仮面ライダーAGITΩ〜Shining Brave〜 作:シュープリン
「そっちへ行ったぞ!向こうの路地から回り込め!」
「任せろ!」
黄昏時、いつものように起きた俺はのみきと日課のパトロールをしていた。そして、いつものように裸の良一を見つけ、現在に至る。
この島に来て以来始まった、珍しくもないただの日常。
ーーーかと、思われた。
「そこだ!」
良一は回り込んだ俺に気を取られていた。のみきが構えた位置は良一の真後ろ。完全なる死角。吸い込まれるように良一の体に水が当たると確信していた
ーーーのだが、
「なっ!?」
不意に良一が消えた。水は宙を舞い、ブロック塀に黒いシミを作る結果となった。
「クソ!どこだ!?」
「後ろだよ」
「!?」
驚いたのみきが慌てて噴射。しかしそれも良一に当たることは無かった。
「何故だ?何故当たらん!?良一、お前は一体...」
「千回...」
俺の後ろから声が。さっきまでのみきの後ろにいたはずなのに。振り返っても誰もいない。
「万回...」
「!?」
今度はのみきの後ろから声が。振り返っても誰もいない。
「俺は撃たれて撃たれて撃たれ続けた」
俺たちは今、一本の路地を挟み込むようにして立っている。そんな俺たちの後ろを行き来し続けるなんて、
「その末に俺は進化したのさ!決して水に触れない躰をな!」
「くっ!!」
のみきはハイドログラディエーター改を連射。良一は立ち止まったまま、体を最低限だけ動かしてそれを全て回避。
「当たらねぇ当たらねぇ当たらねぇよ!」
「あっ..」
遂にのみきの水が切れた。
「くっ..」
のみきは急いでハイドログラディエーター改に水を再装填するも、それを見逃す良一では無かった。
良一は悠々とのみきの横を通り抜けて走り出した。
俺に接近する事になるのだが、俺が零式を撃っても全て躱され、俺たちの包囲網を突破した。
いや、俺たちの後ろを行き来してた時点で、その網は穴だらけだったのだが。
※
「良一、いつの間にあそこまでの進化を」
「こんな良一もいたんだな」
そう言いながら、俺とのみきは水を装填し直した時だった。
『あーあーあーマイクテストマイクテスト』
「この声...」
『少年団諸君!聞こえているだろう。俺は三谷良一だ!』
放送塔からだった。良一は俺たちと離れたその足で放送塔に向かっていたのか。
『俺はまだ半裸だ!』
「なっ!?」
高らかとした宣言に俺とのみきはたじろいだ。
『俺は今から島の外れに行く。逃げも隠れもしない。当然裸でだ。あそこはのみきも知っての通り海水浴場ではない。さぁ、どうするのみき?俺が撃てるかな?ガーーハッハッハッハッ!』
「らしくもない高笑いしやがって。だが、居場所が分かったのは好都合。外れへ向かうぞ!」
「ちょっと待てのみき!」
「何だ?」
走り出そうとした足を止め、のみきが振り返る。
「俺、考えたんだがーー」
※
島の外れ。
しろはが釣りに来る以外には誰も立ち寄らないその場所に、今日は3つの影があった。
「来たか。俺の進化に心折れて来ないかもとも思ったが」
「どこだろうと行くさ、お前が裸である限りな!」
シャコンシャコンという音と共に、ハイドログラディエーター改が変形していく。
「ハイドログラディエーター改・ガトリングモード」
「いいかのみき、手筈通りに」
「FIRE!」
ズダダダダダダダダ
ハイドログラディエーター改から大量の水が噴射された。
「お?」
良一の周りを。
噴射された水は軌道に乗ってそのまま良一の背中にある海にへと落ちていく。
「何だ何だ?どこを狙ってるんだ?」
「今だ!」
「任せろ!」
ハイドロカリバー零式を構えた俺は今度こそ良一に向かって一発の水弾を発射。
「なるほど」
良一は短く鼻を鳴らすとジャンプしてそれを躱した。
「なっ!?」
「無駄無駄!俺はどんなに水が来ても永久に躱しきれる身体を手に入れたんだ!!」
「くっ!」
俺は続けざまに発泡したが、空中にもかかわらずそれらを悉く躱し、最後は俺たちを飛び越えた。
「これで終わりか?」
「誰が!行くぞ!」
「おう!」
のみきの掛け声と共に俺たちは一斉射撃。
「まだ分かってないみたいだな。だから、俺にはその攻撃がーー」
その時だった。
「「ぎゃあああああああああああああああああ!!!」」
入江に2つの悲鳴が響き渡った。
1つは良一。もう1つは、
ん?2つ?
※
俺たちが用意した作戦は二段構えだった。
良一は言った。『水に触れない身体を手に入れた』と。
ならば逆に言えば良一に向かわない水ならば対応出来ないのではないか。そう考えたが案の定だった。
弾幕を形成していた時はいつもの良一だった。
ならば話は簡単だ。逃げ道を1つにすれば射出の場所も絞れるし、もしもそれもとてつもない身体能力で逃げられるものなら、本来当たるはずの無い水の場所へ良一を誘導すればいい。
それが先の俺とのみきの同時撃ちだった。
結果それは成功し、良一は水を被る事になったのだがーー
※
「「ぎゃあああああああああああああああああ!!!」」
聞こえてきた悲鳴は2つ。1つは良一。そしてもう1つはー
「なっ!」
「嘘だろ..」
良一のさらに後方に男の子が一人立っていたのだった。
「ごめん!大丈夫か!?」
俺は急いで男の子へ駆け寄った。
良一はともかく、この水圧は耐性のないこの子にはかなり辛いはずだ。
案の定だった。突然の刺激に男の子は涙を流していた。
人気がないとは言え、もう少し周りに気を遣うべきだった。
「あぁぁぁ、本当にごめんな。俺たちがもうちょっと気をつけていれば良かった。のみき、急いで誰か連れてきてくれ!俺もすぐにー」
しかし、俺の言葉尻はのみきを見て徐々に小さくなっていった。
のみきは俺たちの方を見て、目を大きく見開いていた。
「.......ぁ..」
驚いてるというより怯えているように見えた。
余程ショックだったのだろうか?島民を愛しているのみきからすれば、この事故のショックは相当だろう。
「のみき、ちょっとの間この子を見ていてくれ。俺が誰か呼んでくるから」
「ま..待て!!」
その場を離れようとする俺をのみきは急いで呼び止めた。
「どうした?」
「お前、見えないのか?」
「?、何が..」
その時だった。
「おっ」
水平線に淡い緑色の光が。もう帰る時間だ。
「悪い。もう時間だから俺は帰るわ」
緑が強くなる前に帰る。
その絶対的なルールに従って、俺は鏡子さんの家へ帰った。