セシリアと箒が『サイレント・ゼフィルス』と戦い始める丁度同じ頃に、ラウラ、シャルロット、美紗緒は、『カィンフィードバックヴォンディン・Ⅱ』と既に戦闘を開始していたが3人にとっては最悪の状況だった。その理由は白昼夢が既に三鬼神ユニットのうちの一つである『アマテラスユニット』を起動している状態であったからだ。
その姿は『アマテラスユニット』を起動させた『カィンホクキエツァ』と姿はほぼ同一ではあるものの、その機動性、火力、防御力は『カィンホクキエツァ』を遥かに上回る物だった。
美紗緒は『月光弐式』を展開して、斬りかかる。だが、白昼夢は『月光』を展開せずに美紗緒の腕を掴んでスパイクが付いた爪先で美紗緒の腹部を蹴り抜く、咄嗟に美紗緒はその脚撃を避けるが僅かに掠り、その部分の腹部から血肉がほんの少し飛び散る。
美紗緒の顔が苦痛に歪むと同時に、白昼夢の表情が狂喜に歪む。その2人の間にワイヤーブレードが割り込み、強制的に距離を開けた。
その隙を逃さない様に『セレスティアル・ヴァーミリオン』の『サンライズ』と『ガグツチ』の『思兼神』が白昼夢に殺到するも、後退しながら『レイダー』を全基射出して、迎撃に向かわせる。
それに合わせる様に美紗緒は電気式蛇腹剣『大蛇』を展開して白昼夢の両腕を拘束して高圧電流を流すが、白昼夢には効いていないようだった。
ラウラは2基の折り畳み式大型リニアキャノン『ドンナー・シュラーク』、シャルロットは突撃銃にアンダーバレルを装着した『オアシス』と『オアシス』のEN版である『デザート』を展開して白昼夢に放った。
だが、2人の放った銃撃は白昼夢に届くことはなかった。何故ならば『大蛇』を掴み、美紗緒を盾として使ったからだ。2人の銃撃を受けた美紗緒のシールドエネルギーは著しく減少する。
そして白昼夢は、自身を中心として高速回転を始める。それに引っ張られる様に美紗緒も回転し始め、外周に位置する美紗緒には多大な遠心力の負荷を掛ける。
ラウラとシャルロットは無防備な白昼夢に向けて『ドンナー・シュラーク』と『オアシス』、『デザート』を放とうとした瞬間に、白昼夢は美紗緒をラウラに向けて遠心力を利用した速度で投げつける。『PIC』で急停止を掛けるがそれでも勢いを殺しきれずにシャルロットと激突してしまう。
「シャルロット!美紗緒!」
「余所見をしている余裕があるのですか?『遺伝子強化試験体』?」
ラウラが激突したシャルロットと美紗緒を一瞬見た隙に、『月光』を両腕に展開した白昼夢は、ラウラの懐に入り込んでいた。それに気づいたラウラは直ぐに前腕部に装備されている『モントジッヒェル』と手の甲にある『モントシャイン』を両腕に展開して応戦する。
だが、人間離れをした斬撃速度によって、ラウラは追い詰められる。『視る』や『察知』するだけであるのならば、ラウラの『境界の瞳』は引けを取らないところか同等だ。
しかし『視て』、『察知』をするにしても、それに対応するのは生身の体だ、限界というものがある。だが、『生命戦闘体』の素体、『遺伝子改造素体』は卵子と精子の段階から強化と言う名の遺伝子操作を施され、産まれた時から人外の戦闘能力を持っている。
その生身からの性能差を見せ付けると共に白昼夢は笑みを浮かべ、更に斬撃の速度を上げる。
「くっ……!」
ラウラは白昼夢の笑みを見て、頭に血が上る。だがラウラは直ぐに冷静にならねばと頭に上がった血を沈める。感情的に動く時に待っているのは死のみだと、感じていたからだ。
徐々にだが白昼夢の斬撃速度に追いつけなくなるが、突然白昼夢が横に吹き飛ばされた。ラウラは白昼夢を見ると、美紗緒が白昼夢の両腕を掴んでいた。
「やらせはしないっ!」
「墜ちろ!」
美紗緒と白昼夢は縺れ合うが、海面ぎりぎりのところで別れ、互いに『月光弐式』、『月光』を展開。『瞬時加速』を使いながら互いに剣戟を繰り出す。ラウラは美紗緒を援護するべく再度『ドンナー・シュラーク』、近距離用射撃として腕部に搭載している『アイス・ツァプフェン』を構える。
