一夏と美緒の戦闘は始まった当初から苛烈を極めていた。接敵から『残酷なる災厄』を展開、大蛇を呼び出し1週間前とほぼ同じ状況を作り出していた。
迫りくる刀剣郡と大蛇を避け、『ツヌグイ』を射出、刀剣郡を薙ぎ払い大蛇に向かわせるも、その圧倒的な質量には歯が立たなかった。
美緒は舌打ちをすると、一夏に向かって荷電粒子砲を放つ。一夏はそれを避け、『雪月』を射出、美緒を取り囲む様に走らせる。
「ユキアネサ!アレの起動までどれぐらい掛かる!」
―――残り時間60秒!そのまま持ち堪えて下さい!我が主一夏!
「『異端仕様』の多重起動と『第二形態単一仕様能力』の並行起動はできるか!?」
―――可能です!その代わり起動までの時間が25秒伸びます!
「なら使うぞ!ユキアネサ!」
―――了解!『異端仕様』後続多重起動します!
一夏の足元から56匹の蛇が現れ、それらが8匹ずつ螺旋状に交わり、7匹の大蛇が現れる。その大蛇達が混ざり合い、刀剣で出来た八岐大蛇が現れた。
『KILIAAAAAAAAAA!!』
それは産まれたことによる歓喜の声なのかは定かではないが咆哮を上げ、八岐大蛇は美緒を睨み、その八つの首を伸ばし美緒に襲い掛かる。
その速度は大蛇の倍以上で、不意を突かれた美緒は吹き飛ばされる。
―――『神羅烈風』を起動!前方にエネルギーシールドを展開します!
一夏の前に不可視のエネルギーシールドが張られ、美緒が八岐大蛇の首を全て避けきった直後に合わせて突撃する。一夏の突撃に気づいた美緒は、それを避けてすれ違い様に『月光零式』で一夏の横腹を斬り付ける。
「ぐっ!まだまだぁ!」
斬られた横腹から鮮血が噴出すが、一夏はそれを無視し、八岐大蛇を繰り、逃げ場を無くすように徐々に追い込む。だが、美緒も逸れに気付かない筈も無く、八岐大蛇に対して一夏が見たこともない武装で八岐大蛇の首を消滅させた。
―――我が主一夏!あれは陽電子砲です!絶対に当たらないで下さい!
ユキアネサの警告を聞いた一夏は、八岐大蛇の消滅させられた首を、直ぐに再構築して全ての首で美緒を囲う。だが、美緒は『アルテミス』が搭載している武装の中でも最高の攻撃力を誇る陽電子砲『ソドム』、そして同じ陽電子砲を搭載したビット『ナハト』を8基射出して、八岐大蛇の首を消滅させる為に放つ。
しかし、八岐大蛇に学習能力があるのか、陽電子砲を避け、美緒に喰らい付こうと迫る。喰らおうと迫りくる八岐大蛇に対して美緒は、『ソドム』をほぼ零距離で放ち、消滅させるが直ぐに一夏によって再構築され、再び牙を向く。
八岐大蛇を繰り、自身が突撃する瞬間を見極めていた一夏は、美緒が作ってしまった隙を見逃さずに突撃する。美緒が気づいた時には既に遅く、一夏の突進とその直後の大爆発も受け、装甲が大きく削れ、その後に体勢を立て直そうとするが、直ぐに八岐大蛇に飲み込まれ、その口内で無数の斬撃を受ける。
美緒が八岐大蛇に飲み込まれたのを確認した一夏は、『雪羅』の左腕をシールドモード、右腕をブレードモードにして様子を伺う。
―――我が主一夏。アレの起動完了しました。『雪羅弐式』のブレードを叩き込めば完了です
「あぁ、ありがとう。ユキアネサ」
一夏は改めて『雪羅』のブレードを構えると美緒を飲み込んだ八岐大蛇の首が消滅する。出てきた『アルテミス』の装甲は罅割れ、紫電が走り、服、ソックス、ブーツは破け素肌が露出しているが全身血塗れで息も上がっていた。
そして一夏は『連続瞬時加速』を使って美緒に迫り、その心臓に近い部分に『雪羅』のブレードを刺した。
「がふぅっ!?」
美緒の口から鮮血が吐き出され、『白式改』の装甲を紅く染める。
「認識……解除……『服従コード』による……束縛から解放……『生命戦闘体』No.Λ-11は……一時的……機能……停止……自己修復……ナノマシン……最大稼動……します」
美緒の口からその言葉が漏れると、ISが解除され、美緒は気を失った。落ちようとした美緒を一夏は受け止めた、その直後。
―――我が主一夏!6時と8時の方向から高エネルギー反応!!回避してください!
ユキアネサの警告が突然聞こえ、一夏がその場から離れると二つのエネルギー弾が通り過ぎた。それを放った元を辿ると、『エーレンベルグ』を構えた白昼夢と『スターブレイカー』を構えたエムがいた。
「何のまねだ?」
「お姉様を返しなさい。織斑一夏」
「織斑一夏。ここで死んでもらうぞ!」
一夏の問いかけに白昼夢とエムが答えた直後に白昼夢は『瞬時加速』で一夏に接近し、『月光』を展開。一夏を斬ろうとするがそこに、八岐大蛇が割り込み、白昼夢は後退する。
だが、一夏にとっては八岐大蛇の割り込みは有難かった。今現在美緒を抱えている一夏は『雪羅』を封じられているも同然で、使える武装が機械翼の荷電粒子砲と『雪月』しかなかったからだ。
「一夏!!無事なの!?」
そこに鈴音、シャルロット、ラウラが応援に駆けつけると。一夏の腕の中にいる美緒を見つけて驚く。
「丁度良かった!鈴!美緒を頼む!」
一夏は鈴音に美緒を預けて3人に背を向け、『連続瞬時加速』を使って一夏と白昼夢は激突する。エムは白昼夢の援護をせずに鈴音達を狙おうとするが、八岐大蛇によって阻まれる。
『一夏ぁっ!どういうことか説明しなさいよ!』
「話は後だ!今は美緒を『レクイエム』に!」
一夏はそう言って八岐大蛇でエムを弾き飛ばし、白昼夢の両腕を掴んで鈴音達から距離をとった。
そして白昼夢は一夏の腕を振り払い、狂った様に急に嗤い始めた。
「お姉様の恐怖に染まったあの表情!織斑一夏。貴方に助けを求めても絶対に来ないあの絶望に満ちた声!ふふっ……。貴方にも聴かせてあげたかったわ」
白昼夢の言葉を聞き、一夏は嫌な予感しかしなかった。
「ふふふっ……。だから返してちょうだい。またあの豚共に、お姉さまを犯させるんだから」
白昼夢(さだめ)の言葉に一夏はキレた。
「ユキアネサ!!」
―――了解しました。我が主一夏!『残酷なる災厄』最大稼動!
一夏とユキアネサの言葉と共に八岐大蛇の体が更に大きくなり、その眼の光はより紅く鋭くなっていた。そして一夏の頭の中にとある言葉浮かび上がり、それを唱える。
「神世七代!神によりて作られし世界!全ては偽り!全ては虚像!終末は来たれり……今全ての破壊を!」
―――来たれ!『機械仕掛けの神禍津日神』!!
一夏の背後から八岐大蛇よりも巨大な拳が空間を歪めて出現、その拳は白昼夢とエムに振り下ろされる。2人は回避しようとするが、その拳はあまりにも大きく、避けることができずにその拳によって海面に叩き付けられ、海の奥深くまで押し込まれる。
それを確認した一夏は、離脱をしたのだった。