妖刀購入
「……。これもそろそろ限界か?」
土方は自分の刀を見てそう呟く。というのも、銀時に折られ、柳生家との勝負で折られて、刀を2回変えている。
それに直近では、車のホイールに刀を突き刺し、速度を落とす荒業を行ったことにより、3本目の刀も折れはしないにしろボロボロなのであった。
「行くか」
土方はそう言い、真選組屯所を後にした。
江戸の中心から少し外れた下町風情溢れる所に、刀屋があった。そこには、普通の刀から曰く付きのものまでレパートリーが多く、なにより全体的に値段が安い。
土方はここ最近の刀の交換により、経費を多く使用しており、非常に後ろめたさがあった。そのため、今回は刀を自費で購入しようとしていた。
「なぁ、店主さんよ。オススメの刀はないかい?」
「んー、そうだね。オススメではないけど、この刀はどーだい?」
「なんで、オススメって言ってんのに、オススメ紹介しねぇの!?なぁ、なんで!?俺なんかした?してないよね?」
「あー、ええとね。これは妖刀なんだ。見たところよく戦ってそうな雰囲気もあったし、普通の刀よりこういう方が良いかなと思ってね」
「ほぉ〜、妖刀ね……。おれは妖刀なんて信じちゃいねぇが、どんな妖刀なんだい?」
「これはね、何十年、いや何百年前の足利幕府、時の将軍に関係していたむらまちゃという武将さんが所持していた刀で、この刀を持つと性格が変わっちまうみたいなんだ」
「……。性格が変わる……ね。おし、その刀貰ってくよ。妖刀、どんな感じか試してみようじゃねぇの」
「毎度あり。このむらまちゃ、売れずに困ってたんだよ。アンタが買ってくれてよかった。返品は対応しないからね!!」
「おー、わかったよ。(所詮、妖刀なんて眉唾ものだしな)んじゃ、代金ここ置いてくぜ」
「ありがとうございました〜」
土方は、妖刀と曰く付きである、むらまちゃを購入し、屯所へ戻っていった。
しかし、道中で攘夷浪士の群れと鉢合わせてしまう。
「貴様……。あの真選組鬼の副長、土方とお見受けする。さぁ、我らといざ!!」
土方は、攘夷浪士達をジロリと睨みつけ、一言告げる。
「なるほど、お前らは俺が誰だか分かってて喧嘩売ってんのか。なら買うぜ?そのとおり、俺は鬼の副長、土方十四朗だ!!」
その謳い文句とは反対に、土方の体は土下座をしていた。攘夷浪士たちも、想像していた展開と異なっていたため、数秒止まっていたが、直ぐに状況を理解し動き出す。
「おいおい、鬼の副長が土下座してるぜ?」
「こんなやつ切るのもダセェよ」
「土下座してるし、ボコボコにしとくか!」
土方は自分の体と心が噛み合わないのに驚いた。自分は攘夷浪士と斬り結ぶつもりだったが、体は土下座をし、言葉では思ってもない事を発言している。今の自分はどうなってしまったのか。
土方は蹴られ、踏まれながらただ考えることしかできなかった。
「ほんと、この通りです!許してください!!」
「はっは!!命乞いしてるぞ!こいつ!!何が鬼の副長だよ!!」
「そうっスね!ほんと、何が鬼なんだか!!命だけは!!」
「やる気が失せたわ。このような俗物、天誅の資格なし。このままではただの弱い者いじめよ」
「そのとおりだ。もう、帰るか」
「そうだな」
土方は攘夷浪士が、帰っていくのを土下座の姿勢で感じ取るしか出来なかった。自分の言うことを聞かない体に、ただ苛立ちが募っていくばかりであった。