仮面ライダーAGITΩ〜Shining Brave〜   作:シュープリン

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なつかしい関係

「では、あたし達勇者部と防人との出会いに感謝して〜」

 

「「「かんぱーーーーーーーーい!!!!!!」」」

 

ゴールドタワー内食堂。

 

普段は防人達の腹を満たす為に使われる場所で、ある催しが開かれていた。

 

亜耶と芽吹が元々企画していた防人の帰還を祝う会

 

 

勇者部と防人の懇親会である(前者はあってないようなものになった)

 

「ぷはーーー!!労働終わりの一杯最高!!!!」

 

「オヤジ臭いよお姉ちゃん」

 

「「あのあのあのあの!!!」」

 

早速、コップに並々注いだジュースを飲み干した時、たちまち勇者部の周りに人が集まり始めた。

 

「ん?どした?」

 

「勇者になるってどんな感じなんですか?」

 

「選ばれた時どう思いましたか?」

 

「サインくださ〜い!!!」

 

あっという間に勇者部の皆が防人達に囲まれた。

 

「あははは〜どうもどうも〜」

 

友奈はそんな防人達全員に手を振って返す。

 

「友奈先輩、何か芸能人みたいですよ」

 

「いやいや〜ここまでの人気はもうスターみたいなもんっしょ!!さぁさぁ来てらっしゃい、何でも答えるよーーー!女子力とかー女子力とかー女子力とか」

 

わーーーーーっと風の言質を取った瞬間、勢いが倍になった(女子力は無視された)。

 

「手伝って貰ってすいません、東郷様」

 

「ううん。これだけの人数がいるなら、作りがいもあるから。さぁ出来た。皆さ〜ん、ぼた餅はいかがですか〜?」

 

「勇者様のぼた餅!!!?」

 

ワッと閑散し、今度は東郷に集まった。

 

「うく...スター気分が...」

 

「お姉ちゃん、満更でもなかったんだ...」

 

「東郷様のぼた餅...恐れ多い!!食べれないーーー!!!」

 

「大丈夫だよ!東郷さんのぼた餅、とっても美味しいんだよ!!」

 

「はい友奈ちゃん、あ〜ん」

 

「あ〜ん...ん〜おいひ〜い!」

 

「東郷様、私もいただきます!」

 

「私も!」

 

「美味しい〜。勇者様って凄いな〜お菓子も作れて、国も護って、何でも出来ちゃって」

 

「国?」

 

「えっ?」

 

「そうよ!私たちは御国を守るために立ち上がった兵士!!今こそ皆敬礼!!」

 

「はっ?」

 

「富国強兵!!」

 

「ふっ、富国強兵!!!!」

 

東郷の掛け声に続き、防人の皆も叫んだ。

 

「変なスイッチ入っちゃったわね、東郷」

 

「さすがわっしーだよ〜〜♪ ん?あれあれ〜?あなた、雫ちゃんだよね?」

 

「えっ?私?」

 

「?園っちの知り合い?」

 

「知り合いって程ではないけど、あなた、神樹館にいたよね?他のクラスなのによく私たちのクラスに来ていたからよく覚えてるんだ〜わっしーは覚えてないの?」

 

「覚えてないというより、見てた事すら知らなかったわよ...さすがね園っち」

 

「はぁ...」

 

表向き、リアクションは鈍かったが、正直雫は大いに驚いていた。東郷のように、自分は認知されていない。一方的に見ているだけと思っていたから。

 

ちゃんと認知されていた。

 

「(こんな風に視界が広いから勇者なのかな?)」

 

そして、そんな思いがけない再会が後2つ。

 

「あれ?雀ちゃん?」

 

「はぎゅう!」

 

「やっぱり雀ちゃんだ〜。久しぶり!」

 

「は...はい...」

 

「驚いちゃったよ。防人のメンバーだったなんて凄い偶然!」

 

「本当だ。久しぶりね。まさか防人になってたなんて!ん?ていうかもしかして、あんた、あたし達の知ってて勇者部に来たんじゃ?」

 

「ギクッ!」

 

「どういう事ですか?風先輩?」

 

「夏凜の事ずっとつけてたみたいだし、大方勇者がどういうものなのかって見物に来てたんじゃないの?」

 

「ぴぎゃう!!」

 

「図星ね」

 

「おおおおおおおお願いだから黙っててください...大赦から接触するなって言われてたので...あくまでお忍び、お忍びって事でどうかーーーー!!!」

 

