仮面ライダーAGITΩ〜Shining Brave〜   作:シュープリン

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August 8th〜August 15th

「これ見て!」

 

「何それ?この島の地図?」

 

「そう!この☓の場所まで行きたいの!」

 

小さな女の子が、男の子に向かって何か話し掛けている。

 

「ふーん、何かあるのか?」

 

「お宝」

 

「何それ、うそだろ。そんなものあるわけがない」

 

「だから、それを確かめに行こうよ!」

 

「えぇ...」

 

女の子が男の子に向かって何かをごねていた。男の子がそれで困った顔をしている。

 

「何で俺なんだよ?」

 

「運動神経がよさそうだから」

 

女の子が満面の笑みを浮かべながら続けた。

 

「困ったとき、何とかしてくれそう!」

 

「困ったときに何とかなるのは俺だけだぞ?」

 

「ついでに私も何とかしてくれそう!」

 

「あのなぁ...お前、名前は何て言うんだ?」

 

「私は鴎」

 

「かもめぇ?」

 

※〜August 8th〜

 

幸いにも骨は折れていなかった。とはいえ、酷い捻挫だ。腕にはガッチリとギプスが付けられている。

 

「・・・・・」

 

責任を感じた鴎が、『しばらくお世話をする!』と言い、昨日から岬家に転がり込んでいた。

 

今もーー

 

「ちゃんと洗ってる?」

 

「洗ってるよ」

 

今もメイド姿の鴎が忙しなく働いていた。今は成り行きで、俺に靴下を履かせる流れになっていた。

 

「おっ...」

 

「じっとしてよ」

 

「何かくすぐったいから」

 

「何で靴下履くだけでくすぐったいの」

 

「やられたら分かるよ」

 

「ほんとかなぁ?」

 

訝しげな表情を浮かべ、

 

「じゃあ私にも履かせてみてよ」

 

たかと思いきやすぐに笑顔でそう言った。

 

「え”」

 

「はっ、それが狙いか!」

 

「狙わない。そもそも俺、手を怪我してるから無理だしー」

 

鏡子さん、は蔵の整理でいない(そもそもこんな事頼めば『お姉さんに電話』という流れになりそうだ)。

 

今、居間にいるのは手を怪我している俺と鴎だけ。鴎に靴下を履かせられる人はいなかった。

 

俺と鴎が見つけた4本の鍵。その鍵で宝箱を開けると、中から地図が出てきた。地図にはこの島の地形と船が描かれていて、船のところにバツ印が印してあった。

 

10年前、サマーキャンプに来ていた鴎は冒険の末、海賊船を見つけたとのこと。

 

「まだ騒ぎになっていないから、きっとそこにあるんだよ!」

 

鴎は嬉々とした顔で言う。確かに、そんな話は聞いたことがない。もしかしたら本当にあるのかもしれないと俺も思い始めていた。

 

※〜August 9th〜

「鏡子さん、ちょっといいですか?」

 

「どうしたの?」

 

俺は鴎から渡された地図を見せた。

 

「この辺ってどういう所ですか?」

 

「山だね」

 

「洞窟とかあるんですか?」

 

「洞窟というか...採石場だったから、それで洞窟みたいになっている所はあったかなぁ」

 

鏡子さんが思い出すように言った。どうやら洞窟があるのは本当らしい。

 

「だけど、ダメだよ」

 

「?何がですか?」

 

「そこは、子どもが入り込もうとするから、今は封鎖されているの」

 

「は、はぁ...」

 

「その地図をどこで手に入れたかは知らないけど、興味があっても入っちゃダメ」

 

「いやいや、聞いてみただけですよ。行くわけないじゃないですか」

 

じーーーーっと鏡子さんが俺を見て言った。

 

「もしもここに行きたいと言うのなら、」

 

「言うのなら?」

 

「家に連絡します」

 

ゾッと悪寒がした。

 

※〜August 10th〜

「あの辺の山はなぁ...」

 

「採石場跡地だとか」

 

「あぁ、そうそう」

 

駄菓子屋で買い物をしていた良一にそれとなく聞いてみた。

 

「昔使っていたトロッコの線路とか残っていたが、まぁそれだけだな」

 

「それだけ?」

 

「落石事故があったとかで今は封鎖されててな」

 

「洞窟とか無かったか?」

 

