仮面ライダーAGITΩ〜Shining Brave〜 作:シュープリン
August 7th
『鳥白島に来ませんか?』
そんな手紙が俺のもとに届いたのは夏休みに入る少し前。
暇をしていた俺には渡りに船ということで鳥白島にやって来た。
この夏休みは鏡子さんの指示の元、蔵の整理で勤しむ毎日になるだろう。
そう、思っていたのだがーーー
※
「そっち行ったぞ」
「了解!」
のみきの声に合わせて俺はハイドロカリバー零式を構えて待ち構える。
「げっ...」
「悪いな」
プシュっと水が勢いよく噴射。
「...っぶね!」
ターゲットである半裸の男はそれを寸前の所で避ける。
だが、それでいい。
「ヘヘッ、当たらなきゃ意味ねーぜ!」
「それはどうかな?」
「はっ?」
「上だ」
俺の役目は足止めと誘導。狙い通り、標的はのみきの真下に来た。
のみきはハイドログラディエーター改から水を噴出。
のみきから発せられた水は綺麗な虹になった。
「ぎゃーーーーーーーーー!!!!」
見事に良一を捉えた。
※
今の俺はこうやって、島を見回る(半裸の良一を撃つ)少年団に所属している。
鳥白島を訪れたはいいものの、蔵の整理は一向に任せてもらえなかった。
暇をしていた俺をのみきが誘い、彼女の助手という立ち位置で少年団に入った。
主な仕事は島の風紀を乱す者への狙撃(主に良一だけだが)、そして島の皆に困ったことがないかの見回りだ。
「あら美希ちゃん、暑いのにご苦労さまだね」
「良かったら、この佃煮貰っていって」
島の見回りをすると、必ずと言っていいほど島の人から声を掛けられる。主にのみきだけど。
それを見るたびに、のみきの活動は皆から認められているんだなと実感する。
※
「すっかり暗くなってしまったな」
夕焼けを過ぎ、辺りが夜に包まれていた。
昼間にいた人たちも家に帰っていき、人影はまばらだ。
「今日はこの辺で切り上げるとするか」
「もう暗いし、家まで送るよ」
「いや、私はまだ役場ですることがあるから、先に帰ってくれ」
「そうか?」
「あぁ、また明日な」
のみきは短く手を振ると役場の方へ歩いていった。
「こんな時間まで何かやってたのか」
そう言えば、新聞記事の事もある。それ関係の作業だろうか?
「それならそれで言ってくれたらいいのにな」
俺だって、今は少年団の一員だ。手伝える事があれば手伝いたい。
「ちょっと行ってみるか」
俺も、役場へと足を向けた。
※
「いたいた」
役場には当然、のみきの姿があった。
てっきり、新聞記事の作業をすると思っていたのだが違った。役場の前の放送塔に足を掛けていた。
「こんな時間まで島の監視を?」
そこまで念入りにやるほどこの島が危険だとは思えないが。
そう思った、その時だった。
「きゃっ」
短い、悲鳴とも呼べないような小さな悲鳴と共に、のみきのシルエットがグラリと揺れた。
落ちるーーーーー!?
「のみき!!!!」
※
気がつくと俺は、のみきを腕に抱きかかえていた。
無我夢中だった。気がついたら、体が勝手に動いていた。
本当に間一髪だった。受け止めた。受け止められた。
「えっと...」
のみきはまだ俺の腕の中で戸惑っているようだった。
「のみき、大丈夫か!?」
「わた..し?」
「痛いところ無いか!?気分が悪いとか」
「いや、私は大丈夫だ」
「良かった」
ホッと安堵の息をつく。受け答えをハッキリしているし、これなら大丈夫そうだ。
それなら次にしなければいけないのはーー
「このバカ!危ないだろ!」
「!!?」
「こんな暗い中鉄塔に上るなんて、ちょっと考えたら分かることだろ!」
俺が気まぐれで来ていなかったらと思うと、本当にゾッとする。
「...ごめんなさい」
小さく、彼女がそう言った。昼間ののみきとは考えられないほどにか細かった。
「慣れていた事だったから、油断していたんだ。すまなかった」
腕の中で、のみきは萎れている。それだけ怖かったのだろう。当然だ。
気分を変えるために俺は話題を変えた。
「慣れた事って事は、今までも何度も?」
そう言えば以前、良一と夜釣りに行った時も裸になった良一を狙撃していた。あの時も結構な時間だった。
「あぁ、最終便に乗る人たちが無事に帰るのを見届けるためにな」
「別にそこまでしなくたって...」
「それでも、夜に騒ぐやつもいる」
「なぁ、のみき」
「?」
「どうしてお前はそこまで頑張るんだ?」
島が大事なのは分かる。だけど、夜まで警戒しないといけないほどこの島が危険だとは思えない。そこまでするのは、のみきの個人的な気持ちなのだと思った。
「簡単な話だ」
のみきはそう前置きすると続けた。
「この島は私の家で、家族だからだ」
「家族?」
「この島が昔、無くなりそうだったという話は聞いたことがないか?」
「いや、初耳だ」
「昔この島に目を付けた悪徳業者がいて、そいつらが、私たち島民を追い出そうとしていたんだ」
私たちはまだ小さかったから覚えてないんだけどねと付け加えて、のみきは続ける。
「当時は、本当にまずかったらしいんだ。連中は、ありとあらゆる手で私たちを追い出そうとした」
島民がどれだけ島を愛しているのかはここ数日のパトロールでよく分かった。そんな島を出なければならない事態にさぞ苦しかっただろうことも容易に想像出来た。
「それで立ち上がったのが、私の両親だった」
のみきはさらに言葉を繋げた。
「私の両親もまたこの島の出身で、この島を心から愛していた。だから、その連中から島を守る為に、私の両親も法外な手段に出た」
「なっ!?」
その言葉が予想外過ぎて、俺は大いに驚いた。
のみきの両親の事は以前食堂でご飯を食べた時に聞いていた。本土にある出版社で働いていて、滅多に帰らないと。
逮捕された過去があったとは思いもしなかった。
「じゃあのみきは、両親がそこまでして守った島だから、そこまで頑張っているって事か」
「それだけじゃないさ」
のみきはゆっくりと頭を振って続けた。
「私の両親を逮捕されてからは、島の人たち全員が私を気にかけてくれた。私を、本当の娘のように育ててくれたんだ。私にとってこの島は家で、家族なんだ。だから守りたいと、そう思ってる」
俺はのみきの行動理由がわかった気がした。
簡単な事だった。島が大好きだから、それだけだった。
「ところで...」
「?」
そこまで話すとのみきは急にもじもじとしだした。
「私は、いつまでこの格好なのだろうか?」
「あっ、あぁ!ごめんごめん!」
今までずっとのみきを受け止めた格好(お姫様だっこ)のままだった。慌ててのみきを降ろさせる。
「改めて、今日は助けてくれてありがとう。本当に助かった」
「気をつけてくれよ。これからは夜何かやろうって時は俺も呼んでくれ。こう見えても、俺はのみきの助手なんだからな」
「あぁ、そうだな。そうしよう」
のみきは短くそう言った。その口元は嬉しそうに微笑んでいた。
その後俺たちは少し談笑した後別れた。
俺は初めて、島に認められたような気がした。