IS~インフィニットストラトス~ Noblesse Oblige   作:白姫彼方

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幼馴染の実家と楽しい時間と

~織斑宅前~

 

「一夏の家に行くなんて何年ぶりだろうね?」

 

八月が終わりに近いある日の事、美緒は一夏の家の前に来ていた。その手には高級和菓子店の紙袋が握られていた、ちなみに中身は抹茶羊羹だ。

あの後、一夏達はすんなりと受け入れた。やはり一夏と一緒に居られるのが一番の理由らしかった、一夏の場合は見知らぬ所で実験動物(モルモット)になるよりかは良いらしかった。箒の場合はあの後、千条院家に所属する事を決めた、その結果、8人の専用機持ちが千条院家に所属することになった。

 

「さてと♪」

 

ピンポーンと呼び鈴が鳴り、少しすると一夏が出てきた。

 

「お、美緒だ。どうしたんだ?」

「遊びに来たよ♪」

「おう、中に入ってくれ。立ち話もなんだしな」

「お邪魔しま~す♪」

 

一夏に案内されて美緒が入ると、そこには箒、鈴音、セシリア、シャルロット、ラウラが居た。5人は美緒を見て驚いている。

 

「やっ♪皆揃ってるね♪」

「み、美緒!?どうしてここに!?」

 

鈴音の言葉が意外だった様で、美緒は小首を傾げる。

 

「んん?鈴ちゃんは可笑しなことを言うね?私だって一夏の家に来ることはあるよ?」

 

美緒はそう言いつつ、一夏に紙袋を渡す。

 

「はい、一夏♪お土産だよ♪中に羊羹と茶葉が入ってるから気をつけてね」

「おう、ありがとうな」

 

一夏はそう言って、紙袋から羊羹が入った箱を取り出して、冷蔵庫に入れ、茶葉が入った袋を戸棚に仕舞った。

 

「美緒は昼飯食ったのか?これからざるそばを食べるんだが一緒に食うか?」

「あ、お願いしようかな?」

「おう、ちょっと待っててくれ」

 

そう言って一夏はキッチンに行き、ざるそばを作り始める。

 

「けど皆はどうして一夏の家に?」

「そ、それはだな……」

「今日、偶然にヒマになったからだ」

「……なるほどね、そういう事にしておいてあげる♪」

 

箒とラウラの言葉で直ぐに察知した美緒は5人の顔を見ながら微笑んだ。実際美緒を除く全員が『来ちゃった♪』というのをやりたかっただけだった。そして6人できゃいきゃいと話していると、一夏が7人分に分けたざるそばを持ってくる、美緒は直ぐに立ち上がり、4人分を一夏から受け取り、並べる。そして一夏は座り、全員でざるそばを食べ始める。

 

「しかし、来るなら来るで誰か一人くらい事前に連絡くれよ」

「仕方ないだろう、今朝になってヒマになったのだから」

「そうよ。それとも何?いきなりこられると困るわけ?エロいものでも隠す?」

「わ、わたくしは、ケーキ屋さんに寄っていて忙しかったので」

「ご、ごめんね。うっかりしちゃってて」

「ちなみに私は突然やってきて驚かせてやろうと思ったのだ。どうだ、嬉しいだろう」

「私はヒマだったからのと、久し振りに一夏の家に行こうと思ったからだね」

 

ざるそばを食べながら会話をして、それぞれが食べ終わると一夏が片付け始める。

 

「お茶でも入れるからちょっと待っててくれ」

「あっ、僕も手伝うよ」

「私も手伝うよ、一夏」

「ん?そっか、客なのに悪いなシャル、美緒。それじゃあテーブルの片付けを頼む」

「あいさ♪」

「うん♪任せて」

 

後片付けを手伝い始める美緒とシャルロットに危機感を覚えた鈴音とセシリアは同時に立ち上がった。

 

「あ、あたしも手伝うわよ!」

「ほ、本来ならわたくしの役目ではありませんが、ここは力を貸して差し上げますわ!」

「いや、4人いても仕方ないし、鈴とセシリアは休んでてくれよ」

「むっ……」

「で、でもっ……」

 

