琲世の背中からは血のような赫色をした、尻尾のような触手のような物体、流動的な赫子が4本生えていた。琲世の世界では珍しくもない喰種の器官であるが、この赫子を見た神威は非常に愉しそうに笑みを浮かべている。
「いいね♪びっくりさせるだけで終わらないでよッ!」
「僕のことなんてあんまり知らない方がいいと思います……よ?」
僕は人差し指の中ほどに親指を乗せ、骨を鳴らす。元々絶望と苦痛の象徴のような癖だったが、今では不思議と自分からこの動きをしてしまう。マイナスやネガティブといった記憶でしかないが、脳裏に強く焼き付いた、心に刻み込まれたこの動作はもう忘れることは出来ないのだろう。
神威さんが近づいてくる。親指を離すのと同時に赫子を向かわせる。全て躱されるか弾かれてしまった。しかし、相手が4本の赫子を凌いだと同時に、今度はこちらが接近し、腹に全力の殴打を叩き込んだ。
「カハッ、ハハハ!!」
「やっぱり効かないんです……ねッ!」
ヤモリも効かなかったのだ。ヤモリ以上の強さを持つ相手に効くはずもない。だがそんなことは想定済みだ。相手が反撃してくるその前に、全身を使った蹴りを一発。さすがに堪えたのか、少し後ずさった。
「僕を殺そうとしたんだ……僕に殺されても、仕方ない……よね?」
「あぁ、求めてたのは……これだ……命を掛けた闘争、そしてそれに打ち勝ち!俺は真の強さを手に入れる!」
神威さんの連撃、薄皮1枚で躱す。ギリギリで避けるのを読んだのだろう。連撃の最後は躱されるのを前提で攻撃をしてきた。赫子で防ぐ。
しかし、夜兎というのは恐ろしい。赫子で防いだはずなのに、貫通したような衝撃が僕を襲った。それに、噛み千切った頬ももう血が止まっている。あと数時間で元通りになってしまいそうな治癒速度だ。
「夜兎っていうのは本当に恐ろしい……」
「お前も中々だよ、ハイセ……」
止まっていた2人が動き出す。片方は拳を、もう片方は器官を伸ばしそれぞれが交わる。
「同じ手を!!」
「使うと思います?」
「……!!1本足りない!?」
神威さんが勘づくより先に、一本だけ地面に忍ばせていた赫子を突き出す。絶対に直撃コースだったはずだが、寸前で体を捻り、少しのダメージしか与えられなかった。しかも攻撃を喰らった勢いそのままに、赫子を切断された。一体どうなってるんだこのイキモノは……。
「まだまだやれるだろ?ハイセ……」
「神威……」
殺す気なんてさらさら無かったが、このままだとこちら側がヤラれてしまうかもしれない。これでも全力を出してはいるのだけど……。
「遠慮はしなくていい、俺ももう……あったまってきた所だ!!」
「まだ、本調子じゃなかった!?なんなんですかアンタ!?」
「俺は神威!ただ、血と闘争を求める