IS~インフィニットストラトス~ Noblesse Oblige 作:白姫彼方
~1-1教室~
楯無と美緒の公式試合から数刻経った放課後の特別HR。今はクラスごとの出し物を決めるため、わいのわいのと盛り上がっていた。
「えーと……」
クラス代表として、一夏は意見をまとめる立場にあるのだが―――
「(内容が『織斑一夏のホストクラブ』『織斑一夏とツイスター』『織斑一夏とポッキー遊び』『織斑一夏と王様ゲーム』……って、あのなあ)」
一夏は頭を抱える。このクラスの常識人(?)の一夏と美緒は溜息をつく。
「却下」
えええええー!!と大音量サラウンドでブーイングが響く。
「あ、アホかー!誰が嬉しいんだ、こんなもん!」
「私は嬉しいわね。断言する!」
「そうだそうだ!女子を喜ばせる義務を全うせよ!」
「織斑一夏は共有財産である!」
「他のクラスから色々言われてるんだってば。うちの部の先輩もうるさいし」
「たすけると思って!」
「メシア気取りで!」
一夏の抗議にクラスメイト達はさらに抗議をする。一夏は助けを求めるも教室には既に千冬はいなかった、『時間がかかりそうだから、私は職員室に戻る。あとで結果報告に来い』と言い残していったのだ。
「山田先生、ダメですよね?こういうおかしな企画は」
「え!?わ、私に振るんですか!?え、えーと……。うーん、わ、私はポッキーのなんかいいと思いますよ……?」
やや頬を赤らめながら言う副担任・山田真耶先生はどうやら地雷のようだ。
「とにかく、もっとまともな意見をだな!」
「メイド喫茶はどうだ」
そう言って来たのは、意外にもラウラだった。
一夏だけでなく、クラス全員がぽかんとしている。
「客受けはいいだろう。それに、飲食店は経費の回収が行える。確か、招待券制で外部からも入れるのだろう?それなら、休憩場としての需要も少なからずあるはずだ」
いつもと同じ淡々とした口調だったが、あまりに本人のキャラにそぐわない言葉だったため、一夏もクラス全員も理解に時間を要した。
「え、えーと……みんなはどう思う?」
「いいんじゃないかな?一夏には執事か厨房を担当してもらえばオーケーだよね」
そう言ったのはシャルロットだった。ラウラの援護射撃と思われるそれは、見事一組女子全員にヒットする。
「織斑君、執事!いい!」
「それでそれで!」
「メイド服はどうする!?私、演劇部衣装係だから縫えるけど!」
「(まあ、変わった衣装の喫茶店だと思えばいいか)」
「メイド服ならツテがある。執事服も含めて貸してもらえるか聞いてみよう」
そう言ったのは、またしても意外な人物―――というか、ラウラだった。
え?と全員が目を丸くする中、ハッと気がついて咳払いをする。
「―――ごほん。シャルロットが、な」
「え、えっと、ラウラ?それって、先月の……?」
「うむ」
「き、訊いてみるだけ訊いてみるけど、無理でも怒らないでね」
不安げにそう告げるシャルロットに、クラスの女子は声を合わせて『怒りませんとも!』と断言する。
かくして、1年1組の出し物はメイド喫茶改め『ご奉仕喫茶』に決まった。
「……というわけで、1組は喫茶店になりました。」
職員室。一夏は千冬の元でクラス会議の報告をしていた。
「また無難なものを選んだな。―――と言いたいところだが、どうせ何か企んでるんだろう?」
「いや、その……コスプレ喫茶、みたいなものです。はい」
「立案は誰だ?田島か、それともリアーデか?まあ、あの辺の騒ぎたい連中だろう?」
「えーと……」
にやにやしている千冬に本当のことを言うのが若干躊躇われるも、意を決して言うことにした。
「ラウラです」
「………………」
きょとんとする千冬は二度まばたきをして、盛大に吹きだした。