食い下がろうとする2人だったが、あんまりしつこくするのは逆効果だと思い、引き下がると同時にソファに掛け直す。

ちなみに4人がけのソファには鈴音、セシリア、シャルロット、ラウラが座り、一夏、箒、美緒はクッション座布団で床にいるという座席配置だった。

 

「これ、洗っちゃっていいのかな?」

「おう。そこのスポンジと洗剤で頼む。なんか悪いな、洗い物までさせて」

「いいよいいよ。僕こういうの得意だし、その……好きだし」

ほんの少しだけ好きという単語を強く言うシャルロットだったが、さすがにあからさまな言い方をするのは恥ずかしかったようで、結局口から出た言葉はほとんどわからない程度の違いしかなかった。

ちなみにだが、美緒にはしっかりと聞こえていた。

 

「(良かったね……。一夏、私なんかより魅力的な子に好かれてるよ……)」

 

美緒はそう思いつつ、お湯を沸かしていた、そして目的の温度に沸かしたお湯を急須に入れて湯呑みにも別のお湯を入れて急須と湯呑みを暖める。

そして入れたお湯を全て捨て、茶葉を急須に入れてお湯を注ぎ、蒸らす。

蒸らした茶葉から出たお茶を、湯呑みに淹れて運ぶ、そして全員が座り、寛ぐ。

 

「やっぱ食後は緑茶だな。はー、落ち着く」

「ふふ♪緑茶にして正解だね。それに、昔から一夏のこだわりは変わってなかったし」

「よく覚えてたな……まぁそれで、この後はどうしたもんかな。うちはあんまりみんなで遊べるものとかないぞ」

「まー、そういうだろうと思って、あたしが用意してきてあげたわよ。はい」

 

そう言って鈴音が一夏に渡した紙袋には、様々なカードゲームやボードゲームが溢れていた。

 

「おー。そういや鈴はこういうの好きだったな」

「そりゃそうよ、勝てるもん」

「その代わりテレビゲームだとかなり弱いけどね♪」

「美緒は余計なことを言わない!」

いふぁい(痛い)いふぁい(痛い)ひょ~(よ~)うぃんふぁん~(鈴ちゃん~)

 

きゃいのきゃいのとみんなで騒ぎながら、何をやるか決める。決まったのはバルバロッサというドイツ発祥のゲームだった。

このゲームのルールを説明し、経験者である一夏、美緒、鈴音は最初説明役に回ると言うことでゲームが始まった。

こねこねこねこね……。

 

「できたっ」

「それじゃ、スタートね」

 

シャルロットからサイコロを振り、ゲームが開始される。

 

「えーと、一、二、三、と」

「あ、宝石を得ましたわ」

「私は……質問マスか。よし、ではラウラの粘土に質問するぞ」

「受けて立とう」

「ちなみに回答は『はい』、『いいえ』、『どちらでもない』よ。『いいえ』を出されるまで質問できるから、最初は大分類ではじめるとお得ね」

「補足だけどさっき配った、黒い石を使って答えに割り込むことが出来るからね」

 

鈴音と美緒の説明を聞きながら、ふむふむと箒が頷く。そして再度、ラウラの粘土を見る。

その粘土は『ゴゴゴゴ……』と静かな威圧を放っている円錐状のなにかで、まったく見当が付かない。

実際、ラウラ以外の全員が『あれは何だ?』と気になっていた。

 

「それは地上にあるものか?」

「うむ」

「よし……。では、それは人間より大きいか?」

「そうだ」

 

ということは、道具の類ではない。しかし、人間より大きいというとかなり限定されてくるはずなのだが、まだ全員がわからなかった。

 

「それは都会にあるものか?」

「どちらともいえないな。あると言えばあるが、ないと言えばない」

 

この答えでさらに全員が頭を悩ませた。特に、ほぼ全員が東京タワーだと思っていたので、この回答は混乱しか生まれなかった。

 

「人間の作ったものか?」

「ノーだ」

「はい、質問終了。箒はこのまま回答できるけど、する?」

「う、うむ。そうだな。外しても失点はないようだし、答えよう」

 