洞窟に入ったと鴎が言っていたので聞いてみた。

 

「採石場なら掘った跡とかありそうだが、それも無かったなぁ。大方、埋めたあとなんだろう」

 

※〜August 15th〜

捻挫して1週間、俺はようやくギプスを取れた。まだ多少鈍い痛みは走るが、日常生活には問題無さそうだ。明日の天気も予報では快晴。それらの条件は、俺たちにある事を後押しさせた。

 

そう。冒険の再開だ。

 

俺がそれを提案したら、鴎は飛び上がって喜んだ。とは言え、鴎が入ったという洞窟がどこなのかは分からずじまい。

 

地図には『おやつの方向に進むべし』と書いてあった。

 

おやつ、つまり15時だ。メモの意味は分からないが、数少ないヒントだった。そこで俺たちは、14時頃に地図の近辺に着くように昼過ぎに家を出るという事になった。

 

「だとしたら...」

 

俺たちの計画が決まったとき、鴎が何かを思い出したかのように口を開いた。そして次の瞬間、目を輝かせながら言った。

 

「おやつ買っておこうよっ!!!」

 

ということで、俺と鴎は今駄菓子屋にいる。

 

「さぁて、何を買おうかなぁ〜♪」

 

300円を握りしめながら、鴎は揚々と駄菓子の選別を始めた。

 

対して俺は、あまり乗り気では無かった。ここにだって鴎の付き合いで来たようなモノだ。

 

適当な気持ちで俺は店内を見渡した。

 

うんまい棒、5円チョコ、酢昆布...定番な物は一通り揃えられていた。この辺から適当にーと思っていた時、ふと俺の目の端に気になるものが写った。

 

『ブルジョアなチョコ』 250円

 

「.....」

 

駄菓子の「駄」には値打ちのないものという意味が込められている。原材料は安く且つ包みを最低限にすることで、子どもでも買える手軽な菓子を実現したもの、それが駄菓子だ。

 

しかし目の前にあるこいつはどうだ?『季節限定』『安納芋とカカオのときめきハーモニー』パッケージにある記載文句が全ての逆を行っていた。

 

安納芋が安いわけ無いし、そもそも「限定」という言葉が駄菓子には似合わない。

 

いや、正確に言えば「限定」という言葉はあるが、あれは駄菓子に少しでも付加価値をつけようと試行錯誤した結果であり、実際は年がら年中売っている代物だ。

 

しかしこれからは、そんな付け焼き刃な感覚は無かった。ここで買わなければ、これを逃したら一生手に入らない。そんな魔力を、過剰包装されたパッケージから発していた。

 

これは最早菓子にあらず。菓子の仮面をかぶった、スイーツ。

 

「.....ゥ...」

 

俺はゴクリと生唾を飲み込んだ。

 

〜10分後〜

「お待たせ〜♪」

 

「おう」

 

鴎が駄菓子屋から出てきた。

 

「で、お前は何を買ったんだ?」

 

「こんな感じ」

 

鴎が得意気に見せてきた。

 

「なっ...」

 

鴎の手にあるものを見て俺は驚愕した。

 

『季節限定』と書かれたきらびやかなパッケージされたチョコレートの袋。それは紛れもなくーー

 

「何で250円もするチョコ買ってんだ!?」

 

「え?だって美味しそうだったし...」

 

「250円のチョコなんて、大人ですらちょっと考える品物だぞ」

 

「だって、300円あるんだしいいじゃない」

 

鴎が少しムッとしたような感じで言った。

 

「1品で250円も使ったら、残りは50円だ。こういうお菓子というのは色々な物が持ちつ持たれつで支え合ってこそ意味を成すんだ。お前のそれは、例えて言うならG3と適当な警察で作ったG3ユニットなんだ」

 

「ジ...ジースリー?」

 

「そんなんでアンノウンと戦えるのか?」

 

「ちょ...どうどう落ち着いて!さっきから何を言っているのか全然分からないよ。誰と戦うって?」

 

「あれ?俺なんか戦うとか言ってたか?」

 

「言ってたよ。アンノウイモがどうとかって。欲しいの?だったら買えばよかったの...に...」

 

鴎が俺の持ってる駄菓子屋の袋に目を落とした瞬間、鴎の口は止まった。視線の先にあるモノに気付いてしまったからだ。

 

そして再度俺の顔を見ると言った。

 

「自分だって買ってるじゃない!」

 

「さて、だいたい準備できたか」

 

地図、登山グッズ、食料の缶詰、野宿用のテント(良一に借りた)...etc 

 

中々の大荷物だ。大きめのリュックも借りてきたが、全部入るだろうか?

