴どうしたんだろうな?最近おかしいぞ」
「一夏もそう思う?」
「ああ、引越しする前はよくこういうイベントの時はよく一緒に居たんだけどな」
「そうよね……やっぱり何かあったのよ、『
鈴音の言うあの事とは以前美緒暴走事件の時に美緒が話したことであった。
あながちそれは間違いではない、だが一夏達にそれを知る術は無かった。
場所は離れ、海岸に直ぐ近くある森林内に美緒は一人居た。
「(一夏に水着姿を見てもらいたかったけど……やっぱりやめておいた方が良いね)」
森林内をゆっくりと歩き、草木の濃厚な匂いを嗅ぎながら一人想う
「(一夏が私に好意を持ったらみんなが悲しむし、私も辛い……)」
それは美緒の独りよがりな想いだ……そう言える者は今ここには居ない。
「(だから一夏には他の人に好きになってもらわないと困る……私だけが遺されてしまうから)」
美緒は遺されて行くのを極端に怖がる……現在不老不死である『
「(不老不死が人類の夢……誰がそんなことを言ったんだろうね……不老不死なんて終わりの無い生き地獄だよ)」
永遠の美貌、死ぬ事のない肉体、確かに人類の夢ではあるだろう……当事者以外には、それは遺される者ではないからだ。当事者にとっては生き地獄、親しい人達の死をずっと見続けなければならないのだから。
「(だから……私は楽しかった思い出だけ有れば良い……そうすれば……夢の中だけでも孤独ではないから)」
心が壊れない様に、美緒はそう、自身に言い聞かせる……自身の想いとは逆に……それが美緒自身の心の茨となり、締め付け、苦しませる。
「(本当は私も普通の女の子になりたかった……でもそれは贅沢だね……
美緒の目から涙が一筋流れ出る。本人が知らぬ間に
「(辛いよ……辛いよぉ……寂しいよ……寂しいよぉ……)」
何時の間にか美緒は蹲り、地面にポタッポタッと染みを作っていく。
「遺されるのは嫌だよぉ……」
美緒の口からその言葉が漏れ、嗚咽と共に涙が溢れ、孤独になるという恐怖、遺されるという絶望、その様々な感情が溢れ出てくる。美緒はただ独り泣き続けた……もっとも聞かれたくない人物に聞かれながら
時間を遡り、一夏が女子達とビーチバレーを終えた後のことだった。一人で森林内に入っていく美緒を見かけた。
「(何をしに入っていくんだ……?)」
一夏は興味本位で後をついていく……後悔をするとも知らずに
森林の奥深くに美緒はゆっくりとした歩調で進んでいく、何も知らない人が見れば森林浴をしていると見えるだろう、一夏もそうだった。
「(森林浴か……?)」
「――――……―――――……」
「(何だ?)」
美緒はとても小さな声でぶつぶつと独り言を言っていた。だが歩みを止めて美緒はそのまま蹲った。
「(美緒……?)」
「遺されるのは嫌だよぉ……」
一夏の耳に美緒の声が聞こえた。
「(遺される?どういう事だ?)」
「どうして……普通の女の子に……産まれなかったの……?」
美緒の独り言に一夏の疑問は大きくなる。
「どうして私は……
「(不老不死!?どういう事なんだ!?)」
一夏は美緒の言葉に動揺して近くにあった小枝を踏んでしまい、音を立てた。美緒はその音のした方に向くと一夏と目が合う。美緒はサッと顔色を青くしてその場から逃げ出す。
「待てよ!美緒!」
一夏は慌てて美緒を追いかけるが『
~夜大宴会場~
あれから一夏は美緒に避けられていた。幾度と無く一夏が話しかけようとすると目を伏せてそのまま通り過ぎ去ってしまう。
今でも美緒は離れた場所で一人で夕食を取っていた。
「(今しかないか……)」
意を決して一夏は立ち上がる。
「あれ?一夏。どうしたの?」