「はいはい。っていうか、そんなに畏まらなくて大丈夫よ?あたし達は本当に感謝してるんだから」

 

「えっ?」

 

「そうだよ!あの時屋上から私を助けようとしてくれたでしょ?あの時は本当にありがとう!」

 

「あっ...」

 

「これからも一緒に頑張ろうね!!」

 

満面の笑みを向けられ、雀はあの日の事を思い出した。

 

屋上から落ちた友奈に咄嗟に手を伸ばしたこと。「ありがとう」とお礼を言われたこと。

 

「勇気がある」と言われ嬉しかった。

 

あの日の思いが全てぶり返し胸がいっぱいになり、柄にもなく大きな声で言った。

 

「はい!!!」

 

これが1つ目の再会。もう1つはーー

 

「お久しぶりね三好さん」

 

「あっ、確か弥勒先輩?」

 

「そう!名前を覚えていただけて光栄ですわ!防人と勇者の共同ミッション。そんな中でも一番の手柄を上げるのは私、弥勒夕海子であることをお忘れなく」

 

「えぇ、一緒に頑張りましょう」

 

「(うぐぅ!自然な笑顔。何か私が悪者みたいですわ〜!)」

 

三好夏凜と弥勒夕海子。

 

ではなくーー、

 

「久しぶりね。三好さん」

 

「あっ、楠さん...」

 

会議室ではすぐに神官の話が始まったので話す所では無かった。故にこれが本当の再会。

 

「驚いたわ。量産型勇者システムの話は園子から聞いてたけど、まさかその隊長があんただったなんて」

 

「私も、まさかこんな形で会うとは思わなかった。大赦から選ばれたとはいえ、勇者との接触はご法度。だから二度と会うことは無いと思ってた」

 

「本当、勇者になってからは驚くことばかりよね。今回は勇者と防人の共闘。一緒に頑張りましょう」

 

「えぇ、もちろんお役目は果たすわ」

 

でもー、と一拍おいて、芽吹はさらに続けた。

 

「言っておくけど、私はあんたを認めたわけじゃない。成績は明らかに私の方が上だった。それでも、私は勇者に届かなかった。その事に納得したわけじゃない。だから、この任務は好都合。この任務を通して私は大赦に思い知らせる。勇者に本当に相応しかったのは私だって」

 

芽吹の目にはまだ、あの日の思いが色濃く残っている事を夏凜は実感した。もちろん夏凜もそれを忘れたわけではない。自分が、他の勇者候補生を蹴落として獲得したこと、その重さを。でもーー、

 

今改めて、夏凜は勇者端末の重さを実感した。

 

「ちょっと!私との話はもう終わりですの!?」

 

ゴールドタワーは、元々は防人の拠点だ。だからもちろん、防人個人の部屋もある。

 

その空き部屋が1室氷川誠に与えられ、彼はそこで休んでいた。

 

今日は驚くことばかりだ。頭を休ませ、整理したかった。

 

今日はおかしなことばかりだ。

 

突然目の前にアンノウンの親玉と思われる青年が現れたと思ったら、300年以上先の並行世界に飛ばされて、木の根だらけの空間を目撃したと思ったら仮面を付けた一団に連れてかれ、亡くなったと思われた人物がこの世界にいて、少女を襲ったという事実を突きつけられた。

 

まさかこの世界で沢木雪菜という存在が出てくるとは思ってもみなかった。

 

何が何やら分からない。沢木雪菜は亡くなった。遺体も警察や恋人が確認している。

 

彼女は確かに屋上から転落して亡くなった。

 

だが、彼女は今ここにいる。氷川誠同様に亡くなる前の時間軸から来たかとも思ったが、それもしっくり来ない。

 

いくらアギトとはいえ、並行世界を渡れるものだろうか?アギトの力に振り回されたと思われる彼女が、アギトを誰よりもコントロールしていた弟でさえ出来なかった芸当を?

 

それにここにいる少女を襲ったというのも意味が分からない。津上翔一は言っていたではないか。「姉さんは誰よりも優しい人だった」と。

 

しかしそれは、神官に簡単に論破された。

 

『あなたは、沢木雪菜という女性をどこまで知っていますか?その弟の言葉だけで動くのは危険ではありませんか?』

 

そうだ。確かに自分は津上翔一を英雄視しているせいで、その血縁者もそうだと思いこんでいた。

 

「優しい人だった」「素直ないい子だった」周りからそんな風に評価された人が凶悪な犯罪を起こすのを何度も見てきたじゃないか。

 

今の自分には「何かの間違いだ」と言う資格はない。

 

アギトの力で人が変わった可能性だってある。その場合、彼女が犯した風谷伸幸殺人事件は明確な殺意の元行ったということになりーーーーー。

 

いつからだろう?

