IS~インフィニットストラトス~ Noblesse Oblige   作:白姫彼方

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第二巻
幼馴染と転校生と


~IS学園教室~

 

美緒の暴走事件が終わってから幾日が経つ六月の上旬。一夏達は千冬の話を聞いていた。

 

「今日から本格的な実戦訓練を開始する。訓練機ではあるがISを使用しての授業になるので各人気を引き締めるように。各人のISスーツが届くまでは学園指定の物を使ってもらう。忘れた者は学校指定の水着で受けてもらう。まぁそれすらも忘れた者は下着で構わないだろう」

 

「いやいや、流石にそれはまずいよ?織斑先生」

 

美緒の突っ込みを千冬は無視をして連絡事項を伝える。

 

「では山田先生、ホームルームを」

「は、はいっ」

 

少し慌てた様子の真耶は少し子犬チックで可愛らしかった。

 

「今日はなんと転校生を紹介します!しかも二名です!」

 

一瞬の静寂が訪れる。美緒はとりあえず一夏に耳栓をして自分は聴覚を一時的に切った(常人では出来ません)

 

そして美緒が聴覚を切った直後にクラス中がざわつく。

 

「それでは入ってください。」

「失礼します」

「…………」

 

二人の転校生の姿を見てクラスのざわめきは止まる……それは当然だ。何せそのうちの一人の転校生が男(・)なのだから

 

「シャルル・デュノアです。フランスから来ました。この国では不慣れなことも多いかと思いますが、みなさんよろしくお願いします」

 

シャルルの容姿は人懐っこい様な顔で、濃い金髪は首の後ろで束ねられている。体型は華奢で中性的な容姿をよりきわださせている。

 

「お、男………?」

「はい。こちらに僕と同じ境遇の方がいると聞いて本国から転入を……」

「きゃ………」

「はい?」

「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

 

美緒は再度聴覚を切る。今回ばかりは一夏を助けることは出来なかったらしい。

 

「男子!二人目の男子!」

「しかもうちのクラス!」

「美形!しかも守ってあげたくなる系の!」

「地球に産まれて良かった~~~!」

「あー、騒ぐな。静かにしろ」

 

千冬は面倒くさそうにぼやく

 

「み、皆さんお静かに。まだ自己紹介が終わってませんから~~!」

 

真耶がそう言うとクラスの女子はみんなもう一人の転校生を見る。だがその佇まいは正に『軍人』だ。

輝くような銀髪……美緒のよりかはまだ銀色ではある。その髪を腰近くまで伸ばしている。そして左目には医療用ではない黒眼帯を付けている。そして開いている方の目は赤色だ。しかしその目の温度はゼロで教室の女子達を見下している。

 

「………」

「……挨拶をしろ。ボーデヴィッヒ」

「はい、教官」

「ここではそう呼ぶな。もう私は教官ではないし、ここではお前も一般生徒だ。私のことは織斑先生と呼べ」

「了解しました」

 

千冬にそう言ってボーデヴィッヒは横を向く

 

「ラウラ・ボーデヴィッヒだ」

「……………」

「あ、あの以上……ですか?」

「以上だ」

 

ラウラはそう言って不意に別の方向を向くと一夏と目が合う

 

「!貴様が……」

 

ラウラはそう言うとツカツカと一夏の元に向かい。平手を当てようと振り、当たる直前に美緒がラウラの手を握って止めた。

 

「……何の真似だ?」

「それはこっちの台詞だよ?『schwarz(シュヴァルツェア) Häschen(ハーシュ)chan(カン)(黒い子兎ちゃん)』」

「何者だ……貴様は」

 

美緒の言葉にラウラは殺気を浴びせるも美緒は対して気にしていないようだ。

 

「ドイツの劣化コピー(・・・・・)は学習能力がないみたいだね」

「我が祖国を侮辱すると言うのか!」

「五月蝿いよ『遺伝子強化試験体(アドヴァンスド)』、私の家の技術を劣化(・・・・・・・・・)コピーでしか再現で(・・・・・・・・・)きなかった(・・・・・)出来損ない(・・・・・)程度で何をしようとしているのかな?」

