万斉の斬撃を弾き、こちらもユキムラで反撃を行うが、なかなか攻撃が当たらない。まるで心を読まれている様に感じた。
「ん……。極端な曲でござるな。ポップかと思えば途端にバラードに、そしてキレイな音色かと思えば耳障りなノイズに……。ここまで矛盾した曲は初めて聴いたでござる。お主、何を抱えている?」
「曲って……。何を言ってるんですか、あなたは!?というか中々強いですね……。全然当たってくれない……。手を抜いてもいいんですよ?」
「お主相手に手を抜くのは危険だと判断したでごさるよ。お主が全力じゃないからといってこちらが手を抜けば喰われてしまいそうだ」
「いやいや、こちらは本気ですよッ!!」
初めて全力ではないと言われ、動揺してしまったが、万斉はこちらの曲とやらを聴いて相手の意思や行動を把握、予測して戦闘を行っているようだ。理屈は分からないが、心理戦ならば負けてしまうかもしれない。
「クソッ!埒が明かない……」
「なぜお主が全力を出さぬか、出せぬかは知らんが余り拙者をナメてもらっては困るでごさるなッ!」
そう言うと万斉は背負っていた三味線を手に持ち、複数のワイヤーをこちらに伸ばしてきた。
「三味線からワイヤー!?」
予想もしなかったワイヤー攻撃は僕の身体に複数傷をつける。しかし、蠢く赫い血管のようなモノが傷をあっという間に修復した。
「そうか、お主はただの人間ではないということか……。どこの天人かは知らんが、治癒力は桁外れの様でござるな。それに、その赫い眼……。そうか、紅桜の時は似蔵が世話になったらしいでござるよ、赫眼」
「その名前、結構広まってるんですかッ!?似蔵さんしか言ってなかったと思うんですが!?」
鍔迫り合いながら、言葉を交わす二人。双方とも息が少し荒くなっている。
「似蔵は白夜叉にヤラれたというが、一人に負けるほど似蔵も紅桜もヤワではないさ。白夜叉との本格戦闘前に、紅桜が似蔵に深く根づいたデータ、そして紅桜のデータに遺されていた赫眼という言葉……。推察するに、白夜叉が手負いの身体で後遺症も残さず勝てたのは、お主が似蔵と紅桜に致命的な傷を与えたのでござろう?」
「凄い推理ですね!!正解かどうかなんて優しく答える気はありませんが!!」
「それでいい、この戦いの歌が教えてくれるでござるよ!!」
何度も刀をぶつけ合い、斬撃を繰り出し躱して交わしていく。相手がどのような人物か、刀を斬り結べば分かるなんてことは無く、目の前の万斉という男は中々の強さだ。しかし、強いだけだ。あの人に比べれば……。