IS~インフィニットストラトス~ Noblesse Oblige   作:白姫彼方

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少女の悲しみ、新たなる戦い

夏が『レクイエム』に戻った時には既に夜が明けていた。着替えを済ませて艦橋に行こうと思い、ロッカールームから出ようとした時、ドアが開かれる。

 

「え?み……お……?」

「一夏ぁっ!!!」

 

一夏が固まっていると、美緒は抱き付く。その声は嗚咽が殆どで聞き取れなかった、だが一夏は美緒を抱きしめてから頭を撫でる。

暫くすると、嗚咽は止み、2人でロッカールームにあるベンチに座る。

 

「落ち着いたか?」

「うん……」

 

美緒と一夏はただ黙っていたが、美緒が口を開いて、ゆっくりと話し始めた。

 

「私が『服従コード』で繰られてる時のね……、最初の任務が……。『亡国機業(ファントム・タスク)』幹部会の……、性欲処理だった……」

 

一夏は無言で美緒の肩を抱くが、美緒は声を震わせながら続ける。

 

「繰られてる時でも……、意識はあってね……。気持ち悪くてしょうがなかった……、あの……無数の手と……。「これ以上は言わなくていい!」い……一夏?」

 

言葉を遮られた美緒は、一夏に拒絶されたと思い、悲しい表情(かお)をする。

 

「あ……、大きな声を出してすまない。だけどな美緒。例えどんな事が美緒の身に起こったとしても、少なくとも俺は美緒、お前の傍にいるぞ絶対にな」

 

一夏はそう言って、美緒を抱きしめる。それに美緒は驚くが、ぽろぽろと涙が零れ落ちる、そのまま一夏はぽんぽんと美緒の背中を優しく叩く。

美緒は一夏にしがみついて先程よりも大きな嗚咽がロッカールームに響き渡る。一夏はそれを黙って聴いていた。

 

 

                     ◆

 

 

美緒を取り戻してから1ヶ月が経った。その間には特に戦闘も無く、穏やかに過ごせてはいたが緊急招集された。

 

「千冬姉、何かあったのか?」

 

一夏の問いかけに、千冬は答えず、全員居る事を確認する。

 

「よし、全員揃ったな。まずはこれを見てくれ」

 

千冬がそう言うと、モニターが現れ、それを見た美緒、美紗緒、一夏以外が驚く。

 

「何なのよ!?あの数は!!」

 

それを見た鈴音が声を上げた、それも当然であり。モニターには無数の戦闘機や現在起動している日本、フランス、イギリス、中国、『亡国機業(ファントム・タスク)』以外の研究用に保管されていたISコアも含め、ISが全機起動しているからだ。

 

「どうやら世界(ファントム・タスク)日本(私達)を先に潰した方が良いと考えたみたいだね」

 

そのモニターを見ていた美緒はそう呟き、心底楽しそうに言った。

 

「なら……、私達がその思惑を潰してあげる。そうだよね?一夏?」

「そうだな……、だけど油断は出来ないな。何か裏があるかもしれないからな、そこは警戒していこう」

「なら決まったな。千条院姉と織斑は前方、オルコットと篠ノ之は後方、千条院妹と凰は右方、デュノアとボーデヴィッヒは左方に着け。いいな?」

 

千冬がそういうと、全員が「了解っ!」と答えて、艦橋を出た。

 

 

                     ◆

 

 

一夏と美緒は同じ艦首カタパルトに居て、2人は既にISを展開し終えてフィオナの説明を聞いていた。

 

『作戦を確認をします。太平洋上から、こちらに向かう世界連合軍の排除を行います。

戦闘機、戦艦、ISの数は未知数です。ですので連合軍の総戦力と考えてください。

作戦目標は連合軍の撤退及び壊滅です……。この戦闘が終われば戦争も終結するでしょう。

それと未確認ですが、日本政府から代表候補生が1人、増援に来ると情報がありました。留意してください。

以上作戦の確認を終了します……死なないで』

 

フィオナの説明が終わると、ハッチが開く。

 

「それじゃ、私から行くね……。千条院美緒、『アルテミス』出るよ!」

 

美緒が、言うと同時にカタパルトから出る。

 

「織斑一夏、ユキアネサと『白式改』出るぞ!」

 

美緒と同様に、一夏はカタパルトを出る。そして、先に出ていた美緒と合流する。

 

「それじゃあ、一夏。『異端仕様(ヘレスィ・アビリティー)』をお願い、私は突入して蹴散らすよ」

「ああ、頼んだぞ。美緒」

―――気を付けて下さいね。美緒様

 

美緒はコクリと頷くと『連続瞬時加速(アクセレート・イグニッション・ブースト)』を使って突入、その直後に幾つかの閃光が走ると共に爆炎が起こる。美緒が『異端仕様(ヘレスィ・アビリティー)』を知っているのは、一夏が美緒にだけ話していたからだ。

右目の眼帯のことも話しており、美緒は自分のせいだと落ち込んでいたが、一夏の説得によって、今では以前のように明るくなった。

 

「いくぞ!ユキアネサ!」

―――はい、(イェス・)我が主(マイ・マスター)一夏!『異端仕様(ヘレスィ・アビリティー)』起動!『残酷なる災厄(カタストロフェー・グラオザーム)』最大稼動!

