それは、真選組がまだ江戸に来ておらず、真選組とも呼ばれていない時期であった。
真選組の中核を担う、近藤·土方·沖田は武州にて同じ道場で剣を学んでおり、沖田に至ってはまだ一桁の年頃である。
ミツバが家事を一段落させ、部屋に視線を移すと、稽古に向かうはずの沖田が横になっていた。
「あら、そうちゃん。お稽古はどうしたの?いつもは勝手に早起きして道場に行くのに」
「姉上。最近、嫌なヤツが来たんです。僕より後輩の癖して、敬語を使わないし、態度も生意気なんです。僕はしばらく道場には行きたくありません」
「そうちゃん……」
ミツバが心配していると、外から足音が聞こえた。振り返ると、長髪を後ろで結んでいる土方が立っていた。
「沖田先輩、稽古の時間っす」
嫌なヤツの声に反応したのか。沖田は体を起こし、声の主を睨みつけた。
「てめぇ!なんで人ん家に勝手に来てんだよ!」
沖田は、睨みつけるだけでは納得がいかないのか、文句を言い、土方にぐるぐるパンチで近づいていく。しかし、年の差もあり、体もリーチも大きい土方には何もできずに頭を掴まれてしまった。
「近藤さんに連れてこいって頼まれたっす」
「このっ!離せよ!」
「さ、一緒に行きましょうか。先輩」
「イテテテテ!これが先輩に対する態度かよ!」
土方は、沖田の襟を掴み、引きずりながら道場の方へ歩いていった。
その様子がなんとも可笑しく、ミツバは笑ってしまう。土方も棒読みの敬語等、慣れないことをしたため、少し恥ずかしがっていたのだった。
これが、ミツバと土方のはじめての出会いだった。
また、近藤が土方や沖田姉弟を連れ、蕎麦屋で食事をした時のこと。
みんなで、カウンター横一列に並び、蕎麦屋で蕎麦を食す。沖田と近藤は、普通に蕎麦を食べるが、ミツバの蕎麦は、異常であった。
蕎麦の色とは思えない煉獄、赤の山がそこにはあった。しかし、まだ足りないのか、唐辛子を振り続けている。
唐辛子の瓶を使い果たし、四本の瓶が殻になった時、思わず近藤が声を上げる。
「ミツバ殿!こんなに唐辛子を使って!!何回言ったら分かるの!?身体に障るって!!もートシ!お前からも……」
近藤は、土方に助けを求めるが、味覚に関して土方に頼るのは失策だと気づいたのは後になってからだった。
土方は蕎麦にマヨネーズを掛けていた。傍から見ると大きいソフトクリームを作っているかのようだ。綺麗に一本巻き終えた時、満足気な表情を浮かべていた。
「トシィィィ!?え!?お前!?何やってんの?マジで何やってんのぉ!?」
「味のIT革命やー」
「何食ってんの!?その感想も何!?意味わからないんだけど!」
そのよく分からない感想にミツバも不思議と笑みを溢してしまう。土方が蕎麦を啜るのを見て、自分も蕎麦を啜り、味の感想を言った。
「味覚のソウルソサエティやー」
「え、ミツバ殿に関しては本当に分からない!死神!?死神代行なの!?辛くて死神界見えちゃってるの!?」
武州の蕎麦屋には、近藤のツッコミとボケ味覚、それを恨めしそうに眺める沖田の姿があった。
小説で回想って難しいですね。
他の人の物を改めて見直してみようと思いました。