仮面ライダーAGITΩ〜Shining Brave〜 作:シュープリン
August 6th
『鳥白島に来ませんか?』叔母からそんな手紙が届いたのは夏休みに入る少し前。去年ばーさんが亡くなったのをきっかけに、遺品整理の手助けを頼まれたのだ。
今年の夏は暇だった。■■までは■■に明け暮れて毎日のように■■へ行っていたけど、今年は■■がきっかけにほとんど引きこもり状態だった。だから遺品整理の話は渡りに船だった。
きっと今年の夏はホコリまみれになりながら一日中蔵の中で古いものを片付けたりするのだろうとそう思っていた。
しかしーー、
「軽快軽快♪」
今俺は、何故かサンサンと輝く太陽の下で、スーツケースを押していた。その上に女の子を乗せながら。
「まったく、いいご身分だな」
鼻歌まで歌って、足をパタパタさせている。
「スーツケースに乗っているのも結構大変なんだよ?一回試したでしょ?それとも、また乗ってみる?」
「止めとく。また海にでも落ちるのがオチだ」
スーツケースに乗っている少女ー久島鴎ーと出会ったのは、鳥白島に来てすぐのことだった。
『蔵の整理はまだいい』と鏡子さんに断られ、島を散歩していたときにいきなり声を掛けられた。
『スーツケース押してくれない?』と。
それから何度も彼女と出会い、鴎は10年前に島に来ている事、その時仲間と一緒に『ひげねこ団』を結成し冒険した事、その末に島の秘密を見つけ、それを宝箱に隠した事を知った。
宝箱には4つの錠前が掛かっていて、その鍵は10年前に島のどこかに隠したという。手掛かりは手帳に記された意味深な文だけ。俺は鴎に誘われるまま成り行きでその鍵を探していた。
そうして見つけた鍵は現在3つ。
『かいじんがしゅごするかいていに』
→ 鳴瀬神社の階段横にある灯籠の裏に隠してあった。
『ばんけんがねむるめいふのいりぐちに』
→ 火葬場の玄関にある犬小屋の中に隠してあった。
『ばじりすくがひしめくさばくに』
→ しろはの家の鶏小屋に隠してあった。
そして最後の鍵、その在り処が『おおわしがすむてんくうのしろに』だった。
それを巣箱だと推理した俺は、ひとまず山を目指して進んでいた(鴎を押しながら)。
※
まずは情報収集という事で、天善の秘密基地へやってきた。
「巣箱?確かに見たことがあるな」
「どれくらいある?」
「どうだろうな。2,3個だったと思うぞ」
「どの辺?」
「ここからそう離れていないが、巣箱がどうかしたのか?」
「鍵をそこに隠したの」
「???」
「あまり気にしないでくれ」
「彼女は...」
「久島鴎です」
「どうも」
「卓球やってるの?」
鍵を探している張本人は既に巣箱から卓球へ興味が移っていた。
「あぁ」
「おもしろそー!ちょっとやっていいかな?」
「悪いが、遊びじゃないんだ」
「いいからいいから。ちょっと打ってみて」
「....しょうがない。悪いが性格上、手加減は出来ないぞ」
「どんとこい」
「はーーーー!」
本当に手加減は無かった。球は鴎の横をすり抜け壁に激突した。
「ぽかーーーん」
鴎自身、何が起きたか分からないといった感じだった。温泉の卓球とかを想像していたのだろうか?
「見えなかった...光速?」
「さすがに言い過ぎだ。が、光速に近くはある」
「すごいすごい!どうやったらあんな光速スマッシュ打てるの?」
「光速スマッシュ...か」
満更でもない名前だったらしい。
「ま、まぁ、特訓の賜物といった所かな」
天善は謙遜しながら言った。
「特訓、凄い!」
「いや、特訓はあくまで手段であって、結果が伴わなければ凄くも何ともない」
「結果出てるじゃない。光速スマッシュ!」
「光速スマッシュ...」
「特訓、凄い!」
「特訓、凄い...」
天善はそっと鴎に向かって微笑み言った。
「卓球台、好きに使ってくれ」
「わーーーい!」
※
卓球をひとしきり楽しんだ後、俺と鴎は天善から教えてもらった巣箱の場所へとやって来た。
「あった。あれじゃないかな?」
鴎が指差す方向に巣箱があった。
巣箱は新しい物、古い物、大きい物、小さい物と千差万別だった。
「どれから探そうか?」
「そうだな...まずは古い巣箱からだな」
俺は見えている巣箱の中から一番汚れている巣箱を指差した。10年前に隠したものなら、巣箱も古くなっているだろうという判断からだった。
「じゃあ行ってくるよ」
当然、木登りは男が行くべきだ(そもそも鴎は今、昨日借りた制服を着ているので下がスカートだった)。俺は幹に足をかけた。
「頑張って」
背後から鴎の声援を背後に受け、するすると登っていった。木登りは不得意ではなかった。子どもの頃はよくやったものだ。まさかこの年になってまたやるとは思ってもみなかったが。
子どもの頃は田舎とは言わないまでも閑散とした場所に住んでいた。ゲームセンターなんてものもなく、小さい子用の小さな公園がある程度で、遊び道具はほとんど無かった。だから、ハラハラ出来る遊びとしてよく木登りをしていた。親父に見つかっては「危ない!」と叱られたっけ。その親父はーー、
ーーーーあれ?
そこで俺の思考は止まった。幽体離脱を思わせるような、木に登っている俺を別の俺が見ているような感覚ーーー。
俺は今、何を考えた?
親父は■■■■に■■■変わった。その末に■■■と考えなかったか?何を言っているんだ?
親父はいる。俺の家にいる。そもそも俺は、親父から言われた言葉がショックで、あれよあれよとここに来たんじゃないか。
あのーーー
「おーーーーーい!!」
足下から聞こえた声に俺はハッとなった。フワッとした感覚は消えていた。
「どーしたのー?あったーーー?」
気が付くと俺は巣箱の横まで登っていた。
「これから探す所ーーー!!」
俺は鴎にそう応えると巣箱の中に手を突っ込んだ。
そしてすぐに、固い感触を手に受けた。それを握って巣箱から出す。
「おっ」
手には、鍵が握られていた。
「おーい!あっt...」
鍵を鴎に見せようとしたその時だった。
バサバサッ!!
巣箱を根城にしていた鳥だろう。自分の巣を攻撃されたと思ったのか、突如俺に向かって攻撃をし始めた。翼をバサバサと羽ばたかせ羽を散らし、嘴を使い俺を啄み始める。
突然の事で俺はただただ受けるだけだった。
そしてーー
「あっ...」
気が付くと俺はまた幽体離脱の感覚を味わっていた。
しかし今回は気持ち的ではない。物理的にだ。
足の裏にあった木の感覚が消え、俺の体は宙に投げ出されていた。
俺の眼前には空が広がっていた。澄みきった青い空が。
だが俺は、それを忌々しく思った。
空が黒く塗りつぶされる光景が目に浮かぶから。
鳥とは似ても似つかない白い点が俺に、大切な人に迫ってくるから。
ーーーーーー
俺はさっきから何を考えているんだ?
そうだ。この思考を島に行くフェリーで会ったおばーちゃんがこう言っていた。
"ヘジャプ"と。
「ーーーーー!」
鴎の声が聞こえた。彼女の口から発せられた言葉は、馴染み深い、けど馴染まない、馴染んではいけない言葉のように感じた。