「貴様!何故そのことを………まさか!貴様は『生命戦闘体(アマテラス)』の!」

「そう言う事だよ。『schwarz(シュヴァルツェア) Häschen(ハーシュ)chan(カン)(黒い子兎ちゃん)』?」

「そうか……漸く会えたな!『schwarz(シュヴァルツェア)Drache(ドラッヘ)(黒き竜)』!」

 

ラウラはそう言うと部分展開をしてプラズマ手刀を繰り出す。千冬も流石に驚き、一夏と一緒に止めに入ろうとする。クラスの女子は目を瞑る。…………だが来ると予想されていた惨劇は起こらなかった。

 

「なっ!?」

「『遺伝子強化試験体(アドヴァンスド)』には出来なかった『生命戦闘体(アマテラス)』の本当の力だよ」

 

そう、美緒はあろうことかプラズマ手刀のプラズマを人差し指と(・・・・・・・・・・)中指で挟み込んで(・・・・・・・・)受け止めていた(・・・・・・・)。それも肉が焼ける臭いもせずにだ。誰もが驚くであろう事態が起こっているからだ。

 

「それに……この程度で過去に最高傑作って言われてたなんて……屑だね」

「貴様ぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

ラウラは怒り狂い。美緒の手から手を離そうとするも一切動かない

 

「どうしたの?『遺伝子強化試験体(アドヴァンスド)』?ドイツの最高傑作ではなかったの?」

「殺す!殺してやる!」

 

ラウラは右肩の大型レールカノンを展開しようとする。

 

「遅すぎるよ」

 

僅かコンマ秒の世界でも美緒にとっては遅すぎる。展開最中にも拘らず、美緒はラウラの顔を空いている腕で殴打する。その際にあえて美緒は手を離す。

 

「ぐぅ!……この!」

「やめないか!!馬鹿ども!!!」

 

千冬の怒声で二人の動きは止まる。

 

「貴様らここは何処だと思っている!千条院!ボーデヴィッヒ!」

「すいませんでした。織斑先生」

「申し訳御座いませんでした、教官」

「ここでは織斑先生と呼べと言わなかったか!ボーデヴィッヒ!貴様らは反省室にきてもらうぞ!」

 

千冬はそう言って教室を出る。美緒もその後に続き、ラウラも美緒より少し遅れて出た。

 

~四時間後、購買部前~

 

千冬の説教と反省文が終わり。解放された美緒は残り少なくなった筆記用具を買い足しに来たのだった。

 

「えっと必要なのは……シャーペンの芯と消しゴムと……ってあれ?セシリィ?」

「あら、美緒さん。もう終わりましたの?」

「うん、お説教が2時間、反省文が2時間だったよ」

 

美緒の言葉にセシリアは若干引く。

 

「セシリィはどうしてここに?お昼ご飯なら自分で作ってたよね?」

「えっ、えぇ飲み物を買いに来ただけですわ」

「そうなんだ?(これは怪しいね………尾行しようかな)」

「それでは美緒さん。また後で」

「うん。またあとでね♪」

 

セシリアはそう言って購買部から出た。

 

「(さぁ、尾行開始だよ♪)」

 

~IS学園屋上~

 

「(成る程ね……皆でお昼食べてたんだ……私もあの中で食べられたらどれだけ楽しいんだろうね……)」

 

美緒は入ろうとするも、思い止まる。

 

「(でも……沢山の思い出を作ったら……皆が逝った後(・・・・)が辛くなるね。生き返ったと同時に永遠に辛くなるなんて……ね)」

 

美緒は階段を降りつつ自分の体を考えて一人静かに苦笑する。

それは『生命戦闘体(アマテラス)』にする際のナノマシンと『遺伝子改造素体』が大いに関係する。

人間の寿命はテロメアが関係している。細胞分裂をする毎にテロメアが短くなる。そしてテロメアが無くなると細胞は死に、一般的に言われる寿命の死となる。だが『遺伝子改造素体』はテロメアの長さを極端に伸ばし、長寿にしている。それだけならばまだ寿命が長いだけであるのだが。そこに『生命戦闘体(アマテラス)』の自己治癒用ナノマシンが関わって来る。

