これは料理……そもそも食べ物なんだろうか。見た目は一言で表すなら炭だ。ボロボロの炭。この世界の人達は、炭が主食なのか?もしそうなら、
実は僕人肉しか食べれないんですー、テヘ。
って言って納得されたり……いや、そんなことは無いな。確実に引かれる。冗談に思われたとしても、つまらないから空気感が悪くなる。本当になんだこの黒いのは。見てるだけなのに考えまでおかしくなってしまった。
「お妙さん、これはなんの料理ですか?」
「玉子焼きよ」
「アハハ、そうですか〜」
黒い玉子焼きがこの世に存在していることに驚いた。いや、本気で言っているのか?料理と言いつつ実は炭でしたドッキリの方がまだ納得できる。
黒い玉子焼きに驚いていて、気付かない内に新八くんの姿が見えなくなっていた。近藤さんの話をしていた時までいたはずなのに……。
「そういえば、新八くんは?」
「今日はお昼ご飯をたくさん食べたんでしょ?さっきそう言って部屋に戻っていったわ」
「それ嘘です。おにぎりぐらいしか食べてるの見てません」
「もう、新ちゃんったら。ちょっと呼んでくるわね」
一人だけ逃げるなんて許さない。僕は味の拒絶反応に耐えて、新八くんもこの黒いのを食べるんだ。共に逝こう。
「いや、本当にお腹いっぱいで、今日はたくさん食べたんですって」
「ハイセくんが、おにぎりしか食べてるの見てないって言ってたわよ」
「僕を道連れにしましたね!自分は断れないからって!」
「道連れ?その話、詳しく聞こうかしら」
うわ、お妙さんの笑顔怖いなぁ。なんていうか凄味がある。これ、食べないと僕もヤバそうだ。
「じゃあ、僕いただきますね」
口に入れる寸前、これから訪れる地獄を想像しながら僕は咀嚼した。その瞬間、僕に訪れたのは衝撃だった。一応食べ物だから、と想像していた生臭さや、吐きそうになるくらいの味覚の暴力は感じられないかった。
「……」
「ハイセさん?」
「どう?ハイセくん」
久しぶりだった。食べ物を食べてすぐに吐き出さなかったことは。なんだか久しぶりに人間らしい食事ができたような気がする。ちょっと目が潤んできた。
「その……なんというか……ありがとうございます」
喰種は舌の味覚が人間のそれと大きく異なる。食べ物から栄養は摂取出来ないし、人間の飲食物だと珈琲以外は普通に飲むことが出来ない。このことから考えると、この黒い玉子焼きは人間の食べ物としてカウントされていない。そのため、喰種の僕が食べても味覚の拒絶反応が出ないのだろう。かといって生物が食べていいものなのかと問われると微妙なところではある。
この黒玉子焼きを食べてから思考が冷静になってきている。ふと二人の方を見てみると、新八くんは心配そうな目でこちらを見ていて、お妙さんは少し嬉しそうだ。
「けっこう、いけま……」
世界がまっくらになった。
やっと、ダークマターを出せました。あと、何話かして、原作長篇に入りたいなぁと思ってます。