IS~インフィニットストラトス~ Noblesse Oblige   作:白姫彼方

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幼馴染と服従と第三形態移行

~更衣室~

 

「着きましたよ」

「はぁ、はぁ……。ど、どうも……」

 

一夏は誘導されるまま、セットの下をくぐり抜けて更衣室へとやってきた。最初に一夏が使った側の部屋だった。

 

「えっと……どうして巻紙さんが……」

「はい。この機会に『白式』をいただきたいと思いまして」

「……は?」

「一夏!そこから離れて!」

 

突然、美緒の声が聞こえたかと思うと、一夏の体が横に飛ばされる。

 

「ちぃっ!もう感づいたか!」

「やっと出てきたね、亡霊さん(・・・・)?それともオータムと呼べばいいかな?」

「くそがっ!まぁいい、お前らのISを奪ってやる!」

 

巻紙と一夏に呼ばれ、美緒にオータムと呼ばれた女性の背後から爪が飛び出す。それもクモの脚によく似たそれは、美緒に向かって振り下ろされる。

 

「っ!美緒!」

 

美緒が返事をするよりも早く、美緒はそのクモの脚に似た物をひとつ蹴り、その場から離れる。

 

「一夏、早く『白式』を展開して!」

「ああ、解かった!」

 

一夏が美緒に返事をし終わると同時に2人は『白式』と『アルテミス』を展開装着し終える。

 

「くらえ!」

 

背中から伸びた8つの装甲脚の先端が開き、銃口を見せる。

美緒は横に一夏は真上に跳ぶ、オータムは一夏に狙いを定めたようで、真上に撃とうとする。だが、美緒がそうさせるはずも無く、右腕の『月光零式』を展開して、左の装甲脚4本のうち、上段の2本を斬り飛ばす。

一夏は天井に足をつき、スラスターを吹かして前転気味に懐へ飛び込む。

それと同時進行で構築した『雪片弐型』を右手に握り締めて、斬りかかった。

 

「(もらった!)」

「甘ぇ!」

 

2本の装甲脚に『雪片弐型』が食い込み、抜けなくなる。

 

「くそっ!」

 

押しても引いても刀身と装甲がうまく噛み合ってしまい、抜けなかった。

オータムはその手にマシンガンを構築、一夏に向かって弾丸を放つ。

 

「ぐうっ!」

 

何発かシールドバリアーを貫通した弾丸が、一夏の体に断続的な衝撃を伝える。

 

「一夏!」

 

美緒は背後から『雪片弐型』が食い込んでいる装甲脚を斬る。

それによって、一夏はウィング・スラスターを逆噴射し、後方宙返りをする。

オータムはその場から離れ、残った装甲脚から銃口を出し、美緒と一夏に弾丸を放つ、その銃撃を2人は避ける。

 

「そうそう、第2回モンド・グロッソでお前を拉致したのはうちの組織だ!感動のご対面だなぁ、ハハハハ!」

「―――!!」

 

その言葉に一夏の頭は沸点を一瞬にして超える。

 

「だったら、あの時の借りを返してやらぁ!!」

「クク、やっぱガキだなぁ、てめえ。こんな「へぇ……そうだったんだ?」ぐぅっ!!」

 

オータムの言葉に沸点を超えたのは何も一夏だけではなかった。

美緒はオータムの首を掴み、地面に叩き付けた。

ガゴンッ!!と鈍い音がして、更衣室の床とオータムのISが凹む。

 

「さぁ……全て吐いて貰おうか?本部及び拠点は何処?」

「だ、だれが……」

「言わないのであれば……」

 

首を掴んでいる腕の力を少し込める。それによって、オータムの顔色が悪くなる。

 

「どうする?言う?言わない?」

「いうものかぁ……!」

 

オータムは全力で美緒を蹴り、拘束を逃れる。

 

「かはっ!はぁ……はぁ……くそっ!」

 

オータムは近くにあった壁を壊し、外に出た。

 

「逃がさないよ!」

 

すぐに美緒と一夏が追いかける。だが、外に出た直後、オータムが乗っていたISが光り始める。

 

「何!?」

「一夏ぁ!」

 

美緒は一夏の前に立ち、護る様に抱きしめた。その直後に大爆発が起きた。

 

「……大丈夫?一夏」

「ああ……あの女は!?」

「まだ近くにいるよ……どうやら公園の方に向かってるみたい……掴まって!」

「おう!」

 

一夏は美緒に掴まる、美緒は『連続瞬時加速(アクセレート・イグニッション・ブースト)』を使って一気に公園についた。

 

「待ちなさい、オータム!」

「ちぃっ!しつこいガキだなぁ!?」

 

悪態をついていたオータムが不自然に転んだ。

 

「クソッ!ドイツのISだな!?」

「その通りだ、『亡国企業』」

「動くな。すでに狙撃手がお前の眉間に狙いを定めている」

「くっ……!」

「洗いざらい吐いてもらおうか。貴様らの組織について」

「!!ラウラ、離れて!」

「何!?」

 

