仮面ライダーAGITΩ〜Shining Brave〜   作:シュープリン

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August 16th

「では、しゅっぱーつ!」

 

冒険当日、天気予報は当たり絶好の夏日和だった。ギラギラと輝く太陽が暑く眩しい。

 

「〜♪」

 

横にいる鴎もそんな夏の太陽に負けず絶好調だった。楽しそうに鼻唄を歌っている。

 

しかしーー、

 

「・・・・・」

 

改めて並んで歩くと遅いなこいつ。普段はスーツケースを押したり押されたりしていたから気が付かなかった。

 

まぁ俺も重い荷物背負ってるしそんなに急いでいないし、ゆっくり行こう。

 

竹本さんの家の庭を抜け、乾物屋の裏手を通り、富士見さんのお宅を通らせてもらい、神社の裏手を通り、飯野さん宅を通らせてもらい...

 

別にそんな回りくどいルートを通らなくても採石場跡には行ける。ただ、のみきから見張られているから正攻法では行けないだけだ。このルートは良一から教えてもらった。子どもの頃遊んでいたゲームの裏技やスパイごっこを思い出させてちょっと楽しかった。

 

目的の山の裾に着き、少し急な坂を上る。

 

「ねぇ見て」

 

鬱蒼と茂った山に入り少し歩いた時、鴎が正面を指さした。

 

「あれは...」

 

草に覆われながらも道の向こうに線路が伸びているのを見つけた。

 

「ここがスタート地点なんだね」

 

俺たちは廃線を歩く。

 

鴎の話によると、線路の途中で洞窟の入口に差し掛かるとか。その洞窟の中に入り、入江にへと進む。

 

鴎達は10年前、そこで海賊船を見た。

 

「きみーとーいっしょーなーらーどこでーも行けるーどこにーもいーかーなくーてもい〜♪」

 

鴎は上機嫌だった。楽しそうに鼻唄を歌っている。鴎と一緒にいるとき、よく聞いたが、そう言えばタイトルを知らなかった。何か懐かしい。

 

「その歌、何だっけ?」

 

「ミディアンシャーロットの『with』昔流行ったよ」

 

「あぁ、そうだ。そんなタイトルだった」

 

「もしかして、聞いたことあるの!?」

 

「どこで聞いたかは覚えてないが、まぁ親父が俺によく音楽を聞かせていたから、その時に聞いたんだろうな」

 

「よく音楽は聞くの?」

 

「音楽番組でチラッと聞く程度。後は親父がよく聞かせてたかな」

 

「お父さんは音楽聞くんだ」

 

「いや、そういう訳じゃなくて...」

 

「?」

 

「俺、昔から喧嘩っぱやくて、それで親父から『これでも聞いて落ち着け』って無理矢理聞かされてたんだ。だからどっちかと言うと、俺を大人しくさせそうなモノの中に音楽があったから聞いてたって感じじゃないかな」

 

その中にwithもあった気がする。

 

「休みの日とかは普段何をやっていたの?」

 

「スポーツ」

 

ずっと水泳水泳の毎日だった。

 

「おぉ、私とは正反対だ」

 

「じゃあ家でって感じか?」

 

「そうだね。よく家で本ばかり読んでたよ。それで人見知りになった私を心配して、お父さんとお母さんが私をサマーキャンプに連れて行ったから」

 

鴎は懐かしむように言った。

 

そうだ。それで父親の部屋から地図を見つけ、それで仲間を集めて冒険に出掛けたんだ。

 

「会えるといいな、友達と」

 

「うん。そうだね」

 

鴎は目を細めて言った。

 

その後も俺は鴎と色々な話をした。

 

『おやつの方向に進むべし』という文を受け、昼にはここに着くように家を出た。

 

日差しは今が一番の強さだった。

 

でも、だからこそ時々吹いてくる風が心地良かった。風は追い風。まるで俺たちの冒険を後押ししているかのようだった。

 

「あれ?」

 

ふと違和感を感じ、俺は立ち止まった。

 

「どうしたの?」

 

「ここ、さっきも通らなかったか?」

 

「そう?」

 

「いや、間違いない。この木の枝には見覚えがある」

 

つまり...

 

「俺たち、同じ所をグルグル回ってるぞ」

 

「えぇ...でも、言われてみれば...」

 

「入口、今は封鎖されてるんじゃないのか?」

 

俺たちはずっとトロッコの線路に沿って歩いていた。見落とすはずがない。

 

俺は何となく地図を広げた。

 

「この『おやつの方向に進むべし』ってのも結局何だったんだろうな」

 

「だったらさ、15時になるまで待とう!何か分かるかもしれないよ!」

 

「15時になれば何かあるのか?道が開けるとか」

 

まさかな。ゲームじゃあるまいし。

 

「分からないじゃん!」

 

「まぁ、一応待ってみるか」

 

15時までもうすぐだしな。

 

15時5分過ぎ

 

案の定、特に何かが起こるわけでも無かった。念のためもう1周してみたけど何もなし。

 

「・・・・・・・・・」

 

これで終わり、なのかな。

 

もしかしたら昔は洞窟に繋がる道があったのかもしれないが、10年という年月によってそれも塞がってしまった。

 

うん。あり得る話だ。

 

でも何か、俺は何かを見落として...。

 

その時だった。

 

「ーーーーー」

 

俺は病院にいた。自分が入院した訳でも、診察に来た訳でもない。

 

俺たちの窮地を助けてくれた、一人の男のお見舞いに行くためだ。

 

「あ○○○○○○て、本当に助○った。あ○○が来てくれなけ○ば、俺○ち○殺○れていた」

 

