仮面ライダーAGITΩ〜Shining Brave〜 作:シュープリン
鳥白島。それは、瀬戸内海に浮かぶ小さな島。豊かな自然に囲まれていて、そこに住んでいる島民は大らかで優しい人が多い。『豊かな自然に囲まれた結果、人も豊かになったのだ』といつかのみきが言っていた。
そして、だからこそ豊かさが変な方向に向いてしまった人も一定数いてーー、
「ゲッ!のみき!」
「相変わらず学ばない奴め。前進して追い詰めろ」
「分かった!」
俺はハイドロカリバー零式を携えて、後頭部へ向けて発砲。
それを良一は器用に躱しながら逃げる。
「お前が頭しか狙わないのは知ってるからな!いい加減読めたぜ!」
「体に撃ったら服着る時気持ち悪いだろ?」
「その優しさが今はありがたいぜ!」
「だが、本当に追い詰められているのはどちらかな?」
「えっ?うお!!」
良一は周囲を見て啞然とした。ここは島の外れ。しろはがたまに釣りに来ている島の端っこ。
いつの間にか良一は、そこに誘導させられていたのだ。
「鳥かごに入れたつもりがお前が入れられていたとはよく言ったものだな。観念しろ」
ハイドログラディエーター改を目の前で構えられ、良一はいつもと同じようにあたふたーー
すると思ったが、今回は違った。
「フフフフフ..」
「何がおかしい?」
「のみき、お前は俺がいつまで経っても成長しないと言ったな」
そう言って良一は大胆にも両手を広げ、はだけた前面を剥き出しにした。
「そう思うのなら、今すぐ撃ってみろ!」
「言われなくても!」
良一の挑発に乗るがまま、のみきはハイドログラディエーター改を発砲。それは真っすぐに良一の体に届ー
「はぁ!!」
「なっ!?」
く事は無かった。
「ナイスだ天善!」
「素振りをしていたら丁度ピンポン玉程度の飛沫を見つけたのでな。これはいい特訓になる!」
天善がのみきの攻撃をラケットで弾いていたのだった。
「天善...だと...?」
「ワハハハ!天善はこの時間、海風の中素振りの練習をするんだぜ!」
「その方が風の抵抗も相まってより腕力が鍛えられるからな。だが、実践という面ではこちらの方がもっといいだろう」
「くっ!」
のみきは負けじとハイドログラディエーター改を発砲。だが、それを全てラケットで弾いていた。
「何をやっている!?お前も早く撃て!」
「あっ、ごめん!了解!」
あまりの攻防に見入っていた。俺もハイドロカリバー零式を構えて放出。
「フッ!ホァ!ハ!」
弾幕が増えても同じだった。正面から来る水を天善が全て弾き、全く良一に届かない。
「いい。いいぞ。これはいいトレーニングだ!」
天善もまだ余裕があるようだ。
このままではジリ貧だ。いずれ、こちらの水が尽きる。
「今回は、俺の勝ちのようだな!」
良一も、自分の勝ちを信じて疑っていないようだった。
だがー、
「そいつはどうかな?」
「何?」
のみきのニヤリとした笑みを浮かべたことで、その笑顔が曇った。
「良一、お前は成長していると言っていたな」
のみきは静かに一歩前へ出る。
「だが、成長しているのはお前だけかと思うか?」
「なっ!?」
次の瞬間、良一と天善は目の前の光景に啞然とした。
のみきが持つ得物、ハイドログラディエーター改、
「まさか、これを使うことになるとは思ってもみなかったよ」
2台。
「ハイドログラディエーター改、ツイン・ガトリングモード」
っていうか2台目、どこから出した?
ダダダダダダダダダダダダダダダダダ
次の瞬間、先ほどとは比べ物にならない程に広い弾幕で水が飛び出した。
「ハァアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!」
それでも、天善の壁は分厚かった。その弾幕にある水全てを凄いスピードで弾いている。だが、先ほどまで見せていた余裕は明らかに失っていた。
「今だ!足元に!」
「!そうか!」
その言葉だけで、俺にはのみきが何をしようとしているのかが分かった。
俺は天善の足元に水弾を一発だけ発砲。
「むっ!?」
天善は本能のまま、その水を弾こうと体を屈めてラケットでそれを弾いた。
「あっ」
故に、
「アバババババババババババババババババ!!!!!!」
いつもよりも強力なハイドログラディエーター改の水を、良一は全身に浴びることになった。
※
「全員集まったな」
天善と(ずぶ濡れの)良一を連れて、俺たちは秘密基地へと入った。そこには既にしろはと蒼の姿もあった。
「今日集まってもらったのは他でもない」
のみきは改めて俺たち全員を見渡してから言った。
「今、私と両親が書いている新聞に、私たち少年団の事も紹介しようと思ったんだ。それで、皆の意見を聞きたい」
のみきの提案に反対する人はもちろんいなかった。のみきが中心となって会議が開かれた。初めに、それぞれがお気に入りの場所を挙げていった。
蒼はバイト先の駄菓子屋、天善は卓球台のあるここの秘密基地、良一は合法的に脱ぐことの出来る海水浴場、しろははいつも釣りをしている穴場、そして俺はー、
「って、俺もやるの?」
まだ島に来て一ヶ月も経ってない。そこまでこの島の事は知らないのだが...。
「私たちみたいにずっと島にいないからこそ、新鮮に感じたものがあるんじゃないかと思ってな」
そう言われてもと思いながらも、この島での日々を思い出して、
「あっ」
1つ思いついた。
「何だ?」
「放送塔は?」
「いつものみきが登ってるあそこ?」
蒼が尋ねた。
「あぁ、島全体に声を響かせるなんて、俺の地元じゃ無かったからな。それに、放送塔ならのみきはよく使ってるし、少年団の仕事にも絡められるだろ」
「なるほど、それも候補に入れておこう」
意見が増えるたびに、会議は盛り上がっていった。
時々思い出話に脱線して俺が置いて行かれる事もあった。その度にのみきが説明してくれた。
話を聞いてるだけでも、この島は人と人との繋がりが深いんだと実感した。楽しいなと思った。
俺は夏休みが終わったら帰るけど、それがとても惜しい。夏休みとは言わず、ずっとこの島にいたい。
帰りたくない。
※
「今日は付き合ってくれてありがとう」
「俺なんか、役に立ったのか?」
案の定、俺は他の皆よりも島を分かっていなかった。
「外から来た人の意見というのはそれだけで貴重なんだ。私たちが当たり前と信じていた固定観念が、都会から見ると珍しく見えるとかな。最初に言ってくれた放送塔が良い例だ。他の場所でもやっていると思っていたぞ」
「やっている所もあるかもしれないけど、今は止めてる所もあるらしいからな」
「そうなのか?」
「あぁ、仕事の邪魔でうるさいとか何とかの苦情で」
そういうのを前にテレビで見た。
「そうか。まぁ地域によって、価値観は人それぞれだからな」
でもまぁ、と、俺は一息ついてから言った。
「俺は島全体に響き渡る声っていうのはいいと思うけどな。何ていうか、誰かが側にいてくれてる感じがしてな」
そういう風に感じる、感じたい人は他にもたくさんいると、俺は信じたい。
「そうか。そういう風に思ってくれるなら、私も嬉しい」
のみきはふと立ち止まって続けた。
「確かに、うるさいと感じる事も、時にはあるかもしれない。だけど、それは時に島の皆に気持ちを届かせる事も出来る。ーー私自身、そう感じた事があったからな」
「?」
「いや、何でもない」
その後ものみきと今回の会議の話をして、俺は別れた。