 

いつから自分はアギトを、人を信じられなくなったのだろう?

 

最初こそ、津上翔一という自分の恩人がいたから、アギトの事を信じることが出来た。アギトは人類の可能性なんだと。

 

だが蓋を開けてみると、津上翔一のような男の方が珍しいのだと実感した。

 

アギトになる前に発現する超能力。その超能力の暴走による騒動。その先に、超能力を使い自らの意志で人に危害を加えようとする人間がいる。

 

決定的だったのは、アンノウンがいなくなって1年後、2003年に起こった銀行強盗事件だった。

 

超能力を持った犯人はその力で警備員や行員、人質、そして通報を受けて駆けつけた警察を次々に殺した。

 

対人に対して初のG3部隊の出動。それすら検討に上がり、出動が間近に迫った時だった。

 

人殺し、即ち超能力を長く行使し過ぎた為に暴走。体が爆発し、銀行が全焼してしまったのだ。

 

犯人と人質は即死、その周辺にいた人たちに多数の重症者を出した惨劇だった。

 

その惨状を目の当たりにした人達には、その恐怖が心の底にまで植え付けられ、今でも精神に異常を来している者もいる。

 

そこからだ。アギト反対の過激派の声が高まったのは。

 

アンノウンによって家族や友人、恋人を失った人がいるように、アギトによってそれらを失った人も雪だるま式に増えていった。

 

『アンノウンはアギトによる被害から人々を救っている』

 

以前氷川自身が否定した北條透の意見も今なら分かる。そして、分かるようになってしまった自分にも嫌気がさしていた。

 

今でも自分はアギトの事を信じられるのだろうか?恩人の姉を目の前にして、自分は引鉄を引けるのだろうか?

 

悶々と悩む中、ノックの音が聞こえた。

 

「氷川様、よろしいでしょうか?」

 

先ほどの神官の声だった。

 

氷川はドアを開け、促されるまま神官の後をついていった。

 

その時、階下から少女たちの騒ぐ声が聞こえた。

 

「懇親会だそうです」

 

察したのか、神官が言った。

 

「・・・・・・・」

 

先の会議の時も思ったが、まだ子どもではないか。

 

神官の話では、白いアンノウンーここではバーテックスと呼んでいるようだがーに対抗できるのは神樹に選ばれた少女が使う勇者システムだけなのだという。

 

その為、有事の際に矢面に立たされるのはその少女だけなのだと。

 

ハッキリ言って異常だ。彼女たちは本来、僕たち大人が守るべき対象ではないか。

 

この仮面の集団は、『世界を救う』という面では同士だが、心を許せるようにはどうしても思えなかった。

 

神官によって連れてこられたのは1つの研究室だった。

 

コンピュータや顕微鏡、その他何に使うか分からないような機械がセットされていて、薬品の匂いが充満し、土のサンプルが至る所に置かれている。

 

「あなたからお預りした物の解析が完了しました」

 

やはりその話かと氷川誠は頷いた。

 

「結論から申しますと、あなたが結界に入れたのはこのG4チップが原因でした」

 

氷川誠には、何故神樹化された結界に入り込めたのかという疑問があった。

 

始めはこちらの世界に来る際の通り道だったのではと考えたが、彼は一度ゴールドタワーの近くにある神社に立った後に巻き込まれたと話していたので違う。

 

とすると、その時の持ち物が原因なのではと考えた。氷川誠自身にもそんな神の現象に干渉できるような持ち物などに心当たりが無いままポケットなどを捜索したところ、G4チップを見つけた。

 

これには彼も大いに驚いた。

 

これは元々、破壊予定だった代物だ。

 

物理的に破壊しようとしたその時、一人の警官が妨害し、G4チップを奪い取った。それを氷川誠がすぐに取り押さえてーーー。

 

つまりその瞬間に、その警官は氷川誠のポケットに入れたという事になる。

 

一体何のために?