本来自己治癒用ナノマシンは怪我を治し、病気に掛かり難くする為に埋め込まれた物だ。だが美緒に埋め込まれた自己治癒用ナノマシンはそれだけではなく何故かテロメアの長さを元に戻してしまう。

つまり自己治癒用ナノマシンがある限り、肉体を完全消滅させない限り不老不死なのだ。

 

「(ふふふ……それだったらこの思いも……伝えなくて良いよね)」

 

美緒の目から一筋の涙が流れ出る。

 

「あれ……?なんで……?止まって……よ……止まってよぉ……」

 

美緒はそのままぺたんと座りこんでしまう。

 

「あぁ……うぁぁぁ……」

 

美緒はそのまま静かに泣き出す。一夏達にこの姿を見せない様に唯静かに泣き続けた。

 

~五日後アリーナ~

 

「ええとね、一夏がオルコットさんや鳳さんに勝てないのは、単純に射撃武器の特性を把握してないからだよ」

「そうだね、『白式』は格闘戦特化型だから通常のISと戦う時は不利になるから射撃武器の特性をちゃんと把握しないとね?」

「そ、そうなのか? 一応、わかっているつもりだったんだが」

「一夏、つもりじゃ駄目だよ。それだと何時まで経っても強くなれないよ」

 

一夏は美緒の言葉にがくっと肩を落とす。

 

「うーん、知識として知っているだけって感じかな。さっき僕と戦ったときもほとんど間合いを詰められなかったよね?」

「うっ……、確かに。『瞬時加速(イグニッション・ブースト)』も読まれてたしな……」

「一夏のISは近接格闘オンリーだから、より深く射撃武器の特性を把握しないと対戦じゃ勝てないよ。特に一夏の『瞬時加速(イグニッション・ブースト)』って直線的だから反応できなくても軌道予測で攻撃できちゃうからね」

「直線的か……うーん」

「あ、一夏。何なら私の『瞬時加速(イグニッション・ブースト)』の軌道データ見る?一応参考にはなると思うけど」

「本当か!?後で見せてくれよ!」

「うん♪じゃあ、後で私の部屋に来てね♪」

「おう!」

「あれ?千条院さんって……専用機持ちだったんだ?」

「まぁね、丁度良いからみせてあげる♪」

 

美緒はそう言って両手を前に出す。

 

「おいで……『カィンホクキエツァ』」

 

美緒がIS名を言うと直ぐにISが展開装着された。

 

「凄いんだね……千条院さんのISって」

「あはは……ゴツいのは仕方ないんだけどね」

 

シャルルの率直な感想を聞いた美緒は自分も思っていたことを軽く言い、笑い合う。そこに一人乱入者が現れた。

 

「見つけたぞ!『schwarz(シュヴァルツェア)Drache(ドラッヘ)(黒き竜)』!」

 

それはISを纏ったラウラだった。

 

「あれは……ドイツの第三世代機『schwarz(シュヴァルツェア)Regen(レーゲン)(黒い雨)』……!?」

「何の用かな?『遺伝子強化試験体(アドヴァンスド)』?」

「2年前の恨みを晴らしてやる!」

 

ラウラは言い終わると同時に右肩にある大型実弾砲を美緒に向けて放つ。だが美緒は焦りもせず、素早く『オクスタンガトリング』を左手に展開して大型実弾砲の砲弾を(・・・・・・・・・)撃ち抜き(・・・・)爆散させた(・・・・・)

 

「いきなり実弾砲を撃つとは思わなかったよ……これは認識を改めないといけないのかな?『遺伝子強化試験体(アドヴァンスド)』?」

 

美緒はそう言い終わると同時にラウラに向けて殺気を放つ。ラウラも美緒に向けて殺気を放った。

少しでも音がすれば爆発するような雰囲気の中。スピーカーから声がする。

 

『そこの生徒!何をやっている!学年とクラス、出席番号を言え!』

 

担当の教師が騒ぎを聞きつけてやってきたのだろう。興が削がれたのかラウラは戦闘形態を解除する。

 

「命拾いしたね?『遺伝子強化試験体(アドヴァンスド)』?」

「それはこちらの台詞だ。『schwarz(シュヴァルツェア)Drache(ドラッヘ)(黒き竜)』」

 

ラウラはそう言ってアリーナを後にしたのだった。

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