監察山崎 1
ある飯屋で、真選組の制服を着た2人が飯を食べている。ここだけ聞くと、普通に真選組の隊士が飯を食べているだけかと思うが、この2人は一般の隊士ではなかった。
1人は監察の山崎。この山崎は、あの鬼の副長土方十四郎から直々に命を受け、監察を行う密偵のような隊士である。
対するもうひとりはそう、あの土方十四郎だ。攘夷志士に対しての遠慮の無さと、鬼気迫る姿勢から、鬼の副長と呼ばれている。
そんな2人が、普通の飯屋で何を話しているのか。それは、先日の騒動についてであった。
彼らが通報を受け、緊急出動した時には全て終わってしまっていたあの騒動。攘夷志士達が関係していると噂が流れているが、土方はこの騒動を山崎に徹底的に調べさせていたのだった。
「で、なにがあったんだ?あの騒動は」
「はい、あれは攘夷志士達による争いでした。それに、その攘夷志士というのが、あの高杉と桂の様です」
「そいつは、ビッグネームだな。桂はちらほら姿を見せては、逃げていく神出鬼没な野郎だ。それに、あの高杉か……」
「はい、高杉が動いていたみたいですね。それに、妖刀紅桜も関係していたらしく」
「妖刀か。紅桜は、結構な名刀と聞いたことがある。作成者も関係者も死んだと、しかし、剣を持つってことはいつでも死ぬ可能性があるってことだ。作成者も病気か何かだろうし、眉唾ものだろうな」
土方は、机に届いた丼に、大量にマヨネーズを掛け、それを食している。沖田や銀時が見たら、犬のエサと一蹴しそうな代物だ。
そんなゲテモノを食す副長をそのままに、山崎は話を続ける。
「過激派の高杉は、紅桜とからくりを組み合わせ、対艦兵器として運用を考えていたようです。それを阻止しようとした穏健派である桂との衝突、これが今回の騒動ですね」
「高杉率いる鬼殺……鬼兵隊は、参謀の武市に、人斬り万斉、人斬り似蔵、それに紅い弾丸来島……。それに比べて桂の方は有力な配下はいなかったような……」
「それが、桂一派とは異なる、強力な助っ人がいたとか、銀髪の侍、チャイナ服の少女、眼鏡の少年、白黒頭の少年……」
「万事屋か。あいつらは以前にも、桂と既知の仲のようだし、今の所黒ではないが、過去はわからん。もし、元攘夷志士なら俺達の敵だ」
「しかし、旦那は……」
真選組と少なくない関わりがある万事屋を疑うことに少し否定的な山崎であるが、土方は攘夷志士の可能性があるなら徹底的に調査を行うつもりであった。
「山崎、奴ら万事屋を探れ。それに、新しく入った奴は、桂の野郎にえらく気に入られているとかいないとか。しかも、うちの近藤さんとまで面識がある」
「張り込みですか?」
「そうだな。もし、黒とわかれば俺達にすぐ伝えろ。厳しいようなら斬れ。分かったか?」
「分かりました。斬るのは難しいんで、伝えますね」
「そんなに控えめ?もっと貪欲さを出せよ山崎。だから、お前はジミー山崎、地味ー山崎なんだよ」
「わざわざ地味を言い直さなくていいでしょ!?分かりました。しっかり調査します!」
山崎は飯屋から出る。これからしばらく張り込み生活になることを考えると少し憂鬱になった。
攘夷志士かどうか伝える、もしくは斬る。そういう命令を受けていたが、山崎は、銀時を斬る気は無かった。なぜなら、坂田銀時は、あの土方十四郎に勝った(正しくは刀を折って戦闘不能にした)からである。
「副長が勝てない相手に俺が勝てるわけないっつの」
愚痴をこぼすが、命令に背かない山崎は、そのまま万事屋の方面へ歩いていった。
もう少ししたら、長篇に入ります。