 

その警官はそのすぐ後に亡くなったので真相は分からない。

 

しかし、その警官の暴挙の直後にバーテックスの襲撃、さらにこれを持っていた持ち主が別の世界へ移動し、それのお陰で勇者の戦場に入れたのなら、警官の行動にも意味があったということだ。

 

確かあの警官、安本と言ったか。

 

「G4チップ内にあるデータ、正直言って驚きました。解析の結果、G4システムは我々が使用している勇者システムと非常に酷似している事が分かりました。これを2002年の時点で作成されたという事が驚きです」

 

300年以上先の未来人から科学の事で驚かれたという事実に逆に驚かされた。

 

1999年の未確認生命体、2001年のアンノウン。この襲撃が科学を何十年何百年も先に進ませたということだろうか。

 

自分がいた世界にもドラ○もんとか、未来の世界を描いた物語はあったが、それらの世界と比べると、お世辞にもこの世界は未来という雰囲気が無い(ドラ○もんが100年後の物語だとするとなおさら)。

 

世界はもう四国しかないらしいから、面積や人口の減少でその辺の時間が止まっているのかもしれない。

 

「とにかく、これは僥倖です。上手く行けば、防人を強化出来るかもしれない」

 

「えっ?」

 

「防人は量産型の勇者システムであり、神樹様から選ばれた正式な勇者ではありません。故に、神樹化には入れない。しかし、これはその正式な勇者システムと同じ回路を人工的に作られている。この仕組みを使えば、防人達も同じ戦場にーー」

 

「まっ、待ってください!」

 

「何か?」

 

「いえその、何故防人を、勇者を戦わせることが前提なんですか?彼女たちはまだ中学生なんですよ?」

 

「・・・・・」

 

「今までは、その神樹に選ばれたとかそういう事情があったのかもしれない。しかし、その防人システムや僕が渡したG4、選ばれた人でなくても戦える仕組みが揃いつつある。なのに何故、彼女たちを戦わせることだけに固執するんですか?」

 

氷川誠がずっと大赦に持っていた違和感はそれだった。仮面を付けているからとかの外見的な話ではない。少女が戦いに行くことが何にしても根底にあるその考え方だ。

 

本来守るべき存在であるものを「お役目」とかそんな大層な名目で戦地に赴かせる現状に気分が悪くなる。

 

「まず、一つ勘違いをしているのですが」

 

氷川誠の疑問に、あくまでも神官は淡々と答えた。

 

「防人とは確かに量産型の勇者システムですが、別に誰でも使えるという訳ではありません。防人になった者達は皆、勇者適性ー神樹様に魅入られる事ですがーがあった人達。それがない者には、例え防人であっても扱えません」

 

「ですが、このG4チップがあれば、それもクリア出来るのではないですか?これはメインチップです。中には設計書もある。これさえあればあなた達だってー」

 

「もう状況を忘れましたか?あなたがここに来た経緯、それはこのままでは私たちの世界まで滅亡するという未来です。それがある以上、事態はかなり切迫している。そんな状況では、戦闘経験が皆無な我々が0から鍛える時間はありません」

 

「では、戦闘経験があれば良いのですね?」

 

「?」

 

確かに神官の言う通りだ。そう来るのは分かっていた。今相手にしているのは確かな未来。今さら、モラルがどうとかの話をしている場合ではない。気に食わない所は多々あるが、大赦という組織は、確かに世界を救うために動いているのだ。

 

300年の歴史に歯向かう事は時間の無駄だ。

 

ならばせめてー

 

「僕のためのG3システムを作っていただきませんか?」

 

氷川はそう言って頭を下げた。

 

少女たちを戦いに行かせないことは恐らく出来ない。ならばせめて、刑事として、氷川誠として彼女たちと共に戦おうと決意したのだった。

 

「それで、許可を出したのか?」

 

神官のみが集まる部屋。そこで会議が開かれたのはその日の深夜の事だった。

 

氷川誠の参戦を承諾したと大神官に報告した所だった。

 

「滅びの道は決まっているのですから、単純な戦闘力が増えるのは良いと判断しました」

 

「それで防人のアップデートの影響は出ないのだろうな?」

 

「アップデートと言ってもベースは同じです。氷川様専用のシステム作成が入ったとしても影響が出ることはありません」

 

「確かアンノウンとか言ったか?それをただの人間でありながら撃退したと」

 

「はい」

 

氷川誠の実績に大赦神官は少しざわついた。300年間ずっと、神の尖兵に対抗できる者は選ばれし少女だけだと思っていたから。

 

「天の神の使いを退治するとは信じられん」

 

「氷川誠もそうだが、G4チップもだ。あのテクノロジーは我々に匹敵している。2002年の話だぞ?」

 

