先頭列車から切り離され、少しずつ走行速度が落ちている事を悟った伊東。そして、先程の喧騒と静寂。このことから、前方に向かった隊士はほぼ全滅したと想定した。
この人数差を返り討ちか……、流石沖田君。真選組最強の1人と言われているだけある……。しかし、彼も人の子、多少ダメージや疲労は溜まっているだろう。
そう、伊東が考えていると前方から返り血を浴びてはいるが、特に目立った傷もない沖田が歩いてきた。
「流石だよ、沖田君。あの人数差にほぼ無傷とは……」
「伊東……。この状況なら1分も掛からずお前を斬れる。最後だ、何か言い残すことはあるか?」
「最後だなんて、さみしいことを言うね。確かに、僕だけならもうやられてしまうかもしれないね。だけれど、僕がそんな打つ手なしの状況に陥ると思ったのかい?」
「はぁ?時間稼ぎのつもりか?もう斬って……いや、この音はまさか……」
沖田が耳にしたのは、車のエンジン音。それも数台などではない。何十台もの車両群が列車に追いつこうとしていた。
「そう、そのまさかさ。敵の敵は味方と言うだろう?」
「攘夷浪士、それに過激派か!」
「合っているよ。正式には鬼兵隊と言うようだ」
沖田はその名を聞き、ある危険な攘夷浪士を思い浮かべた。
「来ているのか、あの高杉が!」
「いや、彼は忙しい……。しかし、強力な助っ人を寄越してくれた。それこそ、君たちの監察もお世話になったようだよ?」
「山崎……。もう、話さなくていい。お前もさっきの連中の所に送ってやらぁ」
既に殺気を隠しもしていない沖田。伊東は背筋に寒気が走った。
「怖いなぁ、沖田君。そんなに怒らなくてもいいじゃないか……まぁもう関係ないけれど。それじゃあ、後は任せたよ」
そう言うと列車から降りた伊東。扉の前にはバイクが追走しており、その後部座席に着席したようだ。
「逃げ足だけは速いもんでさぁ。……前方車両との距離は……急がなくちゃ、近藤さん……!」
速度を緩めた列車に車両群が追いついた。荒んだ攘夷浪士達が車からバズーカやマシンガンを放つが、列車に当てる気はないのか、弾丸は見当外れの場所へ飛んでいく。
しかし、列車に近づいていたのは攘夷浪士だけではなかった。見覚えのある真選組の車両、それもボロボロになった状態ではあるが、攘夷浪士達の後方に接近していた。
そして、ボロボロ車の後方からは、屯所で待機していた筈の真選組隊士達が車で追走していた。
「攘夷浪士!?」
「伊東が裏切ったってだけじゃなく、攘夷浪士、しかも過激派と手を組んでやがった!!」
真選組が真っ二つに割れたこの状況。銀時の無線を聞いて、局長を救いに来た隊士達だが、予想外の状況に動揺を隠せていなかった。
「おい、ふくちょーさんよ。こんな状況で局長もあのドSもいない状況だ。お前が発破をかけねぇとじゃねぇのか?」
「そんな、拙者には無理だって坂田氏……。あんなに怖そうな人たちがたくさんいて、銃やランチャーまである。命がいくらあっても足りないでござるよ……」
「鬼の副長がそんなタマかよ……。護りたいって気持ちはそんなもんなのか!?ちょっと妖刀でオタクになったからって……!お前の護るべきものはそのちんけな安全だけか!あの鬼が俺達に頭下げたのはなんだったんだ!!」
銀時が怯えたトッシーの胸ぐらをつかむ。言葉の熱量と比例し、トッシーは前後に揺れ何か覚悟を決めたように俯いた顔を上げる。
そして、無線を手に取った。
「今、真選組局長近藤勲は暗殺されようとしている!謀反人は伊東鴨太郎!!攘夷浪士と手を組み、真選組を乗っ取ろうとしている!!現在、真選組一番隊隊長沖田総悟が単身、戦闘中だ!!ぼ……俺は仲間一人に戦わせる軟弱者の組織、その副長になってたつもりはねぇぜ。いいか、俺達の真選組は俺達で護る!!俺達の頭はてめぇ自身で護るんだ……せ、ぼ、おれの名前は、土方十四朗なりぃ!!!」
その名乗りは、真選組隊士達の心を強く動かした。
むむむ……