美緒はラウラに声をかけるも、反応できず。このままでは当たると判断し、ラウラを横に蹴り、直撃を防いだ。

 

「あの機体は……『カィンフィードバックヴォンディン』!?いや……でも形状が少し違う……?」

「お久しぶりですね……お姉様」

 

そこには以前、『カィンホクキエツァ』の自爆に巻き込まれた白昼夢(さだめ)がいた。

 

「やっぱり……生きてたんだね……」

「一応『生命戦闘体(アマテラス)』なので、それにこの子は『カィンフィードバックヴォンディン(・エレバス)』……大破した『カィンフィードバックヴォンディン』を改修、発展させた機体です」

 

そして、白昼夢(さだめ)の後ろに2機のISが舞い降りる。その2機を見てセシリアと美緒が目を剥く。

 

「『サイレント・ゼフィルス』!?」

「『終焉』!?どうしてここに!」

 

『サイレント・ゼフィルス』。イギリスのBT二号機として製造されたISで、その基礎データには一号機であった『ブルー・ティアーズ』が使われている。

『終焉』。千条院家が作り出した最強にして最凶最悪のIS、千条院家が作り出した全ISの始祖機であり、乗り手の負担を一切無視した殺戮兵器とも言えるISだ。

 

「『亡国企業(ファントム・タスク)』……想像以上にやっかいなISをそろえてるみたいだね……」

「お褒めに預かり恐悦至極と言えば良いかしら?『生命戦闘体(アマテラス)Λ-11』?」

 

美緒に話しかけたのは金髪の女性だった。だが美緒は自身の製造ナンバーを言い当てられ、驚く。

 

「如何してそれを……白昼夢(さだめ)から聞いたから……か」

「ええ、そうよ。私はスコールと呼んでもらって構わないわ。エム、白昼夢(さだめ)やるわよ」

「「了解」」

 

エムと呼ばれた少女と白昼夢(さだめ)は前に出て、スコールは自身の前にコンソールを出す。

 

「So erstellen Sie eine Welt zerstören Feuersbrunst Grube fällt schwanger stand am Rande dunkel(黒き淵に佇む劫火を身に宿し奈落へ堕ちる)」

「Meine Kleider gefärbt Ihren Körper Ihren Wünschen tie Keil Kleid(欲望に塗れた私の身体を着飾る服はあなたを縛る楔)」

「Fall Einreichung(服従せよ)」

 

スコールの歌声とコンソールが絡み合い、絶望を映し出した曲想が流れ出す。それを聞いた美緒だけが動きが止まり、人間が出せないであろう声で絶叫した。

 

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!」

 

「Hinknien, um uns zu folgen Gottesdienst(我に跪き、崇め従え)」

「Wir beherrschen die deine Gebote(我は汝を支配せり)」

「Ich binde dich an meine Beine Keil nur Rednerpult(我が足を吻けよ汝を縛る楔に)」

 

美緒は何かに抗うように地面に頭を打ち付ける。それを見ていた一夏は美緒に駆け寄る。

 

「我に跪き我が聖言(ことば)を聞けや」

「深き淵罪業の燃ゆ闇」

 

「美緒!!しっかりしろ!!」

「やめっ!!いやぁぁぁぁぁ!!!」

 

一夏の言葉に反応する余裕がない美緒は涙を流しながら抗う

 

「奈落の深き底に映るは汝の」

「Um uns die wahre deinen Namen(汝の真なる名を我に)」

「Wir kennen den Namen deiner Seele(我は汝の魂の名を知っている)」

「Um uns die wahre deinen Namen(汝の真なる名を我に)」

「Wir kennen den Namen deiner Seele(我は汝の魂の名を知っている)」

「魂が真名ぞ与えよ我に」

「Um uns die wahre deinen Namen(汝の真なる名を我に)」

「Wir kennen den Namen deiner Seele(我は汝の魂の名を知っている)」

「Um uns die wahre deinen Namen(汝の真なる名を我に)」

「Wir kennen den Namen deiner Seele(我は汝の魂の名を知っている)」

 

ラウラとセシリアは美緒のその異常な行動をスコールが原因だと直ぐにわかり、突撃をするも、エムと白昼夢(さだめ)に遮られる。

 

「購えぬ傷痕(あかし)

「Akzeptanz kämpfen, folgen wir dem(足掻くな受け入れ、我に従え)」

「従属の鎖縛られる魂」

「Du bist mein Sklave(汝は我の奴隷)」

 

「一夏!今はとにかくあの女を止めるぞ!」

「解かった!」

 

一夏とラウラで白昼夢(さだめ)に接近戦を挑む、一夏は『雪片弐型』を、ラウラは『モントジッヒェル』と『モントシャイン』を展開し、両サイドから斬撃を叩き込もうとする。