「私たちのいた2002年とは違う歴史という事でしょう」

 

「違う歴史...」

 

神官の言葉を聞き、別の神官ー三好春信ーが口を開いた。

 

「つまりこういう事ですよね?300年前、上里様と烏丸様が推測した事は正しかったと」

 

()()()()()()()()()()()()()()()()というあれか」

 

「三好さん、今はそれを議論している時間はありません。こうしている間にも滅びは迫っているのですから」

 

「そうだな。今すぐに防人システムのアップデートと氷川誠用の勇者システムの開発に進め」

 

「承知しました」

 

宴もたけなわ。勇者部と防人達の親睦会はお開きになった。夜も遅いし、また、明日からは防人と勇者の合同訓練ということで今日はゴールドタワーに泊まっていくことになった。

 

勇者部それぞれに部屋が与えられ、眠るだけになったのだがーー

 

「・・・・・」

 

東郷美森は何となく寝付けず、外に出て海を眺めていた。

 

その手にはスマートフォン。自分の物ではない。

 

大赦から返還された勇者端末だ。

 

これからはいつ神樹化が起こるか分からないからと手渡された。

 

『今の勇者端末には満開はありません』

 

返還する時、大赦が言った言葉だ。

 

『勇者端末を改修する際、満開システムには厳重なプロテクトを掛けました。精霊バリアの永続性はそのままに、満開による強化の撤廃、それが新しい勇者システムです』

 

正直、満開システムは廃止されて良かったと思っている。

 

あれは一時的な強化をする代わりに、体の一部を散華で失う呪いのシステム。

 

その性で勇者部は一時バラバラになって、私はーー、

 

「わっしー?」

 

ふと呼ばれた声に気付き、東郷が振り返るとそこには乃木園子が立っていた。

 

「園っち」

 

「眠れないの?」

 

「えぇ、何となく」

 

「今日一日、色々な事があったからねー」

 

「そうね」

 

神樹化に巻き込まれ、アギトと呼ばれる者や並行世界の人と会合し、そして世界はこのままでは滅びると聞かされた。

 

「まさかまた、戦う事になるなんて...」

 

東郷はスマホを見つめながら言った。

 

「バーテックスは倒して、しばらくお役目は無いと思ってたからね。私もびっくりだよ」

 

「それに今のままだと世界が滅びるのは確定してるって」

 

「そんな感じしないよね。わっしー達は世界を救ったって言われたばっかりだから、私以上に自覚が無いんじゃない?」

 

「そうね。でも、もしかしたら今の状況は私への罰かもしれないわね」

 

「えっ?」

 

「私は、最後の戦いで神樹に穴を空けた。こんな世界滅んじゃえばいいって、そう思い込んでた。あの時望んだ未来に今進んでいるんじゃないかって」

 

「でも、わっしーが穴を空けた事と今回の事は関係ないってー」

 

「分かってる、分かってるのよ。でもーー」

 

東郷はそこから先を何も言えなかった。

 

「ミノさんにお墓参り出来ないのもそれが理由?」

 

「銀が命がけで守った世界を壊そうとした。例え今回の事態がそれと関係ないものだとしても、その事実は変わらない。そんな私が、どんな顔で銀に会えばいいのか...」

 

「だったら私と同じだよ」

 

園子が東郷の手に自身の手を重ねながら言った。

 

「私も、こんな世界壊れちゃえーって思ってた。私もわっしーの考えに賛成していた。だから私も同罪。これが罪だと言うのなら、私も一緒に背負うよ」

 

「園っち...」

 

「だからさ、約束しよっ!もしも世界滅亡の未来を変えたら、一緒にお墓参りするって。未来だけじゃなくて、私たちも変えていこうよ!」

 

「ーーー!」

 

園子が眩しく見えた。

 

この表情は、友奈ですら出せないモノではないだろうか。

 

2年前、『わっしー』として一緒に戦った少女の前でしか出せない気持ちだった。

 

だから言った。

 

「うん、分かった。この戦いが終わったら、一緒に行きましょう。銀の所へ」

 

「うん!約束っ!」

 

それから先は、二人で黙って海を眺めた。

 

さっきと同じ暗い海。だけど、東郷にはそれが先ほどよりも輝いて見えた。

 

「ところで、さっきのわっしーの言葉、何か死亡フラグみたいだったよ?」

 

「しっ!?死なないわよ!?そんなつもりで言ったんじゃ無いからね!」

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