神楽ちゃんは、包帯を巻いた男について知っていることを話してくれた。
名前は神威、夜兎の一族で神楽ちゃんのお兄さん、そして宇宙最強と言われている星海坊主の長男でもある。そのお兄さんは幼い頃に家出したらしいのだが、その際、星海坊主の片腕を奪っていったというのだ。僕の想像をあまりに越えたエピソードに、開いた口がふさがらなかった。
その話に加えて、この吉原の頂点である夜王鳳仙についても月詠さんから教えてもらった。若かりし頃、星海坊主と文字通り三日三晩の激闘を繰り広げ、決着がつかなかったらしい。そう、鳳仙も夜兎の一族である。宇宙最強に数えられるあの夜兎なのだ。神楽ちゃんもその一人ではあるけれど、そう多くないと聞いていたんだけど……。思ったより世間は狭いのかもしれない。
まだ子供で細身な神楽ちゃんですらよろず屋いちの怪力の持ち主なのだ。宇宙最強の星海坊主やその息子、夜王鳳仙は一体どれほどの力なのだろうか、中々に恐ろしい人達なんだろう。
「それに夜王鳳仙は、宇宙海賊の春雨に所属していたという、団長じゃったらしい。絶対的強者じゃ……」
「そんなやべぇ奴の所に、神楽ん家のやべぇ奴が晴太を連れてったのか……おいおい、ヤバヤバパラダイスだよ。晴太生きて帰れんのか……?」
「そこは、堂々とアンタが絶対連れ帰るとか言う所じゃないの!?なんで自信なさげなんだよ!!」
「アニキもだけど、ハゲに負けず劣らずのエロジジイ相手に自信あるヤツは自信過剰というか、自意識過剰とイウカ……」
「本当にスゴい強いんですね……。しかも月詠さん以外の百華は問答無用で殺しに来ますし、このままでは埒が明かないですね」
改めて、現状を考えてみると相当良くない状況であることが皆分かったのか、僕含めて深刻そうに悩み始めた。
「ん〜、そうだなぁ、元々考えてた正面突破はほぼ無理だろうしなぁ……」
「確かに、落ち着いて考えると本当にじょ良くないですね……」
「バレずに忍び込むトカ?」
「おいおい、そりゃ難しいだろ。男3人に女って言ってもまだガキ1人だぜ?怪しすぎる……」
そういえば、僕は似たような状況で、結構ナイスな作戦を決行していた……。
「なら、いい考えがあります」
「なんだ?ハイセ言ってみてくれ」
「なんですか、ハイセくん!」
「言ってみろ、ハイセ」
「いい考えとはなんじゃ?」
皆の視線が集まり、僕のいい考えを聞こうとしている。そんな皆の期待に応えるためにも、堂々と僕は言い放った。
「僕らは女になる」