IS~インフィニットストラトス~ Noblesse Oblige   作:白姫彼方

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幼馴染と後日談と

~翌日。教室~

 

あの模擬戦から翌日の朝。通常ではありえないことが起きていた。

 

「では、一年一組代表は織斑一夏君に決定です。あ、一繋がりでいい感じですね!」

 

真耶は嬉々として喋っている。それに同調する様にクラスの女子も沸き上がる。美緒は昨日の自分の行動を思い出して少し紅くなっていた。それは一夏も同様だ。だが一夏は思わず挙手をしてしまう。

 

「先生。質問です」

「はい、織斑君」

「何で俺がクラス代表なんですか? 昨日勝ったのは美緒とセシリアですよ」

「それは私とセシリィが辞退したからだよ」

「美緒さんの言うとおりですわ」

「美緒?セシリィって……」

「私と友達になった記念にって付けた愛称だよ?」

「さいですか……」

 

一夏は美緒の言葉にがくっと肩を落とす。それを見た美緒とセシリアはクスクスと仲良く微笑む

 

「それに、一夏をクラス代表者にすることで。ちゃんとどれぐらい成長してるか見せる為でもあるんだよ?」

「そ、そうか」

「ふふ♪それにセシリィにもIS訓練のコーチ役を頼んであるからね」

 

美緒の言葉にガタッと音が聞こえ、一夏、美緒、セシリアが向くと箒が立っていた。

 

「それはどう言う事だ!?美緒!」

「私と箒ちゃんでは遠距離用ISとの実践訓練や回避訓練ができないでしょ?私も一応遠距離用武装は有るけど。あまりにも強力すぎるから私じゃできないからね」

「わたくしセシリア・オルコットが遠距離の訓練を担当するのですから一夏さん(・・・・)はより強くなるはずですわ!」

「だ、だが!私と美緒だけで事足りるはずだぞ!どうなんだ一夏!」

「俺に振るなよ……でも美緒の言い分も判るからセシリアにお願いしようかな」

「と、当然ですわ!何せわたくしセシリア・オルコットなのですから!」

 

美緒はニコニコとセシリア、一夏、箒の喧騒を見守っている。それは本当に楽しそうに見守っていたがその瞳の奥には何を写していたのか………、ちらりと見ていた千冬だけが知っていた。

 

 

「それではこれよりISの基本的な飛行操縦を実践してもらう。織斑、オルコット、千条院。試しに飛んで見せろ」

 

遅咲きの桜も既に散り終えた四月も下旬。美緒達は鬼教官こと千冬の授業を真面目に受けていた。

 

「早くしろ。熟練したIS操縦者は展開まで一秒とかからないぞ」

 

既に美緒とセシリアは展開済みで、遅れていた一夏千冬にせかされ慌てて展開しようとする。

 

「(来い、白式!)」

 

一夏はそう念じ、右腕のガントレットを掴むと直ぐに展開されて『白式』が装着された。

 

「よし、装着できたな?では飛べ!」

 

千冬に言われて、美緒とセシリアの行動は早かった。セシリアは普通の急上昇し、美緒はバレルロールをしながらセシリアよりも早く上昇し、雲に届きそうなくらいの位置で止まった。

 

「何をちんたらやっている。『パンツァーアイゼン』は兎も角、スペック上の出力は『白式』の方が『ブルー・ティアーズ』よりも上だぞ」

 

「そんなこといっても飛ぶイメージが掴めないんだよ」と一夏は小声で呟く

「一夏さん、イメージは所詮イメージ、自分が一番やりやすい方法を模索する方が建設的ですわよ」

「私もそう思うよ?最初はイメージし辛いと思うけどやっぱり自分のイメージでやっていかないとね」

「そう言われてもなぁ。大体空を飛ぶ感覚自体がまだあやふやなんだよ。なんで浮いてるんが、これ」

「説明しても構いませんが、長いですわよ?反重力力翼と流動波干渉の話になりますもの」

「いや、やめておくよ。余計わからなくなりそうだ………」

「そう、残念ですわ。ふふっ」

 

