IS~インフィニットストラトス~ Noblesse Oblige   作:白姫彼方

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第五巻
幼馴染と生徒会長と


~第三アリーナ~

 

「でやああああっ!!」

 

ガキィンッ!と鋭く重い金属音を響かせ、一夏と鈴音は刃を交えて対峙する。

九月三日。二学期初の実戦訓練は、一組二組の合同ではじまった。

 

「くっ……!」

「逃がさないわよ!一夏!」

 

クラス代表者同士ということではじまったバトルは、最初から互角であった。

その理由は『白式』のエネルギー問題が解決し、より攻撃回数が増えたのもあるが、『神龍』の攻撃のバリエーションも増え、火力が上がった為でもある。

一夏が『雪月』を射出すれば、鈴音も『龍砲』を射出し、『雪月』を撃ち落とそうとするが、別の『雪月』によって斬り落とされる。

始めは形状の変わった『白式』と『甲龍』の発展強化機体『神龍』を見て、千冬は美緒に問い詰めた。

美緒は素直に箒以外全員の機体を強化したことを告げると千冬は納得したような表情をする。

そうしているうちに一夏と鈴音の決着が着いた。

 

「1勝1敗ね。それにしても腕を上げたわね、一夏」

「まぁな、これも全て美緒のおかげだな」

「私はただ一夏達のISを強化しただけであって、それを物にした一夏達のがんばりがあったからだよ」

 

美緒はそう言って、お茶を啜る。美緒が食べていたのは月見蕎麦だ。

一夏は少し照れながらも鯖の味噌煮を食べる。

 

「ラウラ、それおいしい?」

「ああ。本国以外でここまでうまいシュニッツェルが食べられるとは思わなかった」

 

相変わらずシャルロットと仲が良いラウラは、その皿に盛られたドイツ料理の仔牛のカツレツ(シュニッツェ)を一切れ切り分ける。

 

「食べるか?」

「わあ、いいの?」

「うむ」

「じゃあ、いただきます。えへへ、食べてみたかったんだ、これ」

 

ラウラから分けてもらったシュニッツェルを頬ばって、シャルロットはぽわぽわと幸せそうなオーラを発しながら幸せそうな顔をする。

 

「ん~!おいしいね、これ。ドイツってお肉料理がどれもおいしくていいね」

「ま、まあな。ジャガイモ料理もおすすめだぞ」

 

故郷のことを褒められて嬉しいのか、ラウラの顔は赤い。

そんな様子を見ていると他の女子も加わりたくなったらしく、早速料理談義に花が咲いた。

 

「あー、ドイツってなにげに美味しいお菓子多いわよね。バウムクーヘンとか。中国はあんまりああいうの無いから羨ましいかも」

「そうか。では今度美緒に頼んでフランクフルタークランツを作るとしよう」

 

フランクフルタークランツとはリング形の王冠のような形をしたケーキで、全体がバタークリーム(もしくはジャムかゼリー)で塗られ、上部はクロカンと呼ばれるクルミ入りのカラメルで覆われている。

ちなみに名称は、ドイツ語で都市Frankfurt(フランクフルト)と花輪を意味する Kranz(クランツ)に由来する。

 

「ドイツのお菓子だとわたくしはあれが好きですわね、ベルリーナー・プファンクーヘン」

 

そういったのはセシリアだったが、シャルロットはきょとんとして聞き返す。

 

「えっ、ベルリーナー・プファンクーヘンってジャム入りの揚げパンだよね?しかもバニラの衣が乗ってるからカロリーすごいと思うけど……セシリアはアレが好きなの?」

「わ、わたくしはちゃんとカロリー計算をするから大丈夫なのですわ!そう、ベルリーナーを食べるときはその日その他に何も口にしない覚悟で……」

「ジャム入り揚げパンか、確かにうまそうだ」

「セシリア、揚げパンが好きなら今度ゴマ団子作ってあげよっか?」

「それはどんなものですの?」

「中国のお菓子よ。あんこを餅でくるんでゴマでコーティング。その後、揚げるの」

「お、おいしそうですわね!ああ、でも、カロリーが……」

「ま、食べたくなったら言ってよ」

「鈴さん……思っていたよりいいひとですわね……」

「思っていたよりってなによ!思っていたよりって!」

 

相変わらず、鈴音・セシリア組は仲が良い

 

「私は日本の菓子が好きだな。あれこそ風流というのだろう?」

「春は砂糖菓子、夏は水菓子とくれば秋はまんじゅうだな」

「ほう。冬は?」

「せんべいだ」

「私はミルフィユかな。作る所で色々な作り方になるから好きだね」

「あら?美緒さんはイギリスのお菓子が好きですの?」

「ミルフィユはフランスのお菓子でもあるよ?セシリア」

 

