僕は情報収集を兼ねて、神威さんとの会話を続けた。核心に触れる部分は厳しかったが、おおよその状況は理解できたと思う。天人が町中を闊歩するようになっても、この街は日の光を浴びずに過ごしてきた。そしてそのまま時は流れ、夜王鳳仙がこの街を支配したというわけだ。そして、神威さん達宇宙海賊春雨は、この街の甘い汁が少しでも吸いたいので夜王との交渉に来ていたようだ。
「カクカクシカジカって訳。キミが欲しい情報はあらかた伝わったんじゃない?さ、次は俺の願いを聞く番だ」
神威さんはそう言って、この屋敷の中で最も荘厳な襖を開ける。すると、そこには和服の老人が、座して酒を嗜んでいた。
「あぁ、神威か。なんだ、また死合うか?悪いが今は待て。このまま、しばらく酒を味合わせてくれ」
「この酔いどれジジイは……。鳳仙、この青年は日輪をアンタから奪おうとしている人間だ。放置してると、吉原の、アンタの太陽が奪われてしまう。良いんですか?」
「いや、僕は日輪さんを奪おうだなんて……。ただ、晴太君と……」
「ほぉ……あの時の赤ん坊が小僧になって戻ってきたか。まぁ、小僧1人にどうこうできる問題ではない……物理的にもな」
夜王鳳仙はやけに含みがある言い方をしたので、非常に気になったが、この状況はどうすればいいのだろう。前門の夜王、後門の神威だ……。神威の目的は僕と夜王の闘い……。しかし、晴太くんに特に危害が加えられていない今、夜王と事を構えるのは悪手だと思う。しかし、膠着した状況に不満を覚えていた獣が想像もしない方向に動きはじめた。
「なんかジジイはご機嫌で戦う気なさそうだし、ササキハイセくんも様子見で動かない……。ん〜つまらないな!せっかく強者が集まってるんだ。やることはさ、生命を懸けた血肉沸く闘争でしょ!」
神威さんが凄まじい速度で、夜王へ近づきその拳を放った。速度には追いついたが、あまりに突然のことだったので、反応が一歩遅れてしまっていた。
それに比べて、夜王は見事に反応しており、拳を掌で止めている。
「そういった気分ではないが……まぁ、久しぶりに弟子を揉んでやるのも悪くはない。後悔するなよォ!」
僕の目の前で、夜王と神威さんの闘いがはじまった。宇宙最強戦闘種族の1種、夜兎の最高峰レベルの戦闘は、この世界で今まで見てきた比ではない。しかし、夜王と神威さんで殺りあうなら僕は必要ないんじゃないかと思っていたが、神威さんの狙いに気づいたのはその直後だった。
神威さん達が、十数秒前と比べて明らかに近づいてきているのだ。戦闘の余波が暴風のようで、その元凶達がこちらへさらに近づいて、最終的には僕を飲み込んだ。