 

「私の荷物は全部ここに入るから大丈夫だよ」

 

「おぅ...って、テントも入ったのか?」

 

女の子と同じテントで二人きりというわけにもいかないので、鴎用に小さめのテントも良一から借りていた。

 

「うん。入ったよ。他の荷物も全部」

 

「あっ、本当だ」

 

よく見たら、今広げている荷物は全て俺の荷物だった。鴎はスーツケースの中にササッと入れてしまったらしい。

 

「そのスーツケース、元々は何が入っていたんだ?」

 

「それはね、教えてあげないよっ」

 

外はすっかり日が暮れた。鴎は当たり前のように夕食を取り、片付けが終わると俺の部屋に戻ってきた。

 

「・・・・・」

 

えっ、何で帰らないの?

 

「お前、いつまでいるんだ?」

 

「うん?」

 

「明日は早いんだ。早く帰って寝ろ」

 

「いやいやいやいや」

 

鴎はさも当然かのように笑って言った。

 

「今日は泊まっていくよ」

 

「明日出発するんだし、その方が早いじゃない!」

 

「うーーん...」

 

「鏡子さんはいいよって言ってくれたよ」

 

「マジか」

 

あの人もざっくりしてるなぁ。

 

「じゃあせめて他の部屋で寝たらどうだ?空いてる部屋ならあるっぽいし」

 

「えぇ...掃除してもらったりする必要があるから申し訳ないよ」

 

「じゃあ鏡子さんの部屋とか」

 

「迷惑がかかるよ」

 

「俺の迷惑も考えろ」

 

「迷惑なの?」

 

「いや、一応男女だし...」

 

女の子と寝るなんて、それこそ真由美以r

 

女子と同じ部屋で寝るなんて()()()()。恋人でもないのにそれをするのはさすがに気が引ける。

 

「ふむ...一応男女...」

 

顎に手をあて、何かを考え始めた。

 

と思いきや、

 

「あーーーーー!」

 

気付いた。

 

「ちょっと奥さん、この人エロい事考えてましたよ」

 

「いや俺が考えてたとかじゃなくて一般的な話だっ」

 

「ひどいことをしたら、ただじゃおかないからね」

 

「慰謝料を払えと!?」

 

「違う。そこにあるスーツケースのすーちゃんがガブリといくと思ってほしい」

 

「はいはい」

 

その一言で馬鹿らしくなりこれ以上の議論は辞めた。

 

世間知らずというか怖いもの知らずというか。

 

あのスコーピオンとは本質は変わらないの

 

「ありがとう」

 

「えっ?」

 

「付き合ってくれてありがとう。私、昔のワクワクした気持ち、思い出してる」

 

「そうか。俺の方こそ...」

 

そこで俺は言葉を詰まらせた。

 

「ん?」

 

「いや、会えるといいな、友達と」

 

「うんっ!!」

 

鴎は大きく頷いた。

 

今の言葉は本心だ。10年前の話をたくさん聞いた。鴎がどれだけその思い出を大切にしているのかが分かった。当時の友達と再会して思い出話に花咲かして欲しい。そんな光景を俺は夢見ていた。

 

だけど、さっき口から出かけた言葉は違う。鴎からの「ありがとう」という言葉で湧き出た感情を咄嗟に隠した。本心を別の本心で誤魔化したのだ。

 

どうしてこんな感情が出たのか俺にも分からない。

 

自分の気持ちなのに。

 

「ねぇ、あなたは将来何になりたかった?」

 

眠りに落ちる前、鴎からそんな事を聞かれた気がする。

 

俺は何も答えることが出来なかった。

 

何をすればいいのか、何がしたいのか、それが今の俺には分からない。

 

何の道標もなく放り出された船のようにただ悠然と漂うだけ。未来を考えるのを止めて、もうどれだけ経つのだろうか?

 

俺はどこへ向かっているのか。その答えは無い。答えがあるのかすらも分からない。

 

鴎からの感謝の言葉。その言葉を聞いたとき、俺の中から何故か謝罪の感情が浮かんだ。

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