「ぷっ……ははは!ボーデヴィッヒか!それは意外だ。しかし……くっ、ははっ!あいつがコスプレ喫茶?よくもまあ、そこまで変わったものだ」
「やっぱり意外……ですか?」
「それはそうだ。私はあいつの過去を知っている分、おかしくて仕方ないぞ。ふ、ふふっあいつがコスプレ喫茶……ははっ!」
それからひとしきり笑って、千冬は目尻の涙を拭う。そんな千冬の反応は、職員室の先生方にとってもかなり意外な光景だったらしく、みんな目をきょとんとさせて眺めていた。
「ん、んんっ。―――さて、報告は以上だな?」
「はい。以上です」
「ではこの申請書に必要な機材と使用する食材などを書いておけ。1週間前には出すように。いいな?」
「(うっ、めんどくさそうだ……)」
「い・い・な?」
「は、はいっ」
「織斑、学園祭には各国軍事関係者やIS関連企業など多くの人が来場する。一般人の参加は基本的にyは不可だが、生徒一人につき1枚配られるチケットで入場できる。渡す相手を考えておけよ」
「あ、はい」
そんなこんなで千冬への報告は終わり、一夏は礼をして職員室を出た。
所変わり寮の屋上にて、美緒は連絡を取っていた。
「なるほどね……それと『
『―――、―――、―――。―――』
「意外と多いね……解ったよ。それと、例の事を聴いてみる。また後で」
美緒はそういうと、電話を切り、再度別の相手に繋げる。
『はろはろ~♪み~ちゃん。どうしたの~?』
その相手は束だった。その場には束はいないのに、表情を引き締める。
「実はね、ISでの実戦戦闘についてなんだけど……」
『みーちゃん。それは駄目だって、前にも束さんは言ったけど?』
「どうも、そうは言ってられなくなりそうだよ」
『どういうことかな?』
「どうやら亡霊達のお人形さん達が近々大きな祭りを仕掛けるみたい」
『大きな祭り?……どういうことかな?』
美緒の言葉に束は不審がる。
「どうやら、戦争を起こすみたい……第二次世界大戦よりも大きな」
『!!……なるほどね……対抗する為にってところかな?』
「うん……それもあるけど、一番は一夏や箒ちゃん達を守る為に……」
『みーちゃんはその中に含まれてないの?』
「私は恐らくこのお祭りの時に……」
『みーちゃん?』
急に黙った美緒を束は心配そうに声をかける。
「私は今回の戦争で命を落とすかもしれない」
『―――っ!?みーちゃん!』
美緒の発言に束は慌てるも、美緒は続ける。
「それでも……私はあの子達に生きてもらいたい……それに、私にはもう未練がないから」
『みーちゃん……どうしてそんなことを……?』
「私の夢が叶ったからだよ……一夏との子供を生すって言うね」
美緒の言葉に束は息を呑む……唐変木と言われる一夏の子供ができると言われたからだ……それだけではないが、一夏と自身の子供を生したのが美緒の夢と言ったのにも、束は驚いた。
『そのことをいっくんは……』
「当然知らないよ……一夏には余計な重荷を背負わせたくない……なにより一夏には絶対知らせちゃいけないことだから……」
『どうしてなのかな?その根拠は?』
「私との間に子供が出来たと知ったら……一夏はその子を育てると言い出すかもしれない……ううん。絶対そう言い出すよ。でもね、一夏には自由に生きて欲しい。私の勝手だけど……ね、だから新しく産まれて来る子には、一夏が父親と言うことは伏せておきたいから……一夏に恋するあの子達に一夏との愛を育んで欲しい……生体兵器である私の唯一つの夢でもあり、欲望でもあり、我侭だよ」
『……わかった、ISでの実戦戦闘を許可するよ……その代わり!』
束は少し大きな声で言う。
『必ず生きて帰ってくること!それが絶対条件だよ!』
「解った……有難うね……束お姉ちゃん」
美緒はそう言って電話を切った。美緒が空を見ると既に夕焼けが無くなり、宵闇に変わろうとしていた。