きゃいきゃいと7人でお菓子談義で盛り上がる女子達を見ながら、一夏は考え事をする。

 

「(もっと、もっと強くならねぇと……誰にも負けないように……)」

 

一夏はそう決意をした。

 

「やっぱり無駄に広いもんだ……」

 

場所は変わり、一夏専用となっているロッカールームは、ただただ静かであった。

一夏はISスーツを着ると、『白式』のコンソールを呼び出して調整をはじめた。

 

「(やっぱり美緒に頼んで正解だったな。エネルギーバランスがここまで整ってるなんてな)」

 

そんなことを考えていると、突然目の前が真っ暗となった。

 

「!?」

「だーれだ?」

 

一夏の背中から聞こえた声は同級生よりも大人びている。そのくせ、楽しさがにじみ出ているような笑みを言葉に含んでいて、イタズラを楽しむ子供のようにも聞こえた。

 

「はい、時間切れ」

 

一夏は声の主を確認しようと振り向く。

 

「……誰?」

「んふふ」

 

一夏はその女子のリボンを見ると、リボンの色が二年である黄みが強い黄緑色だ。その女子は一夏の困惑する顔を楽しそうな笑顔で眺めつつ、どこから取り出したのかひとつの扇子を口元に持っていく。

 

「あの、あなたは―――」

「あっ」

 

その女子は一夏の後ろに視線をずらす。一夏も視線を後ろにずらすと。

 

「引っかかったなぁ♪」

 

むにっと頬を扇子で押される。

 

「………………」

「それじゃあね。キミも急がないと、織斑先生に怒られるよ」

「え?」

 

一夏は嫌な予感がして、壁の時計を見る。……授業開始時間から3分が過ぎていた。

 

「だあああっ!?や、やばい!まずい!」

 

もう一度元凶の人物を見ると、もうそこには誰もいなかった。

一夏は遅刻し、高速切替(ラピッド・スイッチ)の的となったのだった。

 

翌日。SHRと1限目の半分を使って全校集会が行われた。内容はもちろん、今月中程にある学園祭についてである。

 

「それでは、生徒会長から説明させていただきます」

 

静かに告げたのは生徒会役員の1人だろう。その声で、ざわつきが消えていった。

 

「やあみんな。おはよう」

「!?」

 

壇上で挨拶をしている女子。2年のリボンをしたその人、昨日ロッカールームに現れた人物だった。

 

「ふふっ」

 

一夏と一瞬だけ目が合い、笑みを浮かべられる。

 

「さてさて、今年は色々と立て込んでいてちゃんとした挨拶がまだだったね。私の名前は『更識楯無(さらしきたてなし)』。君たち生徒の長よ。以後、よろしく」

 

にっこりと頬笑みを浮かべて言う生徒会長は、異性同性を問わず魅了するらしく、列のあちこちから熱っぽいため息が漏れた。

 

「では、今月の一大イベント学園祭だけど、今回に限り特別ルールを導入するわ。その内容というのは」

 

閉じた扇子を慣れた手つきで出し、横へとスライドさせる。それに応じるように空間投影ディスプレイが浮かび上がった。

 

「名付けて『各部対抗織斑一夏争奪戦』!」

「え………」

「ええええええええ~~~~~!?」

「静かに。学園祭では毎年各部活動ごとの催し物を出し、それに対して投票を行って、上位組は部費に特別助成金が出る仕組みでした。しかし、今回はそれではつまらないと思い――――」

 

びしっ、と扇子で一夏を指差す

 

「織斑一夏を、1位の部活動に強制入部させましょう!」

 

雄叫びが上がる直前、怒声が響き渡る。

 

「巫山戯るのも大概にしなさい!更識楯無!」

 

その怒声の発信源は美緒であった。

 

「何か文句でもあるのかしら?」

「あるよ?一夏の人権、意志を無視した行動……私は許さないよ」

「生徒会長の命令だとしても?」

「だからなに?学園最強程度(・・・・・・)で何を偉そうに……」

 

美緒の見下した物言いに楯無はカチンとくる。

 

「随分と偉そうに言うけど、貴女は誰だったっけ?」

「随分と記憶力がないみたいだね。ロシア代表(・・・・・)は」

「!!」

「それに……千条院家を敵に回すでいいみたいだね……ロシアと更識家は」

「なっ!!じゃあ、貴女は!!!」

「そうだよ?やっと思い出した?更識家当主17代目の楯無さん?」

 

美緒はそう言って、壇上に上る。教員はそれを止めようとするも、美緒から発せられる覇気に萎縮して、とめられなかった。

 

「この場を借りて、生徒会長である更識楯無に『各部対抗織斑一夏争奪戦』を撤廃する公式試合を申し込みます!」

 

美緒の言葉に先程以上の驚きの声が上がったのだった。

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