強硬度のワイヤーによる攻撃と、隙を縫うような斬撃。万斉という人は中々強くはあるが、命のやり取りにおいて、あの有馬貴将に勝るものなどいないだろう。地下での戦いや、訓練として何度もあの死神と対峙し続けていたことは無駄ではなかった。
万斉のワイヤー攻撃と斬撃を躱し、ムラマサを振るう。相手は侍、そう簡単に攻撃には当たってくれないらしい。
「ねちっこいですね!いい加減やられてください!」
「それは拙者のセリフでござるよ。まったく、掴みづらいリズムでござるなぁ!」
幾度となく剣戟が重なる。しかし、刹那の隙を万斉は逃さなかった。
「油断は命取りでござるよ赫眼ッ!!」
「しまッ」
ワイヤー攻撃の合間を縫うような一太刀。躱せたはずの攻撃を琲世はモロにくらってしまう。
すぐに腹部は再生しようとしているが、ほんの少しの減速を万斉は逃さない。
「なるほど。再生時は速度が落ちるようでござるな。しかし、先ほどより再生速度がほんの少し落ちているように思える。恐らくだが再生には限度があるのではござらんか?」
「だとしたら!?ったく、本当に貴方はねちっこいですね!」
「再生出来なくなるまで斬り刻むだけでござる。それに、音楽はリズムが重要でござるからな。人によっては粘着質に感じることもあるでござろうッ!」
万斉は減速したタイミングを逃さず刀とワイヤーで攻撃を重ねる。演奏のセッションのようなリズムに琲世は防戦一方になってしまっていた。
「防ぐのに精一杯といった様子でござるな。早く全力を出したほうが良いのではござらんか?」
「こっちは……本気だって、ずっと言ってるでしょ!!」
刀とワイヤーを弾き、距離を取る琲世。万斉は不思議そうに問いかける。
「なぜ全力を出さないのでござるか?死合中に相手をナメ腐るような下郎にも思えんし……。そうか、全力を出さないのではなく、出したくないのか。その理由は?」
「……。化物になりたくない、思われたくないからですかね。それに、本当にどうしようもなければ出しますよ。きっとね」
「挑発でござるか、よかろう。あえてその挑発、ノるでござるよ!!」
万斉は一足で距離を詰め、刀を振るう。ユキムラで防ぐ琲世。幾度かの剣戟のうち、一瞬の間に攻防が入れ替わり、ユキムラで斬撃を重ねる琲世と、凌ぐ万斉。しかし、暫く続くかと思われたその戦闘も、終わりを迎えようとしていた。
万斉の攻撃を躱し、琲世は後ろを取った。万斉が振り返るその前にユキムラを一閃する。万歳が背負っていた、ワイヤー攻撃に必要不可欠な三味線が破壊された。
「これで終わりです」
「まだ、刀が残っているでござるよ」
「よろず屋のみんなが心配だ。それに、ぼくは貴方の命が欲しいとは思ってない」
「甘チャンでござるな……。また死合おう。その時はハイセ、お主の全力を見てみたいものだ」
「……。負傷したのはぼくで万斉さんはほぼ無傷ですけどね。それでは」
去っていく琲世と、その場に佇む万斉。この場での戦闘は終了した。少し遠くの方ではまだ戦闘音が聞こえてくる。まだ戦いは終わっていない。
「さて……。いくか」
万斉は目的地に向けて歩きだした。