「ああ、美緒の所にな」
一夏はそう言って美緒が座っている所に向かう。
「美緒」
一夏は美緒に声をかけるが美緒は無視をして立ち上がり、そのまま大宴会場を出ようとする。
「まてよ!美緒!」
一夏は美緒の手を掴む。周りの女子は騒ぐが一夏と美緒には関係無い
「話したいことがあるんだが」
「話すことなんて……ないよ」
美緒はそう言って一夏の手を振り払おうとするが何故かそれが出来なかった。
「いくぞ」
一夏はそう言うと美緒の手を握ったまま大宴会場を後にした。
そして一夏と美緒は海岸に来ていた。
「離してよ……一夏ぁ……」
「いいや、離さないぞ。美緒が話してくれるまでな」
一夏の強い意志に美緒はたじろぐ。
「なぁ、美緒。そんなに俺に話したくないことなのか?」
「そう……だよ……一夏にだけは聞かれたくなかったのに……」
美緒はそう言って俯く
「一人で抱え込むなよ……ロクなことにならないからな」
「言えないよ……絶対……」
「そうだな……不老不死なんて言えないよな」
一夏はそう言って美緒の頭に手を乗せて撫でる
「あ…………」
「だけど俺は聞いちまったんだ。この事は誰にも言わない。だから俺にも背負わせてくれ。美緒が持つその重い荷物を」
ドクンッ!と美緒の胸が跳ね上がる。
「嫌いに……なったり、気味悪がらない……?」
「あぁ、ならない。絶対にな」
一夏がそう言ってまた美緒の頭を撫でる。
「うん……じゃあ話すよ……『
美緒は一夏に話した。不老不死の原因を包み隠さず全てをそれを聞き終えた一夏は納得した顔をしていた。
「これが……『
「そうか……」
「ねぇ……一夏……」
美緒は一夏を上目遣いで見つめる。
「なんだ?」
「私は……人を好きになって良いのかな?」
「当然だろ」
美緒の問い掛けに一夏は当然のことだと答える。
「なら一夏……」
「ん?」
「ここでキスをして……?」
「はぁ!?」
美緒の突拍子も無い言葉に一夏は素っ頓狂な声を上げる。
「好きになって良いんだよね……?だったら……一夏がその証明になって……」
美緒の目から涙が零れ落ちる。
「私は……一夏が好き……友達としてではなく……幼馴染としてでもなく……一人の……女の子として」
突然の美緒の告白に一夏は紅くなる。
「俺は……まだ恋ってのが判らない……それでもいいか?」
「うん……これから……判っていこう?私と一緒に……ね?」
「あぁ……」
自然と二人は沈黙する。そして自然と二人の顔が近付き、もう少しで触れようとした所で乱入者が現れる。
「こらぁ!一夏ぁ!美緒!何やってんのよ!!!」
鈴音の怒声が聞こえ、二人がその方向を見る。
「一夏さん……?何をしてらっしゃるのかしら?」
「一夏……貴様……!」
「一夏は何をしてるのかなぁ?」
「貴様は私の嫁だ……浮気は許さんぞ」
セシリア、箒、シャルロット、ラウラの姿があった。
「あー……俺死んだか?」
そしてセシリア、鈴音、シャルロット、ラウラはISを展開して箒は真剣を鞘から抜く。
「「「「一夏……美緒……」」」」
「一夏さん……美緒さん……」
「「「「「覚悟は出来てるな?/よね?/わね?/ますわね?」」」」」
五人とも禍々しいほどのオーラを発して二人に向かって走り出した。だが箒はISと並走しており、本当に人間かと問いかけたくなる。
「あははは……俺死んだな」
「大丈夫、一夏を死なせないよ」
美緒はそう言って一夏を所謂お姫様抱っこで抱える。
「ちょっ!美緒!?」
「いくよ?一夏♪」
美緒は走り出す。一夏を抱えながら、だがその顔は先程の暗い悲しそうな顔ではなく。満天の星空のような笑顔だった。