だが、白昼夢(さだめ)は軽く往なす様に一夏とラウラを弾く、その際に、一夏の『雪片弐型』がばらばらに破壊された。

セシリアも、『サイレント・ゼフィルス』を巻こうとするが、偏光制御射撃(フレキシブル)によって、足止めをされる。セシリアも偏光制御射撃(フレキシブル)を使い、スコールに攻撃をするが、『サイレント・ゼフィルス』のシールド・ビットによって防がれる。

 

「その魂を縛る」

「dunkle Keil(黒き楔)」

「全てを隷属させる」

 

スコールは一呼吸の間を空ける。美緒の瞳の光が消えたり点ったりを繰り返す。

 

「Wir beherrschen die dein(我は汝を支配する)」

「Wir quälen dich Keil(我は何時を苦しめる楔となる)」

「Wir tun dir Peitsche(我は汝を傷つける鞭となる)」

「Wir dich ...(我は汝を……)」

 

「わた……認識……いやっ……服従……やめっ……マイ……助けて一夏ぁ!!!」

 

「Wir sind verrückt genug, um dich zu lieben(我は汝を狂うほどに愛している)」

「Wir schwelgen in dir(汝を我で溺れさせる)」

「Wir haben viel Liebe zu dir reißen(我は汝を引き裂くぐらいに愛している)」

「Wir werden dich töten(我は汝を殺したい)」

「Unabhängig von unseren Gehorsam(我に服従せよ)」

 

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!!!!」

 

スコールの歌声とコンソールの音が終わる直前に美緒の絶叫が響き渡り、一夏は美緒に駆け寄ろうとするが、美緒はいきなり立ち上がる。

 

「美緒。大丈夫か!?」

「……………認識」

 

美緒は一夏の声を無視して、スコールの許に向かう。

 

「『生命戦闘体(アマテラス)Λ-11』は貴女様をマスターと認識しました。ご命令を」

「お、おい美緒?何を言ってるんだ?」

 

一夏の言葉に反応したのか、美緒は一夏の方に向く、その瞳には光が宿っていなかった。

 

「そうね……じゃあ、Λ-11。織斑一夏を倒しなさい」

解かりました我が主(イェス・マイ・マスター)

「なっ!?何を言って!!」

 

一夏が言葉を発し終える前に、美緒は一夏の懐に入っていた。美緒は既に『月光零式』を展開し終えており、斬り裂こうとするが、一夏は『雪羅』をシールドモードにして防ぐ。

 

「美緒!?やめろ!」

我が主(マスター)の命令は絶対……破壊します」

 

一夏は防戦一方であり、迷いがあった。だが美緒にはそれはない、『月光零式』によって『雪羅』が打ち上げられ、隙が出来た所に美緒はもう片方の『月光零式』で一夏を斬り裂いた。

本来ならラウラかセシリアが一夏の援護をするのだが、2人は既にシールドエネルギーが0となっていて、援護が出来る状態ではなかった。

 

「がぁっ!!」

「Λ-11。そこまでで良いわ、帰るわよ」

解かりました我が主(イェス・マイ・マスター)

 

スコールが言うと、追撃しようとしてた美緒はあっさりと攻撃をやめ、スコールの許に戻る。

 

「エム、白昼夢(さだめ)、オータムも帰るわよ」

「「「了解」」」

「……返せ」

 

一夏の声が聞こえたのか、スコールは振り向く。

 

「何かしら?織斑一夏?」

「美緒を返せぇぇぇ!!」

 

――――――操縦者の劇的な感情の発露を確認、自己の改変とコアの分裂が完了しました。コアの人格を発現及び第三形態移行(サード・シフト)の条件を満たしました。第三形態移行(サード・シフト)します。

 

『白式』から巨大なエネルギーが発現し、辺りを閃光で見えなくする。

そして閃光が消え、一夏の姿を見ると、『白式』の姿が変わっていた。左腕にしかなかった『雪羅』が右腕にもついており、背中の大型ウィング・スラスターが消え、一対の白銀に輝く機械的な天使の翼が装備されていた。

 

「うおおおおお!!」

 

新しい姿になった『白式』は今までの『瞬時加速(イグニッション・ブースト)』を遥かに上回る。『瞬時加速(イグニッション・ブースト)』でスコールに迫る。だがそれは美緒によって防がれてしまう。

 

「美緒、そこをどいてくれぇぇぇ!!」

「マスターに危害を加える者は排除します」

「Λ-11。いいわ、通してあげなさい」

解かりました我が主(イェス・マイ・マスター)

 

美緒が退くと、一夏はスコールに荷電粒子砲を放つ、だがスコールは既にそこにはおらず。一夏の左腕を掴んでいた。

 

「なっ!?」

「出直してきなさい、織斑一夏」

 

スコールはそう言うと、一夏を地面に叩き付けた。

 

「がっ!!」

「エム、煙幕を張りなさい」

「……了解」

 

スコールの指示通りにエムは黒い煙幕を張る。

しばらくすると煙幕が晴れるが既に美緒の姿はなかった。そして、その場に一夏の慟哭が響き渡ったのだった。

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