「い○○え、僕の方こそ、ず○と○けてい○だ○○んですから、それ位」

 

「それにしても驚○○。あんた、目に○常があったにも関わ○○ず○○戦っていたんだな」

 

「それは北○さんのお○○○す。○の場所やG○○5の場所を教えてくれたんですから」

 

「ちょっと地図見せてくれ」

 

「うっ、うん」

 

俺は地図を受け取り、辺りの景色と地図と太陽を眺める。

 

「あっちが西だから真東は...」

 

「磁石あるよ」

 

「あぁ、サンキュ」

 

普段方位磁石なんて使わないから存在を忘れていた。

 

「15時、東は...こっちか。行ってみよう」

 

「こっちはただの茂みだよ?」

 

「いいから」

 

ガサガサとしばらく茂みを掻き分けてーー

 

「あっ」

 

「あった!」

 

時間が経って道が途切れたのか、再び目の前に線路跡が伸びていた。

 

「この線路の先に洞窟があるのかな?」

 

「そう願いたいけどな」

 

まぁ歩いてみるしかない。

 

俺たちは線路を辿って森の奥の奥へと歩いている。日差しは相変わらず高いが、日陰になっていて時折吹く風が心地良かった。

 

「ねぇねぇ」

 

「ん?」

 

黙って歩き続けて暇になったのか、鴎が口を開いた。

 

「初恋っていつだったか覚えてる?」

 

「なっ、何だいきなり?」

 

「ん〜ちょっと気になって」

 

「初恋...初恋か...」

 

初恋と言うと、俺にはあの人しか思い浮かばn

 

 

 

「忘れた」

 

「えーーーー?」

 

「何故そんなに引く?」

 

「だって忘れたって...ちょっと奥さんこの人下手くそ過ぎる誤魔化し方しましたよ?」

 

「うるさいな。忘れたもんは忘れたんだよ。大体、そういうお前はどうなんだよ?」

 

「私?私はね〜金魚!」

 

「き...キンギョ?キンギョってあれか?魚の」

 

「その金魚だよ」

 

「人ですらない...」

 

「そういう本があったんだよ」

 

「本?」

 

「すんごくかわいい金魚が出てくる話」

 

「どんな話だったんだ?」

 

「金魚とその金魚を飼ってる男の子の話でねー」

 

鴎は語った。男の子は金魚をとても大切にしていた事、男の子は金魚鉢を持って色々な場所に冒険に出掛けた事を。

 

俺はその話を時折吹く風の音と一緒に静かに耳を傾けていた。

 

不思議と、鴎の話す金魚の物語にはどこか聞き覚えがあった。俺は外で遊ぶ方が好きだったから桃太郎とか浦島太郎とか、そんなメジャーな本の話しか知らなかったはずなのだが。

 

本とは不思議だ。

 

「..........」

 

本当に聞いたことがある気がする。

 

前に、どこかで....

 

「お前、なんの本持ってんだ?」

 

「金魚と男の子の本。私こ○○大好きでね。絵○作○になりたくて、○理学に進むことにしたの」

 

「○本○○になり○くて心○学?」

 

「絵本を○くには○供の気持○を○る必○がある○思ったの。だから大○では○○学で○○の心につ○○○ぶつも○」

 

 

「ねぇ、私○週○○でやってる○島○先生の○○ン会○ある○○けど○緒に行○○い?知っ○るでしょ?久○○○先○。前に○○た『○○猫○○冒○』の作者のー」

 

「○い。○○日は合同の練○会が○○て○○ない」

 

「・・・・・」

 

 

「ねぇ、た○にはどっか○○に行○○よ!○ことか○○?美味し○○なー」

 

「悪○。今○泳の○○な時○だから、○○かに○○てる暇○ない○○」

 

「・・・・・・・・」

 

 

「聞いたわよ。水○も大○も辞めたって。どういう事?水泳に打ち込んでるせいで○○会えなくなったって思って○けど」

 

「もう、○げない。もう○○ではいられ○○んだ」

 

 

「同じじゃないあなたも。私を襲ったやつと」

 

「違う。俺はー」

 

「聞きたくない。私を巻き込まないで。全部あなたのせいなんじゃないの?お父さんが死んだのも、私が襲われたのも。お願いだから私を巻き込まないで!」

 

「あっ...」

 

「あぁ!」

 

鴎の声に俺は足を止めた。いつの間にか線路が途切れていた。

 

目の前にある岩場にぽっかりと空洞があった。

 

「洞窟...」

 

俺は見たものを当たり前のように呟いた。

 

「洞窟、あったね!」

 

「あっ、あぁ」

 

そうだ。俺は鴎と冒険をしている所だったんだ。

 

「どうしたの?ボーっとして」

 

「いや...」

 

何だか気持ちがふわふわしていた。さっきまで見ていたあの光景が頭から離れず落ち着かない。

 

「なっ、なぁ...」

 

「?」

 

俺は鴎にある事を尋ねようとした。しかしそれを止める自分もいた。何故かは分からない。それを聞いたらもう後戻り出来なくなるような、そんな予感があった。

 

「久島....」

 

それでも、一度開いた口は止まらなかった。

 

「....先生」

 

それを何とか抑えた結果何ともマヌケな言葉が出た。

 

「久島、先生?私は鴎だよ?」

 

「あぁ、そうだったな」

 

「本当に大丈夫?疲れてるんじゃないの?ちょっとここで休んでて。私がテントとか張るから!」

 

とは言ったものの、案の定というか何というか、結局一人ではテントが張れず、「ふぎゃー」だの「ひーん」だの言っていたので俺が手伝う事になった。

 

手を動かしたら、何とか気が紛れた。

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