セシリアが笑うと美緒も釣られて笑う。ちなみに一夏は『白式』が届いてから毎日起動して訓練をしている。その時の箒の教え方が

『ぐっ、とする感じだ』

『どんっ、とする感覚だ』

『ずかーん、という具合だ』

と擬音ばかりで役に立たず。美緒の教え方は

『一夏。これからISを起動しての鬼ごっこをやるよ?これはISの機動に慣れる為の訓練だから全力で逃げるようにね?』

と遊び心を入れながらもISに慣れさせる為の訓練をしていた。その訓練を見ていた教師は不謹慎だと言っていたが実際一夏がこれで上達しているのだから何とも言えなかった。

 

『織斑、オルコット、千条院。急降下と完全停止をやって見せろ。織斑、オルコットは目標地表から10センチ。千条院は1センチだ』

「了解です。じゃぁ、私から行くね?一夏、セシリィ」

 

美緒はそう言って残像が残るほどの速度で急降下し始め、10秒にも満たない時間で地表に降りて、千冬に言われたとおり、1センチの空間を空けて降りていた。そしてセシリアも急降下をして地表12センチの空間を空けて停まった。そして一夏は……

 

ギュンッ!!ズドォォォォン!!一夏は見事に墜落をした……美緒を巻き込んで

 

「あいたたた………美緒?大丈………うぉぁ!?」

 

一夏は思わず硬直してしまう。それは巻き込んだ美緒の両胸に手を添えているからだ。

 

「うぅ……ん……一夏……?」

 

一夏は美緒が目覚める前にその場から少し離れる。

 

「わ、悪い。大丈夫か?」

「うん、何とかね」

 

美緒はそう言って立ち上がり、一夏に手を差し伸べる。一夏も美緒の手を握り、立つ。

 

「全く……これは追加訓練もしないとだね?」

「面目ない……」

「大丈夫ですか、一夏さん。美緒さん?お怪我はなくて?」

「あ、あぁ。大丈夫だけど……」

「私も大丈夫だよ~」

「………ISを装備していて怪我などするわけがないだろう………」

「あら、篠ノ之さん。他人を気遣うのは当然のこと。それがISを装備していても、ですわ。常識でしてよ?」

「お前が言うか。この猫かぶりめ」

「鬼の皮をかぶっているよりマシですわ」

 

バチバチと二人の間で火花が散る。それを見ていた美緒は一夏の手を握ってクレーターから出る。

 

「……おい!美緒!抜け駆けは許さないぞ!」

「そうですわ許しませんわよ!」

「おい馬鹿ども。邪魔だ。端っこでやっていろ」

 

千冬は言い争っているセシリアと箒を押しのけて美緒と一夏に近付く。

 

「織斑、千条院。武装を展開しろ。それくらいは自在に出来る様になっただろう」

「は、はぁ」

「返事は『はい』だ」

「は、はいっ」

「よし。でははじめろ」

 

千冬の言葉に一夏は直ぐに展開しようとするが数秒の間を空けて『雪片弐型』を展開し終える。

 

「遅い。0.5秒で出せるようになれ」

 

一夏にそう言って美緒の方に向く

 

「次に千条院。やってみろ」

「はい」

 

返事をし終える直後に両腕を正面に出し、既にアイドリングをしている『オクスタンガトリング』を展開する。

 

「よろしい。だがそのポーズはなんだ?」

「はい。この方が素早く撃てる様にする為です」

「そうか、わかった」

 

美緒の言葉に返事をするとセシリアの方に向く

 

「オルコット、武装を展開しろ」

「はい」

 

セシリアは肩まで左手を上げて、真横に突き出し、『スターライトMk-Ⅲ』を展開する。その速さは美緒と同等であった。

 

「さすがだな、代表候補生。…………ただし、そのポーズをやめろ。横に向かって銃身を展開させて誰を撃つ気だ。正面に展開できるようにしろ」

「で、ですがこれはわたくしのイメージをまとめるに必要な………」

「直せ。いいな」

「………はい」

 

千冬はそう言い、美緒の方に向く。

 

「千条院。近接用の武装を展開しろ」

「はい」

 

千冬に言われた美緒は両手の『オクスタンガトリング』を粒子にすると同時に両手に『月光』のエネルギーの刀身を出現させる。

 

「よろしい。ではオルコット。近接用の武装を展開しろ」

「えっあ、はっ、はいっ」

 

