当たり前のように近藤さんが座っているので、僕は数秒ほど違和感に気づく事が出来なかった。あれほどの騒ぎがあったというのに、見た所元気で少し安心する。
「近藤さんは追わなくて……というか色々と大丈夫なんですか?」
「あぁ、ハイセくん。あの件だろう?それがな我が真選組には内部監査を担当している隊があってな〜。今はその隊が主に動いてくれているので、俺は一息つけているというわけだよ!」
「そうなんですね。追わない方は?」
「それこそ、総悟とトシがいるんだ。船頭多くして船山に登ると言うだろう?指揮系統が3つもあったら隊士達も混乱するだろうしな。特に今回は桂を捕らえるってのが第一で、他任務の様に複数指揮は必要ないと踏んだのさ」
「ゴリラ、本音は?」
「決まってるだろうよろず屋!お妙さんと無料で飲食できるこの機会、逃すわけがないだろう!!」
「聞こえてますよ、
お妙さんには、下心があふれ出た本音が聞こえていたようで、執行猶予のような発言をしている。
「近藤はいつまでお妙ちゃんを狙っているんだ……。お妙ちゃん下がって。お妙ちゃんには指一本触れさせないぞ、ゴリラゴリラゴリラめ」
「なんで学名呼び!?まぁまぁ九兵衛くん、お妙さんが大目に見ると言っているんだ。今回は食事会だろう?和気藹々とやろうじゃないか。なぁ、よろず屋」
近藤さんは肩を組む様に銀さんに同意を求めたが、銀さんは組もうとした手を弾くような答えを返した。
「もちろん、食事会は楽しくやるつもりだ。お前は呼ばれてないけどな」
近藤さんが明らかに残念な雰囲気を隠さずに落ち込むので、すぐにフォローに入る。
「でも、今回はお妙さんが大目に見るって言ってますし、今回は、うん、今回は良いんじゃないですか?」
「僕も賛成です。いつもはストーカーゴリラですが、あんな事があったばかりですし、姉上もああ言ってましたし今回ばかりはいいんじゃないでしょうか」
僕と新八くんからの言葉を聞いた銀さんは意見を変えたようで、先ほどとは打って変わった発言をする。
「ハイセとぱっつぁん……。それになによりお妙が良いって言ってるか……ならまぁいいか。よく考えりゃ呼ばれてねぇ奴も参加してるしな。おい、店に迷惑かけんなよ」
「流石よろず屋!お前ならそう言ってくれると思ったよ〜。ハイセくんも
「いえいえ、いつも仕事でお世話になってますから」
「こちら……あれ?なにか違う気がする……」
近藤さんも食事会に参加し、数時間が経った頃にそれは発覚した。
「すみません、お客様。お代、こちらになるんですが……」
「あー、どれどれ……。ん?店員さん、これ間違えてますよ、桁が違いますって。というか、違うって言ってくれ頼む!!」
「いや……その、チャイナ服を着たお客様が大量に召し上がっていまして……」
「もっと持ってくるネ!人の金で食う飯は格別ヨ!」
「へぇ、あぁ、そう……」
少し青褪めている銀さんがこちらを振り向く。
「なぁ、ハイセ。お前コレどのくらいなら払える……?俺と合わせてイケるか?」
「うっわ、えげつないですね。こんな金額、飲食店で初めて見ましたよ……ギリですかね?」
「お、イケるか!流石ハイセ!一家に1人の佐々木琲世だな!」
「よく分からないですけど……ありがとうございます……」
中々お目にかかれない金額のレシートを銀さんと確認したが、2人でギリギリ払うことが出来そうだ。しかし、銀さんの策って僕に頼ることだったのだろうか。そう思っていると銀さんはおもむろに立ち上がり、近藤さんに詰め寄っていく。
「おい、ゴリラ。お前コレ、分かった?」
「え?何コレ、よろず屋が持つんじゃないの?」
「あぁ、俺が誘ったヤツらの分はな。後は自腹」
「えぇ……。まぁ分かったけどさぁ……」
その後、同じように服部さんに詰め寄った銀さんは2人にほぼ半額負担させることに成功したらしい。その方法は、策というにはあまりにも無理やり感が強いと思ってしまった。
そうして、一時はどうなることかと思った食事会だが、無事?に終了することが出来た。色々とあったが実に楽しい会だったと思う。ただ、銀さんの財布はほぼ空っぽになってしまったらしい。