仮面ライダーAGITΩ〜Shining Brave〜   作:シュープリン

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August 9th

その日、俺たちは山に入っていた。少年団主催の肝試し、そのルートの下見の為だ。

 

暗い山の中で行われるイベントの為、危険な箇所が無いかのチェックが主な仕事だった。

 

肝試しとして想定しているルートを、俺とのみきの二人でチェックしながらゆっくりと歩みを進めていく。

 

「のみき、ここなんか危ないんじゃないか?道の真ん中が窪んでいる」

 

「・・・・」

 

「のみき?」

 

「うぁ!えっ?何かあったか?」

 

「いや、道の真ん中が窪んでて危ないんじゃないかって」

 

「あっ..あぁ、そうだな。後で埋めてもらうように頼もう」

 

「なぁ、のみき...」

 

俺はのみきの顔をじっと見つめながら口を開いた。

 

「なっ..何だ?」

 

「お前やっぱりまだ体調が悪いんじゃないか?今日はもう帰って後は俺がーー」

 

「いや、大丈夫だ!ちょっと考え事をしていただけだから!」

 

「本当に?」

 

「あぁ、本当だ!大丈夫だから、見回りを続けるぞ」

 

「あっ、あぁ..」

 

俺はのみきの勢いに気圧されてつい肯定をしてしまった。しかしどう見ても空元気にしか見えなかった。

 

昨日、初めてのみきはパトロールを遅刻した。

 

『部下より早く来ないと示しがつかない』と言っていたはずなのに。

 

パトロールの時も、のみきは終始上の空だった。本人が遅刻は寝坊だと言っていた事から、その時は寝坊をして遅れた事のショックを引きずっているのだと思っていたが、今日の様子を見ると、どうもそれが原因のようには見えなかった。

 

「これで、一応は廻れたかな」

 

改めてリストを見てみると、そこそこな量になっていた。

 

この後は一旦役場に戻って仕事をし、夜また肝試しのコースを廻るという流れで、俺だけでもいれば何とかなるのだがーー

 

「ではこれを役場に提出しに行こう」

 

のみきは休む気は毛頭ないようだった。

 

俺は、せめてのみきの手助けになればと一緒に役場に戻った。

 

「私たちが驚かせる係を?」

 

夜、役場に集まった少年団達(しろはは『人が多いのは嫌だ』と言って欠席になった)にのみきはそう言った。

 

「あぁ、今年は馬力が倍になったのもあって想像以上に進んでな。私たちで驚かすポイントも大まかに決められたから、お前たちにはそれをテストして欲しいんだ」

 

「驚かせ方はどうする?」

 

天善が言った。

 

「それは好きに任せる。私たちも何も知らないほうがより本番ぽくなるだろう。とにかく、良一と天善と蒼は、このどこかで私たちを驚かせてくれ」

 

そう言ってのみきは良一達に肝試しのコースが書かれたプリントを手渡した。

 

「了解した。では俺たちは先に行くとするか」

 

「肝試しの良ちゃんと呼ばれた俺を見せてやるぜ!」

 

「あんたそんな呼ばれ方いつしてたっけ?」

 

三人はコースへ向かって歩いていった。

 

10分後。そろそろ良いだろうと俺たちは山の中へ入った。

 

「・・・・・・・・・・・」

 

やっぱり、のみきの様子はどこかおかしかった。

 

肝試し準備にあまり集中出来ておらず、どこか上の空。さっきだってー

 

『ッ゙!?』

 

ちょっとした茂みの物音に驚き、ハイドログラディエーター改を慌てて構える、といったような動作を見せた。

 

普段ののみきから、あまり驚かないだろうなと思っていたから。

 

「怖いか?」

 

気になって、俺はのみきに尋ねた。

 

「いや、心配ない。よく見知った山だし、肝試しも毎年やっているからな」

 

「じゃあ何で今日はずっとボーッとしているんだ?」

 

「えっ?」

 

「俺には、何か悩み事があるように見える。見知った山だったとしても心配なんだ。その悩み事に気を取られて怪我をしないかとか」

 

「・・・・」

 

のみきは言っていいものかと少し逡巡しているようだった。やがて、意を決したかのように口を開いた。

 

「夢を見たんだ」

 

「夢?」

 

「怖い夢だ。鳥白島なのだが、いつもの鳥白島ではなくて、あれはー」

 

その時だった。

 

「きええええええええええええええええ!!」

 

「「!?」」

 

突然の奇声に俺は驚いた。のみきも小さく飛び上がっていた。悪夢の話をしていた時だったからなおさらだっただろう。

 

「呪いか?」

 

「呪い?」

 

「駄菓子屋のおばーさん、いるだろう?彼女が時々、ああやって叫ぶんだ。それが伝染してああなる」

 

「怖っ」

 

ガサガサ

 

「!?」

 

さらに、先ほどの奇声に反応してか、目の前の暗がりからも草の音を立てながら何かが現れた。

 

ブヒヒュヒュン

 

「猪?」

 

ってヤバいじゃん!

 

そう思ったのも一瞬だった。

 

ヒュンヒュン

 

空気を切る音。のみきは2発イノシシに命中させるとイノシシは泡を食ったように逃げていった。

 

「猪よけの何かが必要だな」

 

珍しくもないというようにあっという間に猪を撃退した。俺よりも男らしかった。

 

「ほら」

 

そしてのみきは手を差し出した。

 

「さ、行くぞ」

 

「あっ、ああ」

 

俺は素直にのみきの手を取った。

 

そしてのみきは俺の手を引きながら歩き始めた。

 

野性の猪を見て怖いと思ったのだろう。のみきはずっと俺に寄り添ってくれた。

 

怖いと言えば嘘になるが、それ以上にのみきがいつもの調子に戻ったのが、何か嬉しかった。

 

ありがとう、猪。

 

ヒュンヒュン!

 

ブヒュルルル..

 

逃げていく猪に、俺は密かに感謝の気持ちを贈った。

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