「神代七代!神によりて作られし世界!全ては偽り!全ては虚像!終末は来たれり……今全ての破壊を!」

―――来たれ!『機械仕掛けの神(デウス・エクス・マキナ)禍津日神(まがついのかみ)』!!

 

空間を歪めて巨大な拳が出現、その拳が振り下ろされると範囲内の多数の戦闘機が爆散、若しくは上から押されて海面に叩き付けられ、海面と上からの圧力で戦艦と機体が圧し折れ、粉砕される。

 

「一夏!合わせて!」

「わかった!ユキアネサ!」

―――了解!『雪羅弐式』、機械翼の荷電粒子砲を拡散に設定!どうぞ!

 

美緒は両腕の『グングニール』を真横に伸ばし、『シャッテン』を拡散荷電粒子砲に設定して放ち、自身を中心に縦横無尽の回転運動を開始する。それによって範囲内の戦闘機は爆破、海面は蒸発し、ISは大きくシールド・エネルギーが削られる。

一夏は機械翼の拡散荷電粒子砲を前方に、『雪羅』の拡散荷電粒子砲を斜め後ろに放ち、その状態で『連続瞬時加速(アクセレート・イグニッション・ブースト)』を使い、機械翼の荷電粒子砲で前方の戦闘機を殲滅、その直後に『雪羅』の拡散荷電粒子砲をビームブレードに見立てて、擦れ違いで戦闘機、戦艦、ISを薙ぎ払いながら、出鱈目な軌道を描く。

だが、それでも少なからず一夏と美緒の猛攻を掻い潜った戦闘機やISがいたが。『雪月』、『ツヌグイ』によって足止めをされ、美緒と一夏によって殲滅された。

 

『敵戦力前方40%、右方60%、左方65%、後方74%激減!そのまま殲滅を続けてください!それとですが増援の日本代表候補生が到着しました!』

『あ、あの……日本代表候補生の……更識簪です……到着が遅れて……申し訳ございません……』

「話は後だ!箒、鈴、シャル状況を教えてくれ!」

『私達の方はもうじき終わる!』

『そうですわ!だからこちらは気にしないで下さいませ!』

『私達の方もじき終わるわよ、シャルロット達はどうなのよ?』

『うん、僕達の方も終わるよ。だから一夏達の方に増援お願い』

『わ、わかりました……。そちらに向かいます、位置データを送ってください』

 

美緒が位置データを送ると、数分で、増援の簪が到着する。簪が展開しているISは、何処となく『打鉄』に似ていたが、どうやら違うようだ。

重厚な『打鉄』に対して簪が装着しているのは見た感じからして防御型というよりも機動型であり、何処となくだが『白式』に似ていた。

 

「早速で悪いけど、美緒は中央、俺は右翼、更識さんは左翼で『一夏さん。美緒様!そちらに高速で接近する機影を確認しました!』なっ!?」

 

一夏が話している途中でフィオナの通信により途切れる。

 

『機影は2……これは!?9時の方向『サイレント・ゼフィルス』、3時の方向『カィンフィードバックヴォンディン・(エレバス)』です!』

 

フィオナの報告内容を聞いた一夏と美緒は絶句し、簪はその内容がとてつもなく不味い、と感じ取っていた。

 

「不味い状況だな……。美緒、どうする?」

「『サイレント・ゼフィルス』と『カィンフィードバックヴォンディン・(エレバス)』だけならどうにかなるね、私が『カィンフィード・バックヴォンディン・(エレバス)』を受け持つよ」

「なら、俺が『サイレント・ゼフィルス』か?」

「それが妥当かな……更識さんの実力もわからないし、これ以上の敵の侵攻を許すわけにもいかないからね」

「え、えっと……。『サイレント・ゼフィルス』と『カィンフィードバックヴォンディン・(エレバス)って?」

 

今まで黙っていた簪が疑問を口に出し、美緒と一夏が説明していなかったことを思い出す。

 

「『サイレント・ゼフィルス』はイギリスのBT兵器搭載試作第二号機で、現在『亡国機業(ファントム・タスク)』に奪取された機体だ」

「『カィンフィードバックヴォンディン・(エレバス)』は千条院家が開発したISで、元私の専用機体『カィンホクキエツァ』の予備機だったのを『亡国機業(ファントム・タスク)』が奪取。その後改修と発展させた機体だよ」

『一夏さん、美緒様!残りの距離後5000!急いでください!』

 

フィオナのせっつく様な通信を聞いて、2人は表情をより引き締める。

 

「兎に角、『サイレント・ゼフィルス』と『カィンフィードバックヴォンディン・(エレバス)』の事は俺達に任せてくれ。更識さんは戦闘機とかの相手を頼む」

 

一夏はそう言って、『雪月』を収納して『サイレント・ゼフィルス』の方向に飛んでいった。

 

「何かあったら私か一夏に連絡してね?」

 

美緒はそう言うと、『シャッテン』を収納すると、『連続瞬時加速(アクセレート・イグニッション・ブースト)』を使って『カィンフィードバックヴォンディン・(エレバス)』の方向に飛んでいったのだった。

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