数えきれないほどの衝突と、攻撃と防御を重ねている。神威は戦闘が長引くほどより動きが洗練され、琲世も久し振りの赫子を用いた戦闘だったが、この世界の中でも屈指の強者との闘争と血の香りで少し錆びついた本能が目醒めてきていた。
「ハイセ……もっと広く使おう!こんなチマチマ
琲世は無言で薙ぎ払うように赫子を一閃するが、薄皮1枚で回避する神威。琲世の赫子による薙ぎ払いは、部屋を5つほど破壊していた。
「チッ……外した……」
「良いね!
神威も負けじと反撃を行う。琲世の片足を掴み、全身を捻って回転、遠心力と夜兎の力をフルに使って投げ飛ばした。
今までとは比べ物にならない威力で投げ飛ばされた琲世は、部屋を十数程突き破り、別の場所にいた夜王鳳仙に激突する。そのまま鳳仙も巻き込んで壁に激突、そうしてやっと勢いが停止した。
「クソガキ共が!!この儂の邪魔をしおって!!」
「うるせぇ!!クソジジイ!!今良いところなんだ!!」
めり込んだ壁から立ち上がり、傘を振るう鳳仙と、琲世との真剣勝負に割り込まれた(琲世を投げ飛ばしたのは神威)怒りを込め傘を薙ぐ神威。夜兎同士の衝突は、その場にいた全員に圧倒的な衝撃波と死の重みを感じさせた。ある2人を除いて。
「イッチチチチ……。たく、ジジイだけじゃなくてバカ兄貴まで乱入かよ……。おい、ハイセ。まだ闘えるよな?その派手な尻尾はただのオシャレじゃねぇだろ?」
「銀さんにも観られちゃいましたか……ええ、ただのアクセサリーじゃないですよ、立派な捕食器官です。あ、今武器あります?無ければコレ使ってください」
琲世は、赫子から予備として所持していたもう一つのユキムラ(改造前)を取り出して渡す。銀時はユキムラを受け取り、軽く数回振るった。
「コイツぁ……。良いのか?大層なモンじゃねぇのか?いつぞやの紅桜より死の……濃密な命の雰囲気を感じるぜ。それにお前の武器は……」
「後で説明しますよ。それに、今回は本気に加えて全力モードです。武器は用意できるので……」
琲世はそう言って赫い眼を更に血走らせる。そうすると、赫子が更に四本生え、琲世の四肢を包んだ。気づくと琲世の四肢は血のように赫く、指先がまるで獣のような鋭い爪の形に変貌していた。
「へぇ……。それがオメェの全力ってわけかい……。正直、一人じゃあ、あの老いぼれは荷が重かったんだ、手伝ってくれるか?琲世」
「僕は一人でもなんとかやれそうでしたけど……この感じだとここにいる皆さんであの夜王と対峙しそうですね……正直、人が多く死なれても困るので、銀さんと僕であの獣達を抑えたほうが良いですね。やりましょうか、銀さん」
銀髪と黒が混じる白髪。双方とも今は血塗れだが、その目には怯えや恐怖は微塵も感じない。白夜叉と赫眼は、眼前で争う二匹の夜兎に吠える。
「おい、喧嘩相手を間違えてるんじゃあねぇ!テメェらの相手はオレ達だ!この街を陽光届かぬ地下に閉ざし、太陽の代わりに女を愛でて渇きを癒そうとするなんざとんだお門違い!この街にも、晴太にも太陽を取り戻す!枯れた老いぼれにも日光浴してもらわねぇとなぁ!」
「神威さん、アナタが神楽ちゃんの兄であることは聞きました。でも、アナタ神楽ちゃんが傷ついても良さそうな感じのことを言ってましたよね?本気で殺そうとはしてないんでしょうが、傷つけたのは事実。このまま引き摺って行くので、神楽ちゃんの前で謝ってもらいます!」
「フハハハ!!よくぞ吠えた!!我らに敗れ、仲間も女も土地も魂も奪われた侍風情が!!その意気やよし!この儂自らの手で今度こそ亡霊にしてやろう!!」
「ハイセ……いいね!いいよ、オレが負けたら愚妹にもハゲにも謝罪しようじゃないか!しかし、そうだね……代わりにオレが勝ったら……うん、お前はオレの下に来い!ちょうど一人欠員が出たんだ。そして、満足するまで闘おう!どちらかの生命が燃え尽きるまでさァ!」
自らの国と仲間を護る為に、白夜叉と赫眼が。そして完全に侍の魂を折るため、そして新たに出会った強者を己が手にし、闘争本能の赴くままに、夜王と宇宙最強の血筋がぶつかり合う。