屋敷から病院へ運ばれたミツバは、看護師から厳重注意を受けていた。
「まーた、ミツバさんはこんなもの食べて!刺激になるんだから!こういうのは食べないでくださいね!」
「はい、すみません」
看護師と入れ違いで現れたのは銀時であった。懐から激辛菓子をミツバへ手渡しする。
「依頼の品だよ」
「うわぁ。万事屋さん、本当になんでもやってくれるんですね」
「万事屋だからな」
「お礼はこのお菓子でお願いします」
「激辛買って、激辛貰うのか。激辛トレードだな。お前もいるか?」
「いえ!俺はあんぱんあるんで、大丈夫です!あ……」
「分かってるから出てこい」
銀時が、ベッド下の人物へ蹴りを入れる。不審者の正体は山崎であった。
訓練場で1人、竹刀を振るう土方。修練に励む姿は鬼気迫るものがあり、鬼の副長の名にそぐわない物であった。
「精が出ますね、土方さん。俺にご指導いただいても?」
修練中の土方へ声を掛けたのは、沖田であった。土方は拒否せず、すぐに、2人で打ち合う形となる。
「聞きましたぜ。山崎使って姉上の周りを探らせてるとか?」
「あぁ。そうだ」
「姉上に、どうしてそこまでするんでぇ?」
「あぁ。お前の姉上に何かしたい訳じゃない。狙いは転海屋蔵場だ。俺と山崎で不審船調査をしていた時に、奴の影を掴んだ。調査を進めていた時に、お前らと鉢合わせたんだ。ほぼ確定で、奴は攘夷浪士に武器を密売している。幕府の貿易を担う1人が敵に上質な武器を提供しているんだ。お前の姉の旦那は俺達の敵なんだ」
「アンタって人は……!貿易、商売してるんでさぁ。そういう後ろめたい事もしなきゃなんねぇでしょうよ!」
「確かに、商売だからそういうグレーなこともしなきゃいけないかもしれん。しかし、真選組という立場である以上、俺達は江戸に危害が加わる可能性があるなら黙って見てる訳にはいかねぇ」
「姉上……。もう長くねぇんです。せめて残りの時ぐらい幸せを感じていてほしいんです。ガキだった俺を育ててたから……!楽しいことなんて……。それに、姉上の結婚がここまで遅れたのは、きっと土方さんを……」
「……。明日の夜に逮捕予定だ。準備しておけ」
「土方ァァァァ!!ウァァァァァァ!!」
頑なに逮捕を諦めない土方に、姉の幸せを願う沖田の堪忍袋の緒が切れた。
本気で頭を取りに行くが、激昂した沖田を土方は一蹴する。
結果は沖田が倒れ、土方は立っていた。沖田は倒れながら、土方の背中を見ている。
(気に入らねぇ。本当に気に入らねぇ。あんたはひょっこり現れて、俺の好きなものを横から掻っ攫っちまうんだ。そのくせあのときには……)
それは、近藤たちが江戸へ旅立つ1日前。ミツバは土方と2人で話をしていた。
「ねぇ、もう皆は行ってしまうの?」
「あぁ。俺達は江戸で立派な侍になるんだ」
「そう……」
「……」
「お願い!私も連れて行って。近藤さんや皆、それにそうちゃんと近くにいたい。……十四郎さんのそばにいたい……!」
「「知らねーよ、知ったこっちゃねえんだよお前のことなんか」」
あの日、小さい頃に聞いた言葉と、背中が重なる。姉上はどんな気持ちでこの言葉を聞いていたのだろうか。沖田の体は衝撃で動かなかったが、顔だけは前を向いて、土方の背中を睨みつけていた。
そろそろ、このミツバ篇もおわりですねぇ。