千冬に言われ、セシリアは『スターライトMk-Ⅲ』を粒子にして近接用武装を展開しようとするも。中々イメージに結びつかないのか光がくるくると漂うだけだった。

 

「くっ………」

「まだか?」

「す、すぐです。………あぁ、もうっ!『インターセプター』!」

 

武器の名前を半ばヤケクソ気味に叫び、それに合わせて武器が構成される。………このやり方は初心者用なのでそれを行ったセシリアは屈辱的だったらしい。

 

「………何秒かかっている。お前は、実戦でも相手に待ってもらうのか?」

「じ、実戦では近接の間合いに入らせません!ですから、問題ありませんわ!」

「ほう。織斑や千条院との対戦で初心者の織斑に懐を許していたように見えたが?」

「あ、あれは、その……」

 

セシリアはごにょごにょと言っていたが一夏をキッと睨み。個別通信(プライベート・チャネル)を開く

 

『あなたのせいですわよ!あ、あなたが私に飛び込んでくるから……責任をとっていただきますわ!』

 

セシリアの言葉に一夏は答えていなかった。

 

「時間だな。今日の授業はここまでだ。織斑、グラウンドを片付けておけよ」

 

とある意味非情な言葉を一夏に言う。まぁ一夏の自業自得だが………この時、箒とセシリアは既にアリーナから出ている。

 

「これを一人でやるのはしんどいな…………」

「あ、私も手伝うよ?一夏」

「本当か?助かる」

「(ふふ♪役得役得♪)」

 

美緒の下心も無事成功したようだった。

 

~夜IS学園正面ゲート前~

 

「ふ~ん、ここがそうなんだ………」

 

小柄な身体の少女が、その身に似つかわしくない大きなボストンバックを肩から提げて立っていた。

金色の留め具で左右それぞれに高い位置に結んでいる髪を四月のまだ暖かな夜風に揺らせる。

少女はくしゃくしゃの紙を上着のポケットから取りだす。

 

「えーと、受付ってどこにあるんだっけ」

 

取り出した紙を見ても判らず。そのまま上着のポケットに仕舞う。

 

「本校舎一階総合事務受付………って、どこにあんのよ?」

 

その少女はそう言って歩き出す。彼女は考えて動くより動いてから考えるタイプの様だ。

ぶつぶつと独り言を言いながらアリーナ・ゲートに着く。

 

「(ここで待ってれば誰か通りかかるでしょ。その人に案内してもらお)」

 

そう思って待とうとするが直ぐに数名の生徒が出てくる

 

「(あ、あの人達に聞けば良いかな)」

 

そう思って少し近付くと聞き覚えのある男性の声がする。

 

「だから、そのイメージがわからないんだよ」

 

ドクン!と少女の胸が高鳴る。

 

「(あたしってわかるかな。わかるよね。一年ちょっと会わなかっただけだし)」

 

少女はそう自分に言い聞かせて。近付く

 

「いち………」

「一夏、いつになったらイメージが掴めるのだ。先週からずっと同じところで詰まっているぞ」

「あのなあ、お前の説明が独特すぎるんだよ。なんだよ、『くいって感じ』って」

「そうだよ。箒ちゃん。それじゃ一夏は勿論。誰だってわからないよ………」

 

そう話して居た複数の生徒は去っていった。

 

「(誰?あの女の子達なんで親しそうなの?っていうか何で名前で呼んでるの?)」

 

胸の高鳴りは一気に冷め。ひどく冷たい感情と苛立ちが雪崩れ込む。だが直ぐに受付が見つかり。手続きを行った。

 

「IS学園へようこそ、凰鈴音(ファン・リンイン)さん」

 

事務員の歓迎の言葉を軽く聞き流し、鈴音はその事務員に聞く

 

「織斑一夏って、何組ですか?」

「あぁ、噂の子?一組よ凰さんは二組だから、お隣ね。そうそう、あの子一組のクラス代表になったんですって。やっぱり織斑先生の弟さんなだけはあるわね」

「二組のクラス代表ってもう決まってますか?」

「決まってるわよ」

「名前は?」

「え?ええと………聞いてどうするの?」

「お願いしようかと思って。代表、あたしに譲ってって」

 

にっこりとしたその笑顔には、ばっちり血管マークがついていた。

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