正式なルールの場合は紙に書いて製作者だけが見るのだが、今回はあくまでお試しゲームなので回答情報を全員で共有するというルールに鈴が変更した。

 

「じゃ、答えをどうぞ」

油田(ゆでん)だ!」

 

ずびしっ!物体を指差して箒が答える。

 

「違う」

 

がくっとうなだれる箒だったが、一夏を含め全員が「なぜ油田?」と箒の回答にもちんぷんかんぷんの顔をするのだった。

そんなこんなでゲームは進み、中盤を過ぎる。

 

「そろそろ正解しないと、当てられた人も得点入らないよ?」

 

ちなみにシャルロットの作った馬はすぐに当てられてしまい、本人に得点は入らなかった。このあたりの進行時点での正解による得点がバルバロッサの特徴であり、ベストなのは『そういわれればそう見えるような』造形である。中盤で正解されることにより、正解者だけではなく製作者にも得点が入るというルールなのだ。

ちなみに箒の作ったものは「井戸」だった。かなり分かりにくいものだったが、シャルロットの質問がうまかったこともあり、ベストタイミングで正解している。

そして、問題はラウラとセシリアの二強である。

ラウラは相変わらず謎の円錐物体、セシリアは謎の細胞体のようなものをそれぞれ誇らしげに見せていた。

 

「そ、それは、食べ物?」

「違いますわ?」

「それはビルより小さいのか?」

「いや、巨大だ」

 

すでに自分の粘土が当てられている箒とシャルロットは、とにかくラウラとセシリアが何を作ったのかを必死で考えては質問をするが、かすりもしない。

そうこうしていて、とりあえずのお試しゲームは終了となった。

 

「で、ラウラ、これはなんなんだ?」

 

ずっと訊きたくて仕方がなかった一夏が早速口を開く。

 

「何?わからんのか。嫁失格だぞ」

「いやまあ、それはいいから。答えは?」

「山だ」

 

ラウラの予想外すぎる答えを聞いて全員が固まる。

 

「は?」

「山だ」

 

二回、同じ言葉を繰り返すラウラ。

 

「いやいや待て待て!こんなに山は尖ってないだろ!」

「むっ……。失礼なことを言うやつだな。エベレストなどはこんな感じだろう」

「それならエベレストに特定しねーとわかんねーって!」

「エベレスト以外にもこういう山はある」

 

あくまで自分の粘土に問題はないというラウラは、腕組を崩さない。

 

「ま、まあ。ラウラ。正解されなかったから減点だね。それでセシリィのは?」

「あら。誰もわからないのかしら?」

 

わかっていたら正解してるっつーの、という言葉を一夏、美緒、鈴音は飲み込む。

セシリアはもったいつけるように全員を一瞥して、それから右手を広げて大々的に言った。

 

「我が祖国、イギリスですわ!」

「「「…………」」」

 

全員が沈黙。ちなみにこれまでの回答一覧は『潰れたジャガイモ』『原初細胞体』『ぐちゃぐちゃのピザ』『藻』『ボロ布』『ケガをした犬』『ジャンプ中の猫』。

 

「まったく、みなさんの不勉強には驚きますわ。一日一回世界地図を見ることをおすすめしますわ」

 

『イギリスの形を知らないわけじゃねーよ!』とは、全員が言いたい反論だったが、黙っていることにした。ラウラ以上に自分の造形物に自信満々のセシリアを見ると、逆にそんなツッコミは野暮だという発想まで出てくるから不思議である。

 

「ま、まあ!大体のルールはわかったよね?次からは鈴ちゃんと一夏も入ってやるよ」

「美緒はやらないの?」

 

美緒の言葉にシャルロットが問いかける。

 

「私はいいよ、みんなでやって?私はそれだけでも十分楽しめるから」

 

美緒の言葉を聞いた一夏は誰にも気づかれない様に眉を顰める、その言葉の真意に気付いたのは一夏だけだった。

そうして第二回戦が始まり、楽しい時間を全員が過ごしていった。

美緒の瞳の奥に哀しみを宿しているのも知らずに

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