その時にシャルロットも戻ってきて、『オクスタンガトリング』を展開、『サンライズ』を全基射出し、美紗緒に援護射撃を開始する。その時丁度、美紗緒と鍔迫り合いをしていた為、白昼夢は後退する。
『ドンナー・シュラーク』、『アイス・ツァプフェン』、『オクスタンガトリング』の弾丸を避けれたが『サンライズ』が至近距離でエネルギー弾を放った為、白昼夢は左腕を盾にして防ぐ。だが、白昼夢は反撃とばかりに『レイダー』を全基射出、その後に5mを超える巨大な大砲とも呼べる『アマテラスユニット』でしか使えない武装、陽電子砲『エーレンベルグ』を呼び出した。
呼び出した直後から既に発射準備は終えており、その視線の先には美紗緒が居た。
「(あれは……『エーレンベルグ』!?撃たせない!)」
美紗緒は『思兼神』を全基射出、斬撃形態、射撃形態が4基ずつだが『サンライズ』と合わせても16基しかなく、『レイダー』より2基少ない。『エーレンベルグ』の的にならないよう美紗緒は無作為の機動を行うが、最終目的は自身だと白昼夢は理解している為、焦らずに狙おうとするが、そこにラウラとシャルロットが妨害をする為、2人に『エーレンベルグ』を向ける。
それを見た美紗緒は焦る。
「(不味い……。あれを2人に放たれたら……)」
それを想像しただけでも美紗緒の体が震えそうになるが、無理矢理押さえつける。
「(そうはさせない……!私の命に代えても……!)」
――――――操縦者の劇的な感情の発露を確認、自己進化……エラー。操縦者の望む武装の構築完了。戦闘経験値が不足している為、操縦者に負荷を掛けることで第二形態移行可能。強制的に第二形態移行します。
『カグツチ』から黒炎と蒼炎のような光が溢れ出し、徐々に美紗緒の眼から光が消え、とある感情が増幅されていく。
白昼夢が2人に対して『エーレンベルグ』を放とうとした瞬間、何かによって『エーレンベルグ』が破壊される。
「何っ!?」
白昼夢は先程の余裕の笑みが消え、驚愕の表情でその何かを見る。何かを覆っていた2色の炎が唐突に消えた、それは美紗緒だった……。
だが、普段の美紗緒を知る人ならばその姿を見た瞬間、驚愕するであろう……。何故ならばその表情は『憎しみ』しか表していなかったからだ。
美紗緒の専用機である『カグツチ』の面影が残るのは両腕部、両脚部、非固定浮遊部位のみで他は全て変わっていた。胸部、腹部、腰部にあったISスーツが消え、胸部と横の腹部に装甲が取り付けられ、それ以外の腹部、鼠蹊部、太腿の半ばまで素肌を晒しているが、流石に股間部には申し訳程度ではあるが装甲が取り付けられていた。
両肩部には青白く丸いがその頂点に青い何かの射出口が搭載された装甲が装着されている。頭部にはギアレシーバーしかなかったがヘッドギアも新たに搭載されていた。
「……『シュタインズガンナー』」
美紗緒の呟きと共に両肩部の射出口が開き、エネルギーで出来たクリスタルが8つ現れ、白昼夢を取り囲み、その直後にクリスタルの先端から青白い閃光が放たれる。白昼夢はそれを避けるが、その避けた先にラウラは『ドンナー・シュラーク』を展開していた。
「食らえっ!」
ラウラは『カィンフィードバックヴォンディン・Ⅱ』の右脚部に『ドンナー・シュラーク』の砲弾を当てる。右脚部に当たり、高度がおちるが、直ぐに『PIC』で体勢を立て直すも、目の前にはシャルロットがいて、パイルバンカー『インプロージョン』を構えていた。
「はぁぁぁっ!」
体勢を立て直したばかりの白昼夢も直ぐに回避することは難しかったらしく、『インプロージョン』の射出をまともに受け、胸部の装甲を大きく抉った。
これ以上の戦闘は不利と悟ったのか、白昼夢(さだめ)は辺りに閃光を起こし、3人の目を一時的に潰してから戦闘空域から離脱した。
ラウラとシャルロットの視力が戻るのと同時に、美紗緒のISが解かれ、海へと落下を始める。だが、シャルロットが美紗緒を抱きとめる。
「……気絶してるみたいだね」
「とりあえず『レクイエム』に戻るとしよう」
「そうだね……って!ラウラ!あれを見て!」
シャルロットが指差す方をラウラが見ると、そこの先に大蛇が居たのだった。